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2023/05/14(日)10:13

『ゴジラの逆襲(1955)』~まぼろしの『ゴジラ対アンギラス』

特撮映画(84)

​ ゴジラの逆襲【Blu-ray】 [ 小泉博 ] ​ ゴジラ (ちくま文庫) [ 香山滋 ]​ ​  今ほど情報が得られなかった1960年代に、小学生の当方は『ゴジラ対アンギラス』という映画があると思い込んでいた。  当方は、『モスラ対ゴジラ』を見て、幼心に著しい衝撃を受けた。 この映画については、事前の情報があった。 親友が「こんど『マンモス対ゴジラ』がやるぞ!(公開されるぞ)」と勢いよく伝えてきたのだ。 これを聞いて、そうかゴジラがマンモスと闘うのか、ととても楽しみになり、図画工作の時間に粘土でゴジラとマンモスをつくったのだった。 その直後に、街でその映画の大看板を見た。 そこには『モスラ対ゴジラ』とタイトルの表記があった。 マンモスではなかったのかぁ⁉ モスラなのかぁ。 モスだけが同じだった。 けれど、思った。  モスラってなんだ? じつはこの時点ではゴジラについてだって、全貌がよくわかっていなかったと思う。 その後、親友に「『マンモス対ゴジラ』じゃなくて『モスラ対ゴジラ』だったぞ!」と告げた。 そうしたら親友は「『マンモス対ゴジラ』ってなんのこと?」と答えた。「だからマンモスとゴジラをつくってたのか⁉」とも言われた。  その親友は、材木会社の社長の息子だった。 例えば『海底軍艦』。 親友とは、この映画について、すっごく話が盛り上がった。  そして親友には高校生の兄がいた。(6年生の姉もいたが) この兄が、特撮映画(のちにはスパイ映画、マカロニウエスタンなど)の貴重な情報ソースだった。 『ゴジラ(1954)』のつぎが『ゴジラの逆襲』である。 ゴジラは、『キングコング対ゴジラ』の前にアンギラスと戦っている。 大怪獣バランは、後頭部の角がきれいだった、などの話を聞き、特撮怪獣映画に思いを巡らせ、深みにはまっていった。  その時点で、『ゴジラ(1954)』『ゴジラの逆襲』の2本は、ゴジラが一体のみ出てくる映画だと解釈した。 なぜならば『ゴジラ』及び『ゴジラの逆襲』は、それぞれ怪獣の名前が一つしかない。 『キングコング対ゴジラ』とか『モスラ対ゴジラ』は、そこに2体ずつ怪獣の名前がある。 だから、ゴジラとアンギラスが対決するなら、それは『ゴジラ対アンギラス』という映画だろう、と考えたわけだ。  それと同時期に、ほかの友達の家に遊びに行った。 そうしたら、そこにゴジラ映画のパンフレットが数冊あった。 当方は、それを借りていって隅から隅まで目を通した。 その中の一冊に、東宝特撮映画年表が掲載されていた。 しかし、そこに『ゴジラ対アンギラス』という映画はなかった。 なんども見直したが、『ゴジラ対アンギラス』はない。 これはどういうわけだ?  さて、『ゴジラ(1954)』がテレビで初放映されたのは、1967年のNHK総合だった。 その前年1966年に、特撮怪獣映画として初めてテレビ放映されたのが『ゴジラの逆襲』である。 それを私は見ている。 ラスト近く、ゴジラが雪崩に埋まるあたりからなんだけど。 『ゴジラの逆襲』は、ゴジラ対防衛庁の飛行機(シナリオより)編隊で決着を迎える。 神子島に上陸したゴジラに対して、その背後にそそり立つ雪山を爆撃し、雪崩を起こしてゴジラを生き埋めにする作戦だ。 この対決は、早すぎた『トップガン マーベリック』とも言える。 防衛庁の飛行機は、崖にロケット弾を撃ち込み、山腹に沿って急上昇するのだ。 これを見て、『ゴジラの逆襲』はゴジラが単独で登場する映画だとの確信に及んだのだった。 しかしながら、『ゴジラ対アンギラス』は依然まぼろしのままだった。  とても気がかりだった。  その2年後くらいに、またまたある友達の家に遊びに行ったら、居間の本棚に『ゴジラ 東京・大阪編』を発見した。 これは、小説版のゴジラである。 こちらも借りていって、かつて経験がないほど熟読玩味した。 「東京編・大阪編」ってなんだ? 読み進むうちに、「東京編」が映画『ゴジラ(1954)』であることが見えてきた。 まだ見ぬ『ゴジラ(1954)』の内容を窺い知ることができた。 次いでわかったのが、「大阪編」は『ゴジラの逆襲』なのであった。 「大阪編」のラストは、神子島でのゴジラと防衛庁の飛行機編隊のバトル、生き埋め作戦だったから。 さらに、「大阪編」では、序盤、中盤にアンギラスとの対決があった‼ ここに来て、長年の謎が解けた。 『ゴジラ対アンギラス』=『ゴジラの逆襲』だったのだよぉ。   『ゴジラの逆襲』は『ゴジラ(1954)』の空前の大ヒットを受けてつくられた映画だ。 けれども、最近のゴジラ映画の人気投票では、いつも下位に甘んじている。 さらに、この映画についてはあまり語られることもない。  しかしだよ、『ゴジラの逆襲』のゴジラこそが、このあとキングコングと闘い、モスラとバトルをして、さらに地球を守っていくのだ。 いわゆる「初代ゴジラ」は、オキシジェン・デストロイヤーによって葬り去られている。 『ゴジラの逆襲』の「2代目ゴジラ」が、怪獣たちとの名勝負を繰り広げ、シリーズを盛り上げわけだ。  この映画は、ゴジラシリーズの中で見ると、常連である本田猪四郎(監督)のいない映画である。同時に、伊福部昭(音楽)もいない。 けれども、かの円谷英二は、この映画で初めて「特技監督」という役職名を得たのだった。  確かに『ゴジラ』は歴史的な映画である。 内容的にも、姿勢を正して見るべきものをもっている。 一転して、『ゴジラの逆襲』はエンターテインメントだ。 まず、ゴジラが早い段階で登場する。 『ゴジラ』では、映画開始後22分30秒ころまでゴジラは姿を現さない。 それに対して『ゴジラの逆襲』は、8分36秒ほどでゴジラが登場し、その10数秒後にアンギラスまで登場するのだ。 そして、前作では重厚な存在だったゴジラが、なにしろスピーディーに動き回ってアンギラスと格闘する。 この対決の決め技となるのは、ゴジラの嚙みつき攻撃だ。  アンギラスは首筋に喰いつかれ、流血淋漓で敗北する。 元祖『ジュラシック・ワールド』だよ。

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