その瞳に映るものは・・・ 第4話フェンリル国・・・王、銀狼率いる闇の大国。 一時期は100人もの武将数に達そうかという程の強国だった。 しかしある幹部の一人が思想を違え、新たに建国した時に戦力は瓦解。 現在では元の半分以下の戦力となってしまった。 彼女のゲームキャラ『ラクチェ』もこの国に所属していた。 ・・・少なくともゲームの中では。 (さっき見せてもらった剣に映った私の顔・・・『ラクチェ』の顔だった・・・。) これで今までの違和感に納得がいった。 自分も含め、この世界全てがラグナロクの世界なのだ。 (そして私はラクチェになっちゃったわけか・・・。でも・・・) 何故自分がこの世界にいるのかがサッパリわからない。 夢だと思いたいが、今までの経緯からして夢ではなさそうだ。 やはりもう少しこの世界で情報を集める必要があるだろう。 門番2「・・・う~ん、困ったな・・・。」 ここはフェンリル国ブエル街。城壁付近にある衛兵の詰め所の一室。 一通り話し終えたところだが、門番2は頭を抱えている。 門番2「正直『ぱそこん』だとか『らぐなろく』だとか、よく解らないんだが・・・君が嘘をついているようにも見えないし・・・。」 「あぁ、要するにこの世界は私の知ってる物語に似てるってことかな。そこんところはあんまり気にしなくていいわ。」 門番2「まぁ君が違う世界の人間だってことは分かったよ。・・・正直信じがたい話だけどね。」 「気持ちはわかるわ。私も信じられない状況だとは思ってるし・・・。でも、本当なの。」 門番2「・・・とりあえず俺が知ってる限りのことは教えてあげるよ。」 「ホントに!?ありがとう、助かるわ♪それじゃぁお願い。えぇっと・・・」 門番2「名前?エロルドっていうんだけど・・・。君はなんて呼べばいいかな?」 ふと考え込み、本名かゲーム名かを悩む。 ラクチェ「そうね・・・『ラクチェ』でいいわ。」 エロルド「わかった。じゃあラクチェ、早速この世界のことを話すよ。」 エロルドは本棚から地図を取り出して机に広げ、この世界の現状を話し出した。 ―――――・・・この世界は現在7つの国で支配されている。 フォルトナ国、エリュシオン国、フェンリル国、ナイアード国、ドラッヘンバルト国、レーヴァテイン国、蒼き太陽の神々国・・・。 各国ともそれぞれの思想に基づき、この世界の統一を目指そうとしている。 そのどれもが『己が信ずる正義』が根底にある為に、思想が相反する他国と特に友好を持つこともなく戦いに明け暮れる昨今なのだという。 その中で唯一フォルトナ国のみが平和思想を掲げ、自ら戦いに赴くこともなく自己繁栄に努めている。 今いる国フェンリルも隣国のエリュシオン国との小競り合いが絶えず、月日が過ぎるごとに激化していっている。 そこでこれ以上お互いの消費が多くならないうちに、全面戦争をもちかけたところらしい・・・――――― エロルド「・・・というわけで、そのピリピリした状況で君が来たわけだよ。」 ラクチェ「あぁ、だからあのもう一人の門番は苛立ってたのね。」 エロルド「うん。そういうわけだからあまり責めないでやってくれないかな?彼も根はいい奴なんだ。」 ラクチェ「別に気にしてないけど・・・でもあの人は兵士には向いてないんじゃない?」 先程の小心者ぶりを見てのことだろう。確かにあれではな・・・。 エロルド「はは・・・^^;まぁ彼も好きで兵士になったわけじゃないからなぁ。。」 ラクチェ「・・・好きでなったわけじゃない?」 エロルド「あぁ、こういう世の中だからね。国を護るためには兵が必要ってことさ。」 ラクチェ「それはわかるけど・・・もっと適材適所ってものが・・・。」 エロルド「・・・まぁ・・彼の場合はもっと複雑なんだよ。。」 少し哀しそうな目をしながら言うエロルド。 ラクチェはそんな彼にそれ以上は聞かなかった・・・。 (聞いた限りではゲームのラグナロクと大した違いはなさそうだけど・・・。私がフェンリルの兵士と認知されていないことからもゲームとは別物みたいね。。) ゲーム内の『ラクチェ』はフェンリル国内では古参で認知度は割と高い方だ。 国外でも『聞いたことはある』程度でもあるはずなので、エロルドが知らないということは『ゲームとは違う世界』であることを裏付けることでもある。 もちろん彼女も『エロルド』という名前に聞き覚えはないので、そちらでも裏付けはとれるのだが・・・彼女は忘れっぽいところがある為、確実性は薄くなってしまうのだ。 ラクチェ「・・・ダメ元で聞いてみるんだけど、フェンリルの国王って・・・『銀狼』って名前だったりする?」 エロルド「いや?『レグス・ラ・フェンリル』様だけど・・・。『銀狼』って誰だい?」 ラクチェ「あ、あはは・・気にしないでw」 怪訝な顔をするエロルドに笑顔で返し、考え込む。 (やっぱり違う・・・か。ということは他の国も違うって考えた方がいいね・・・。) ラクチェ「うん、状況は解ったよ。問題はこれからどうするか、なんだけど・・・。」 エロルド「・・・個人で調べるのには限界があるだろうし、王にお願いして調べてもらうってのはどうだろう?しばらくこの国に滞在してもらうことになるけどね。」 ラクチェ「え・・・?それは嬉しいけど・・・いいの?」 エロルド「あぁ。・・・まぁ戦争のこともあるから後回しになるかもしれないけどね。」 ラクチェ「それでもいいよ!・・・ありがとう。」 エロルドは照れくさそうに微笑み、『それじゃあ王城に行こうか』と席を立った。 (ラッキー♪これでなんとかなるかもw) ラクチェは意気揚々とエロルドの後を付いていった・・・が、ふと思い返して疑問を口にした。 ラクチェ「・・・ねぇ。そういえば、ただの門番の言う事を王様に信用してもらえるの?しかもこんな突拍子もないことを・・・。」 そういえばそうだな。一般的なイメージでは門番が王に面会することすら難しそうだが。 ゲームであればまったく関係ないのだがな。 エロルド「あー・・・。まぁ、行けばわかるよ。」 エロルドはとぼけた感じで誤魔化し、王城へと歩いていく。 ラクチェはその意図を読めぬまま、彼の背中を追いかけていった。 |