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次なる挑戦 ・・・ 日本人の技

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2011.09.28
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 品川 博      ・・・・ http://www.shinagawa3.com

 ※この内容は、月刊「左官教室」No.605(2006年11月)に掲載されたものを、筆者の了解を得て転記したものです。

 ・・・・前回からの つづき・・・

その5. 私の勘と発想も捨てたものではない

 朝から鏝作りを始めたため、実験用漆喰塗りが遅くなり、夕方になっても押エのタイミングが来ない。付っきりで見張るため家の中に持ち込み、比較用の鏝を取り換える。 もちろん、「漆喰押エ鏝」として今年出現した鏝、これが今回比較したい一番の鏝である。

 思い通りの結果が出れば、錆びないという大きな利点を持つ「漆喰押エ鏝」の誕生ということになる。

 私は、左官職というものは、「自然に素直に操られるように対応する職種」だと思う。 左官材料は、自然に対して大きく変化する。 それは水を与えた時から始まり、夏と冬とではまるで違うスピードで乾き、硬化の変化をしていく。 同じ夏でも、日当たり具合、風邪、温度、湿度等で大きく差が出る。

 それらすべてを読み、それに合わせた道具と技術、手段を使いこなすことができれば失敗はないのだ。 これにはまず、数々の経験が必要となり、「熟練」ということが求められる。 ところが、難しいのは瞬時、瞬時の読みである。 「いける」と思ったが、乾きが遅い時は待てばいい。 ところが、乾きに手遅れぎみになったら「大変だ!」ということになる。

 そこで、今まで以上の性能をもつ鏝があれば・・・と思うようになるのだ。 生産性をあげるために、乾きのすき間にもう一枚塗ってからだ、と思うことだってあり、それがわずかに裏目と出ることもある。

 そんなこんなで、少しでも性能のいい鏝を欲しいと思うのだ。 午後8時、頻繁に触りながら見ていた実験壁にそろそろタイミングがきたようだ。

その6. 漆喰押エ鏝二号(錆びない)は?

 今回は、それぞれ7寸の角鏝(「本やき」、「ステンレス」「地金(漆喰押エ鏝)」、そしてさびない漆喰押エ鏝二号」)の4種による実験。

 まずは、全ての鏝でなでることができたが、押さえには少し甘い。 少し時をとりながら、甲乙つくまで進めるつもりだ。

 やがて、依然と同じように「本やき」がひきおこしを出し脱落。 続いて、「ステンレス」。 やはり本命の二つが残った。 この時点で、私の思いは少なからず当たったことを察知した。

 そのまま、実験は、乾きを追いながら、「一号」「二号」を比べるが、甲乙が出ないまま、次回へ送ることになってしまった。

 とりあえず完成である。 ところが、私の中のしつこい性格が、納得していなかった。 2つの差は必ずあるはず。 全ては現場で結果を見よう。

 数日後、終盤を迎えていた日本の唱教団の庫裏の黄漆喰塗りでのこと。 下地ボードの数少ない壁に「漆喰押エ一号」にわずかなひきおこしを見ることができた。 チャンス到来である。 すぐさま、「錆びない二号」で押えてみる・・・・・。 直した。

その7. 鏝鍛冶魂(名工)「漆喰押エ鏝二号」誕生

 漆喰押エ鏝が世に出てまだ間もないというのに、またまた五百蔵氏には、私のわがままな話を聞いていただくことになった。

 どうせやるなら、背金から主要首に至るまで錆びないものに・・・、笹葉タイプや5寸くらいのものも・・・。また、材質がいいので、昔ながらの本作りのものも・・・・等々言いたい放題の要望を言ってしまった。 あげくの果てに、「数は出ないかもしれませんよ」と平気で言う私。

 それに対し、あきれることなく、返ってきた返事が「たとえ数は出なくても、いい鏝になるとならば、できるだけやってみましょう」と、またまた心に残る言葉を聞くことななった。

 全てが通常ではなく、制作に当たって苦労も多いと聞く中、9月末を目標に数種類の新作「漆喰押エ鏝二号」が出ることになった。

 今、世にある全てのものが完成されているわけではない。 満足したとき、完成と思い、あきらめたとき、これでいい(終わり)と思う。

 何を求め、何を満足するか、そのことを楽しんで生きたい。



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マル 追伸
 左官教室8月号の石州通信、渡部孝幸氏の文の中に「強化漆喰」→ 石灰に白セメントを適量入れて塗った、とありましたが、これは私の説明不足によるもので、違っており、申し訳ありません。

 正しくは、白セメントを中心とした薄塗り材料に石灰を適量入れ、て塗ったものです。

 その意図は、
 1.漆喰に近い色にするため
 2.石灰を入れることにより押えられる(漆喰押エ鏝使用)材料にするため
 3.水のかかりやすい場所であることから(コンクリート → モルタル → 白仕上げ)、耐水強度を上げるため
等の理由により、作った材料です。 漆喰風セメント仕上げと言った方が適切かもしれません。 ここに訂正させていただきます。
    
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 2asari 2.jpg 月刊「左官教室」No.605(2006年11月)に掲載内容を、筆者:品川博氏の了解を得て転記しております。



































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Last updated  2011.09.29 09:40:49



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