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カテゴリ:旅行でふらり
半年間の休館を経て改修工事を終えた世田谷文学館に行ってきた。開催されているのは,以前からこの館に縁が深く,1階の奥に謎の常設展示室があったムットーニ,こと武藤政彦の「からくり劇場」の特別展だ。
今回は2階の企画展示室を全て使って,「からくり劇場」が展示されている。これまで常設展示では10個くらいだったと思うが,今回は30個以上が並べられ,大型のものもある。エントランス,プロローグ,そして6つの展示エリアに渡ってムットーニ世界が広がっている。 ----------- 「からくり劇場」が何か,には定義はないと思う。からくり人形や,のぞきからくりをイメージにして,筐体があり,人形が動き,光,音楽,語りで演出するのがムットーニのパターンだ。 本や酒瓶から人形が出てきたり,ジャングルの後ろからバンドが現れたり,という意外性も楽しいのだが,丹念に造り込まれた芸術性も高い。インスタレーション芸術や,超小型の舞台のような,独特のジャンルとなっている。 それぞれのデザインは,レトロなヨーロッパの骨董品のようにまとめられているが,おそらく内部は最新のPLCやサーボモーターを利用しているのではないかと思う。でも,それは明かされる必要はないと思う。 ----------- 「エントランス」:階段を上ると,常設展示にもあった「猫町」「月世界探検記」「山月記」が待ち構えていて,懐かしくなる。これだけでも美術館によっては十分な展示だと思うが,それがエントランスに展示とは贅沢だ。 「プロローグ」:ムットーニの絵画作品が並んでいる。中世から近世ヨーロッパの画風に似せており,ブリューゲルやボッシュのような,デフォルメされた人物像が不気味だ。人形のパーツもあり,なかなか怖い。 「エリア1」:常設展示にもあった「漂流者」「眠り」もあるが,新作の「アトラスの回想」「題のない歌」,そして作家蔵の「摩天楼」が展示されており,まさにムットーニの神髄という印象を受けた。「題のない歌」は素晴らしく,2回観てしまった。大傑作だと思う。 「エリア2」:「蜘蛛の糸」「ジャングル・パラダイス」「サテライト・キャバレー」など,新旧の大作が並ぶ。筐体も大型で,技術的にも華やかな電飾を用いており,次世代の「からくり劇場」という印象を受けた。「プロミス」などは幻想的で,動きも凝っていて素晴らしい。 「エリア3」:「ワルツ」などからくり時計風の佳作が並ぶ。作風は「エリア2」に近く,ガラス,ステンレス,電飾を多用している。 「エリア4」:「ハート・アタック」「クカラ」は酒瓶が開いてからくり人形が出てくる。そうした小品が並んでいる。動きがコミカルで子供が食いついていた。 「エリア5」:「エリア・キーパー」という連作が並んでいる。これも「エリア2」風の作風だ。 「エリア6」:常設展示だった「スピリット・オズ・ソング」「アローン・ランデブー」が並んでいるが,メインは中心に展示された「カンターテ・ドミノ」だ。筐体が開くとパイプオルガンが響き,天使が飛び立つ。幻想的だ。 ----------- それぞれの「からくり劇場」は上演に4分から6分がかかる。30個以上あるので,全部を順番に観ると3時間かかることになる。常設展示では1つずつ順番に上演されていたが,今回の企画展示では,エントランスと6つのエリアを合わせて,7つの場所で並行して上演が行われている。他のエリアの音が流れてきてしまうという弊害はあるもの,短い時間で効率的に複数の「からくり」を観るには,この方式が正解だろう。 飛ばしたのもあるが,僕でさえ観るのに1時間以上かかった。 ----------- 土曜日は休館明けの開館記念で無料で観ることが出来た。開館前から並び,企画展示を楽しみ,せっかくなのでカタログ本も購入した。 ところで館内をうろうろしていた,イタリア風スーツの人,間違いなくムットーニ本人だよね。1個修理していたし。 新しい芸術に出会いたい人は,ぜひ世田谷文学館まで足を運んでもらいたい。オススメだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.04.30 16:26:57
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