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次なる挑戦 ・・・ 日本人の技

2012.05.04
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● この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年4月号(No.428)より全文転記しております。  
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利用者の目を楽しませたい
ニチイの介護施設でも前例のない左官アートはいかにして実現したのか。 その背景には、同センターのオーナーである石原昌好氏(札馬砕石工業株式会社社長)の配慮があった。 同氏は左官の愛好者でもあり、自身がオーナーを務める「グラン・ドッグランド」(兵庫県加西市)においても久住章氏によるレリーフ(品川博氏も参加)が制作されている。 「お年寄りの目を楽しませたい。 心を癒してほしい。」との想いで、水道の浄化設備と共に私財を投じて今回の施工にこぎつけた。

食堂の壁面には、「風景のレリーフがいい」との施主の要望を聞き、品川さんの脳裏に浮かんだのは、2年前に手掛けた名古屋市のオーガニックレストランで、岡田廣明さんと共に描いた樹木レリーフである。(本誌2010年3月号既報) 漆喰一色による樹木は、目に優しく、飽きもこないため、長時間過ごす食堂という空間にうってつけだった。 この提案を石原氏も意気に感じ、当初は化粧クロスが予定されていたエントランスのレリーフも併せて発注することになった。

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漆喰の樹木レリーフ

 今回の現場は、品川博さんと、兄君の品川福太郎さんとコンビで手掛けられた。 2月一杯という工期の中で、樹木とドライウォッシュの2個所のレリーフは同時進行で進められた。
 食堂の奥の壁一面(横6m×縦2.4m)をキャンパスとした樹木レリーフ。その制作に使用された材料は、名古屋のレストランと同様、イタリア漆喰「ラスチコ」である。 スサが入っていない西洋漆喰は、ケバを押える手間が掛からないため、緻密なレリーフを短時間で納める場合に適しているという。
 
 構造用プラスターボードの上にメッシュを貼り、セメント系下地材をつくった後、翌日レリーフの背景となる下地をイタリア漆喰ラスチコ」で塗り、明くる日にはチョークで樹木のアウトラインを取った。
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木の葉の施工においては、名古屋では発砲スチロールを切り抜いてつくった型枠を用いるステンシル工法が多用されたが、今回は壁・天井が曲面で連なった名古屋と違い、平面の壁であるため、木の葉の見せ方には、工夫を要した。 すなわち、立体的に見せるために横から見た葉、半分めくれた葉などバリエーションが必要で、必然的にフリーハンドによる施工が約4分の3を占めた。 木の葉をバランスよく配置した後、その隙間を縫う要領で幹を施工し、完成となる。 最終的な木の葉の数は、960枚に上り、その密度もより濃いものとなった。
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 また、目を凝らして眺めると、樹木の至る所にはカタツムリや鳥など森の動物たちが散りばめられている。 存在感は控えめだが、「見つけて下さい、という感覚」と、品川さんは笑って説明してくれた。 ちょっとした遊び心に感じられる左官の心意気が嬉しい仕掛けだ。

なお、動物レリーフはいずれも「ラスチコ」で描かれているが、鳥の口ばしや足など繊細な表現をするために、自作のフルイによって「ラスチコ」の骨材をふるい落とし、ノロ状にすることで制作している。 ノロ状のラスチコはきめの細かい仕上げ表現が可能になるという。


ドライウォッシュのモルタルレリーフ

 同時進行で進められたエントランス右手のレリーフは、風邪と水をモチーフにした流線型のラインがモチーフである。 先にレリーフを施工して、後から背景の壁を塗る工程で行われた。 レリーフの骨組みとして針金を貼った後、型枠に合わせてモルタルを塗りつけ、骨材を伏せ込み、感想のタイミングを見て一気に掻き落す。 品川さん考案の「ドライウォッシュ工法」である。

 白のレリーフは、白セメントと寒水石でつくったモルタルに、島根県大田市の琴ケ浜の海砂が伏せ込まれている。 特に桜貝の入っている部分が選り分けられており、近づいてみると繊細なピンク色に目を惹かれる。 黒のレリーフは、セメントと黒の色粉と黒ダイヤから成り、希少なアワビ砂が表面に表されている。 アワビ砂は現在つくられておらず、幻となっているそうだ。 今回は、岡田廣明さんに以前わけてもらったものを表面にのみ活用している。
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 レリーフを施工後、その周辺の壁は、「ラスチコ」を使用した掻き落しで仕上げられた。 背景の壁の水色は、ドライウォッシュの硬質なラインが映えるように、やわらかいイメージが追求されている。 濃淡の異なる3色水をあらかじめつくり、養生をしながら3段階に分けてスプレーガンで着色された。

 微小の骨材を表す繊細な表現が特徴のドライウォッシュ工法は、今回のようなピンポイントで魅せる場合にその良さを最大限に発揮できる、と品川さんは話す。 その繊細な仕上がりは観る人を惹きこむ魅力に溢れている。


左官の表現力

 隠して「工事は無事終了し、3月2日に引き渡しが行われた。 左官の表現の素晴らしさに、オーナーはじめ関係者からも絶賛を博した。
 
 なお、材料見本づくりなど、協力サポート役として まつおか瓦産業株式会社が陰で現場を支えていたことも付記しておきたい。

 介護分野においては、物理的な配慮はもとより精神的なケアが大切であることは言うまでもなく、介護施設のデザインにおいては利用者を楽しませる遊び心が軽視できない。 今回の現場では、左官の表現力の豊かさを感じさせられた。

 「ニチイケアセンターひめじ広畑」では、樹木レリーフが、またドライウォッシュのモルタルレリーフが、そこを訪れる人の目を末永く楽しませ、心を潤わせてくれるだろう。 建設ラッシュを迎える介護施設において、こうした事例の広がりを願ってやまない。     (取材/U)                                
 
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img506 2012-4s.jpg● この内容は、建材フォーラム(株式会社 工文社)2012年4月号(No.428)より全文転記しております。








     


















                                                






Last updated  2012.05.05 14:43:00

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