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次なる挑戦 ・・・ 日本人の技

2012.01.31
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 ・・・ この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年1月号(No.425)より全文転記しております。 ・・・ 

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      ⇒ 前編 からのつづき・・・。 
  

漆喰を混和材にしたセメントモルタル

 下地の問題は解決したが、他にひび割れの要因となり得るのは、材料自体から生じる収縮亀裂である。 仕上げ材には、特に収縮の少ない材料を選ぶ必要があった。

 品川さんが目をつけたのは、イタリア漆喰「ラスチコ」(まつおか瓦産業株式会社)である。「漆喰単体で30mm塗っても割れない」同漆喰の安定性にかねてより注目していた品川さんは、この性質を活かし、当初は、ラスチコのみで仕上げようと考えていた。 ところが、着工が当初よていしていた夏から10月まで延びたことで想定よりも気温が下がったため、「[ラスチコ]単体では硬化速度が追いつかない」と判断した。

 IMG447.jpg ← 単体で30mm塗っても割れない「ラスチコ」アレニーノ 

 そこで考え付いたのは、セメントモルタルを半分混ぜることによってセメントの硬化力を利用する方法である。 いわば、本来は仕上げ材である「ラスチコ」を混和材として使うという奇抜なやり方だが、これは硬化速度を調整する上で非常に理にかなっていた。

 配合比は、10月の気温を鑑みて、「ラスチコ」とセメントを、1:1の比率で混ぜ合わせた。 果たして実際に使ってみると、極めて使い勝手の良い材料となった。 「余った材料を厚くして
その辺に放置しても、収縮亀裂を起こさない。 急激に乾燥させてもヘアークラックひとつ出さないし、本当に安定した材料」と品川さんは話す。 長年、野丁場仕事を手掛けてきた品川房男さんも、「ラスチコ」について「これほど使いやすい材料はない。特に冬場の押さえにはもってこいだと思う」と口を揃えた

 ひび割れについては、「割れが怖いのは、完全硬化するまでの間。割れるものは1週間位で兆候が出るものだが、それが全く見られない。材料の安定という意味では99%クリアしていると思う」と品川さんは安堵する。

 さらに、この材料をセメントプラスター着色剤「マイン(バイエル)」(ヤブ原)でふかみのある鼠色に着色すると共に、骨材には、兵庫県篠山の4mmの粗い砂を使用した。「これを描き落とすと、たとえばリシン掻き落しのような1mm、2mmの粒の揃った砂を使うより凸凹感が表現できる。大きい穴、小さい穴と出来るので、表情に変化を出せる」と品川さんは、説明してくれた。


掻き落し + ドライウォッシュ仕上げ

 仕上げ工程は、まだ下地が柔らかいうちに一回目の上塗りを朝から始めて、水引きを見て二回目を塗り付ける。 その後、乾燥具合を見て掻き落し、最後に「ドライウォッシュブラシ」で凹凸感のある風合いを表現するという工程だ。

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   写真左:乾燥のタイミングを見て乾山で描き落とす。描き落としをする平山真也さん
   写真中央:掻き落しを行う品川博さん
   写真右:最後にドライウォッシュブラシで表情に変化をつける。手製のブラシで細部を整える品川清志さん


 「水引きに付き合わされるのは左官の宿命」との品川さんの言葉通り、掻き落しのタイミングは乾燥具合を見計らわなければいけない。 天候に左右されるのは言うまでもない。 毎日時間をチェックして、データをとりながら慎重に行った。

 掻き落しに使用した剣山、仕上げ用のドライウォッシュブラシは、品川清志さんによって使いやすく改良されたものだ。 清志さんの道具箱に整然と並べられたオリジナル鏝の数々は、いずれも現場に応じてその都度作られてきた。 今回もこだわりの道具が縁の下の力持ちとして優れた仕事を支えていた。

 特に注意を払ったのは、白華対策である。 今回は墨色のモルタルに比べて白華が目につきやすいという問題もあった。 
仕上げ工程は、縦目地で区切られた壁面ごとに日を分けて順繰りに行われたが、その際、一マス飛びに仕上げることにした。 これは白華による色差の偏りを軽減する工夫である。 白華現象は、モルタル表層部に侵入する空気中の水分によるものだが、品川さんは、むしろ温度差による影響を感じており、 「日中晴れた日に限って、夜の冷え込みが厳しい。 夕方までによく乾いていても、明くる日に見ると白華が出ている。」と話す。 いずれにせよ、白華は、モルタル仕上げにとって不可避であり、最終的にバランスを見て クエン酸で必要な個所のみアク抜きをして、白華調整を行うこととした。 
なお、「マイン(バイエルン)」の黒は耐酸性・耐アルカリ性共に有しているが、色粉の種類によっては耐酸性でない場合もあるため、アク抜き前には、確認を要する。

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 写真左:仕上げ材には、イタリア漆喰「ラスチコ」とセメントを1:1の割合で混ぜ合わせたモルタル使用した。
         「マイン(バイエル)」で墨色に着色
 写真中央:下地から仕上げまでの工程見本
 写真右:品川清志さん特製の剣山(上)トドライウォッシュブラシ(下)手に持ち易く工夫されている。



歴史を想起させる外壁

 最終調整を経て仕上がった外壁は、墨色と凹凸感が印象的な「煤けた風合い」を醸し出していた。 離れて見ると景観のなかで沈んだ色が静かな存在感を放ち、また近くで見ると凹凸感のあるテクスチャーに視線が移る、古くて新しい感覚を備えた壁面に完成した。 太子堂の刻んだ900年という歴史のスケールを思い起こさせる肌合いである。

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 かくして、10月初めに着工した外壁工事は、11月末に無事滞りなく終了した。 収蔵庫は、内装工事を経て太子堂建立900年を迎える本年秋に一般公開される。 オープンに当たっては、太子堂900年の記念事業として、60年に一度しか見ることのできない本堂秘仏(平成9年にご快調)も特別にご開帳される予定である。

 西の法隆寺、鶴林寺を配管の際には、施主・設計の想いと左官のノウハウが結実した、収蔵庫外壁にぜひ注目していただきたい。      (取材/U)


!刀田山 鶴林寺ホームページ  IMGP2687t.jpg


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歩く人品川さんのホームページ


四つ葉イタリア漆喰「ラスチコ」ホームページ 四つ葉

img445.jpg img446.jpg            


NEW 建材フォーラム最新号  
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  ※ この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年1月号(No.425)より全文転記しております。  
    
 










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Last updated  2012.02.06 19:13:10

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