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 小さな不動産会社のBOSS日記

小さな不動産会社のBOSS日記

青春時代その1

財産なりし我が青春


ある日、リヤカーに全ての家財を乗せ、月7000円の木造アパートから引っ越したのが一軒の古い木造家屋を三室に区切った内の一部屋、間借りだった。

もう三十年以上も前の事だ。

生活費を落とすためだったその間借りは、確か月額家賃が4500円程度だったと思う。

風呂なし、入口の板戸といえば、それこそ炭焼き小屋の戸の様に、廃材的板をすのこ状に、ただ木枠に打ち付けた、隙間だらけのものだった。
しかもその戸は、傾いていた。
といいより、どうやら古い木材に取りつけた蝶番も悪く、外れかけていたというに等しかった。

傾いているので戸を開け閉めするときには、必ず戸板の下を地面で擦ってしまう。
閉めた後、今では物置の戸締りにも使わないような、ただ簡単な留め金を捻って南京錠を掛けるだけなのだ。

その鍵は気休め程度に過ぎず、戸板を抱えて少し強く引っ張れば、その戸自体が簡単に外れてしまう程度のもの。
戸板、戸板と言っているが、あくまで部屋の玄関ドアである。

オートロック・・、そんなの関係ない。
防犯上も、盗られるものは何もないのだ。

入口を入ると畳一枚程度の土間。
その土間には、昭和初期の映画に出てくるような、石器の流しが傾いて置いてある。
湯沸かし器なんぞとうていなく、LPGのコンロ。
コンロのスイッチを捻ると・・点火しない。
壊れているわけではなく、小さなガスボンベは時々空なのであ~~る。”^_^”

その土間から障子戸を一枚開けると・・
そこは、そこは・・パラダイス~~!(^^♪
四畳半の我が城なのだ。

引越しの折に、誰からかもらったベッドには汚い煎餅布団。

夏は窓を全開で心地よい風が入り、正に夏を感じ、
冬は・・あちこちから隙間風が入り込み、冬らしい冬を感じた。
夏には時々たらいで行水した。

銭湯は歩いて10分程度のところにあったが、帰りはすっかり凍え切ってしまう。

唯一の暖房は、強・弱しか効かない炬燵。
熱くなったら足で蹴る。寒くなっても足で蹴る。
すなわち手動ならぬ足動。

当時流行っていたのがビニール製のファンシーケース。
部屋に唯一お洒落な代物だった。
このファンシーケースは時にこんなことにも役立ったのである。

5、6人を雇って大小あちこちの工事を請け負っていた土木工事業の社長に雇われ、私も一時そのチーム?の一員としてバイトをしていたことがある。
炎天下、そして冬。
都度の工事現場は結構きつく、ある日、私はどうしても出て行くのがいやでサボったのだ。
するとこの社長、私をわざわざ部屋まで呼びに来たのだ。
カーテンを閉め切っていた私は、外で声を掛ける社長に、とっさにファンシーケースの中に隠れたのである。
ほとんど無錠の部屋に、社長は部屋のなかまで入り込んでくることがあるのだ。
何度も何度も「○○君」と呼ぶ社長に、私は必死でファンシーケースのなかで息を殺していたのだった。^^;

いや、ちょっと待てよ。
これは事実だけれど、
この時、土木工事会社の社長ではなくて、空調ダクトの取り付け工事のバイトをしていたときの社長だったかな・・?

どちらかには間違いない。
この時、極めつけの言葉があった。

「○○君!今日は弁当も用意しとるから、いかんね~!」(^^)

この燻り出しの言葉に、私は思わず心よろめきながらも、なんとかファンシーケースのなかで頑張ったのである。

だって、バイトはきついし時にはさぼりたいもの。(~_~;)


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