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次なる挑戦 ・・・ 日本人の技

2011.10.08
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1mm未満の小粒子を表現できる乾式洗い出し

 (この内容は、「建材フォーラム」誌 株式会社工文社 2009年11月号工法レポートより転載しております)

写真1img366.jpg 
   3厘の寒水石を骨材に使用した見本。0.9mmの砂が美しく洗い出されている。

写真2img367.jpg
   島根の海砂を骨材にした見本。アイデア次第で地場産の砂でもこのように提案できる。

新工法「品川式・ドライウォッシュ工法」が、巷で反響を巻き起こしている。
”洗い出し”と言えば、本来、砂利等を混ぜた上塗りを水洗いし、素材の頭をあらわす左官の伝統工法として知られるが、新工法では、水を使うことなくこれを可能にする。 しかも、通常の洗い出しで使える砂利は、一分~三分石(3~9mm)程度の大きさに限られてしまうが、この方法なら1mmに満たない細かい砂まであらわすことが出来るという。

品川さんは、この工法を左官の原点回帰、また仕上げ分野への復権を促すものとして位置づけ、技術をオープンにし、希望者へのノウハウの伝授に努めている。 10月4日には、笹山で講習会も行われ、講評を博したそうだ。 

今回、編集部では、話題の的である新工法の詳細について伺うべく、品川博さんのご自宅を訪問した。 本項では、工法の手順を追い掛けながら、そこに込められた品川さんのメッセージ、工法の意義を紐解いていく。               (編集部)




工程1 材料について ~塗りつけ

 今回の取材では、骨材の異なる2種類の見本を実際に目の前で制作して頂いた。 一つは、3厘(0.9mm)の寒水石を、もう一つは、島根県の砂を骨材としたものだ。 これらに白セメントと水を練り混ぜ、モルタルを作る。 後ほど、いずれも島根県の砂と貝殻によって化粧を施していくが、ここまでは、いわば普通のモルタルである。

 希少な砂ばかり使っていては「左官の仕事にならない」と考える品川さんは、建材店で手軽に手に入る寒水石をベースとする方法を推奨する。 寒水を骨材にしてモルタルを作り、表面だけにオリジナルの砂をデザインする方法だ。

「中に練りこんでしまうと、微量にしか表に出ないので、もったいない という感覚ですね」と品川さんは話す。 独自の素材を化粧だけに用いることで、少量でも大面積への施工を可能にするほか、応用の幅を広げている。

 また、白セメントを使用することで、素材の魅力を惹きたてる事が出来るほか、白色の特性により、埋もれた素材がやや透けて見える効果が得られるという(ただし、乾燥するにつれ透明度は薄れる)。 塗りつけについては、通常の左官の塗りつけと特に変った点はない。

img365a.jpg
写真3:品川さんが自ら採取した 写真4:島根県の海岸で採れる 写真5:白セメントと骨材を混ぜ
島根県の砂。段階を追って篩い  「桜貝」の美しさに品川さん   る。比率は砂の粒子に左右さ
わけてある。             は注目した。これを最終的に   れるが、ここではほぼ1:1
                      表面にあらわす。   

img364a.jpg
写真6:水の量には気を遣う。柔  写真7:ナイロン袋で練るのも  写真8:木の淵が先に乾かないよ
らかめに作れば、その分練り置  品川流(!)。「道具を洗うの   うに、水湿しをする。
き時間も長くなる。ここでは、    が面倒で、段々楽をする姿勢    
時間短縮のために硬めの配合。  がついた」と話すが、汚水も
                     流さずにすむので合理的だ。


img363a.jpg 
写真9:配合したモルタルを塗  写真10:メッシュの伏せ込み。   写真11:こちらは島根県の砂。
 りつける。                                 3厘の寒水石に比べれば
                                         粒子が粗いが、通常の洗い
                                         出しではここまで目の細
                                         かい砂を使う事はできない。


工程2 デザイン ~伏せこみ

 塗り付けの後、水引き加減を見ながら石を伏せこんでいく。 この際、表面に現わしたい素材を散らすことで、好みに応じてデザインを加えることができる。 この工程は省くこともでき、何も化粧をつけないのが簡単な方法ではある。 しかし、品川さんは、「折角なら美しい仕上げに挑戦したい」と話す。

 ここでは、島根の砂と貝殻から選りすぐったものを使用しているが、伏せ込む素材には、無限の可能性があるのがこの工法の肝と言える。 模様づけも、個人の感性に委ねられる。 「考え出すとあまりよくならないので、ある程度無作為に、鼻歌交じりにやった方が良い」と品川さんは話す。 

 なお、壁面へのデザインは、固いスポンジのようなものに載せて施工すると上手くいくそうだ。
写真12img368.jpg 写真13img369.jpg
 写真12:乾燥の頃合いを見たら、デザインをつける。写真は、「ネメラァート三木」(9月26日開催)での
      実演施工より。
 写真13:予め選り分けた貝殻を散らす。ラフな感覚でつけた方がうまくいくという。


 デザインをつけたら、伏せこみを行う。 その要領は、通常の洗い出しや研ぎ出し工法と変わらず、「締まるにつれて撫でて、石並びを調整する」工程となる。 ただし、この工法では使用する砂が小さいため、伏せ込みは時に念入りに行うという注意点がある。 「昔はよく、伏せ込みができる間は徹底的にやれ と言われたもの」だと、品川さんは振り返る。 仕上げまでには、感覚を空けながら、計3,4回の伏せ込みを要する。

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 写真14                写真15                写真16
 写真14:天の川のようなウェ-ブ模様をデザイン 写真15:桜貝でアクセントをつける
 写真16:デザインが済んだら、石の頭を揃えながら伏せ込んでいく。
      この後、水引き加減を見ながら伏せ込みを繰り返し行う。



工程3 仕上げ「ドライウォッシュ」

 締まり具合を見ながら、何度かの伏せ込みを経て、最後にワイヤーブラシで白セメントを掻き落とし、そのまま一気に仕上がりとなる。 品川式「ドライウォッシュ工法」は、工法としては父子意義なまでにシンプルである。

 ここでの注意点は、専ら乾燥のタイミングである。 取材時(9月末、外気温約25℃、湿度約60%、但し室内)には、およそ最初の塗り付けからここまで3時間強。しかし「普通の洗い出しでも、時間問題は言っても仕方のないこと」だと品川さんは話す。 「湿度、温度が同じでも、当然水を入れすぎたら柔らかくなり、時間もかかる。 水引きの加減にずっと付き合わされるのは、左官の宿命。手で触っても濡れきらなかった、湿気があるように感じた、その辺からやってみればいい」 と説明してくれた。
写真17img371a.jpg 
         写真18img372a.jpg
 写真17:タイミングを見極めたら、後はワイヤーブラシで一気に仕上げる。
 写真18:あらわしたい部分だけピンポイントに洗い出せる。


 タイミングさえ合っていれば、かなりの力を入れて掻き落としても、砂は一切飛ぶことがなく、セメントの粉だけを綺麗に落とすことができる。 化粧に使用した、極めて薄い桜貝も一切落ちない。 「普通の洗い出しの場合、表面に水が回ったりすると、この会は流れ落ちる可能性が高い。 しかし、この方法で、今まで一枚も飛んだことはない」 とのこと。 一見、ワイヤーブラシに引っ掛かって飛んでしまうように見えるが、これは下の砂や貝が、突っ張ってくれるため、ブラシが食い込むのを防ぐのだという。 またたく間に仕上がりを迎える様子は、まさに左官のマジックといった印象。 「これが最高の瞬間です」と品川さんも微笑む。

 水を使うとどこかに広がってしまうが、この方法なら、素材をあらわしたい部分だけピンポイントに出せるという小回りも利く。 見せたい素材の上にセメントが残っていないかに気を配ることで、納得のいくまで美しい表情を追求できるのも、この工法の利点と言える。

         img373a.jpg
 写真19:白セメントの粉を綺麗に掃除して完成。


            「工法発案の経緯」など、次回へ つづく・・・





   
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この内容は、「建材フォーラム」誌 株式会社工文社 2009年11月号工法レポートより転載しております
                       






























































Last updated  2011.10.10 11:47:43

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