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次なる挑戦 ・・・ 日本人の技

2012.01.30
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 ・・・ この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年1月号(No.425)より全文転記しております。 ・・・ 


 聖徳太子開基の寺院として伝えられる鶴林寺(兵庫県加古川市加古川町北在家424)は、西の法隆寺とも言われる播磨地方有数の古刹である。  
平安時代建築の太子堂、室町時代建築の本堂(いずれも国宝)をはじめ、多くの文化財を抱えており、所有する宝物は、彫刻、絵画、工芸品など二百数十点に及ぶ。  今回、新たにその収蔵庫が建設されることとなった。  設計は株式会社古田建築設計事務所、元請は前川建設株式会社(いずれも加古川市)。

 外壁の左官工事を手掛けたのは、モルタルアートや鏝絵作品で著名な左官職、品川博さんらだ。  今回は、兄君の品川房男さん、品川清志さん、ご子息の品川福太郎さん、また、平盛左官工芸の平山真也さんも共に現場入りした。  
工事は、2011年10月初めめから約2ケ月をかけて行われた。  本項では、収蔵庫建築に込められた施主・設計の思いと、左官のノウハウが発揮された外壁工事の詳細をレポートする。  (編集部)



命題は「文化財の保護」

収蔵庫建築の直接のきっかけとなったのは、2002年に現在の宝物館で起きた盗難事件である。 現宝物館は、昭和41年に改築されたもので、セキュリティ、また文化財を保護する上での温度・湿度管理の面からも、現在の基準からは機能上の不満があった。 そこで、太子堂建立900年を迎える今年(2012年)のオープンを目途として、文化庁指導の下で、新たに収蔵庫が建てられる事となった。

 収蔵庫は展示施設を兼ねており、その目玉として建立当時の太子堂内部が再現される予定である。 太子堂の内壁は現在、900年に亘る灯明のススで覆われているが、その壁には当時、いずれも都の一級絵師が描いたとされる美しい壁画が隠されている。 肉眼での確認は、困難だが、近年、赤外線撮影技術の発達により、その詳細が確認された。 
また、蛍光X線により使用されている顔料の成分を分析することで、色も識別できるようになり、復元模写が可能になった。 そこで、涅槃図・九品来迎図の復元模写図を須弥壇後壁とし、そこに仏像を並べることでかつての太子堂が再現される。

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写真左:鶴林寺収蔵庫の設計を手掛けた古田充さん   写真右:2012年建立900年を迎える太子堂(手前)と室町時代建築の本堂(奥)

 設計を手掛けたのは、地元・加古川の株式会社古田建築設計事務所(古田充社長)である。 設計においては「文化財の保存」が命題であり、特にこの新たな収蔵庫は、宝物を保管する収蔵質のセキュリティや収蔵方法、展示公開時の搬出入の方法なども含めて、寺院における宝物収蔵施設のモデルケースとして注目を集めていた。

 文化財保存に求められる諸条件のうち、適正な温度・湿度環境に保つことは不可欠であり、壁面の「断熱性」は重要なテーマの一つだった。 これをクリアすべく、RC躯体の外壁には外断熱として厚さ35mmの断熱ボード(東邦レオ)を張ることになった。 
問題となるのは、市の仕上げである。
外断熱の仕上げ材として想定される選択枝(金属や吹付け、タイルなど)の中で、古田さんは、「新しい建材を使うべきではない」と考えた。 周辺にあるのは、いずれも歴史のある建築物ばかり。 屋根は当然瓦葺きであり、外壁も環境に適した仕上げ材を選ぶ必要があった。


外断熱 + モルタルの外壁

 古田さんは、収蔵庫を設計する上で「時間」をテーマの一つに据えていた。 そこには、文化財を永年に渡り守ってほしいという願いと、太子堂の中で900年間存在し続けた壁面への畏敬の念も込められた。 文化財を守る堅固さを表すために、外壁にはある程度表面の固さを感じさせる仕上げも必要だった。

 地元・加古川の左官である品川博さんに外断熱に適した仕上げを相談した古田さんは、まず品川さんの編み出した水を使わない洗い出し「ドライウォッシュ工法」に注目した。 同工法は、モルタルを塗り付けた後、半乾きの状態で乾燥具合を見てドライウォッシュブラシ(特製のワイヤーブラシ)でセメントを描き落とすことによって骨材を表面に表すものである。

 しかし、これは現実的に困難であった。 外断熱の塗り仕上げには、伸縮性のある樹脂系の塗り材を薄塗りして仕上げるのが一般的であり、クラックの問題からモルタルを塗り付けるのは難しい。 さらに、洗い出しにはある程度の厚みを確保する必要があり、これもひび割れ防止の点で無理があった。

 ただし、モルタルについては強靭な下地を作り、安定性に優れた仕上げ材を使えば可能だと品川さんは考えた。 砂目を表面に表すのは塗り厚の問題いから困難だが、折衷案として通常の掻き落しを施した後にワイヤーブラシを掛け、、「煤けたような」雰囲気を醸し出す工法を提案した。



二重カチオン・二重メッシュの下地

 「数百年来の想いが込められた文化財を守るための建物だから、左官の立場としては絶対に我を起こさせたくない」と品川さんは力を込める。 断熱材の上へのモルタル施工という課題をクリアするために採ったのは、二重カチオン・二重メッシュという強靭な下地を作る方法である。

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   写真左:断熱ボードにカチオン性樹脂モルタルでメッシュを伏せ込み、下地を作る
   写真中央:さらにメッシュを伏せ込み、二重カチオン + 二重メッシュの下地とする
   写真右:下地が柔らかいうちに上塗りをかけ、下地と一体化させる。・・・塗り付けをする品川房男さん


 まず、下塗りとしてカチオン性モルタル用混和材「セルタル」(ダイセルファインケム)を混入したセメントモルタルをしごき塗りし、グラスファイバーメッシュ(まつおか瓦産業株式会社)を伏せ込み、下地を作る。 この下地作りを一周回った後、再度メッシュを伏せ込み、上から刷り込んで目を通す。 これで二重カチオン・二重メッシュという状況となる。

この下地がまだ柔らかいうちに上塗りをして、下地にめり込ませることで強固に一体化させるという工程である。 この狂信な下地には、かつて野丁場左官として数多くの公共工事を手掛けた品川さんのノウハウが存分に発揮された。


  ⇒ 後編 へつづく・・・。

     
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 ※ この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年1月号(No.425)より全文転記しております。 
    

      img444.jpg           品川さんのホームページ





















Last updated  2012.01.31 13:25:58

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