『サクラサク』『サクラサク』彼と初めて会ったのは彼が小5の夏休み。 プール当番の付添係の私に「ぼくのパンツがありません・・・」と、目を真っ赤にして下足場に立ちつくしていた。 ほどなく、スノコの下からパンツは見つかった。 やさしすぎる彼は周りに溶け込むのに時間を要した。 そんな彼はいつもピアノを弾き続けた。 やがて、思春期を迎えた彼のその指から紡ぎだされるその音は 繊細な風のよう― さらさらと、聴いた人のこころをなでていく。 散歩中の私は、彼の家から流れるピアノの音色に足を止めた。 さながら、そこは”プライベートコンサ-トホール” ぼくは生きています。 ぼくはここにいます。 彼のピアノがそう語っている。 幼い頃、ちょうちょ結びができない彼にいらだちを覚え 何度も、何度も練習を試みた彼のおかあさん。 あの頃を振り返り、彼に詫びたと聞いた。 大学受験を控えた彼を思い、ずっと気をもんでいた彼のおかあさん。 出張先からも彼のことが気にかかり、海の向こうから思いを馳せていた彼のおとうさん。 彼の書いた膨大な楽譜を綴り、丁寧に仕上げていた彼の弟。 ぎこちない抱き方にも、いつしか慣れてしまった彼の愛犬。 そんな彼と、家族に、今日 『サクラサク』 ジャンル別一覧
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