ナイスガイ育成術
私の教えを叩きつけられる彼は、 一体どのような男になるのであろうか… 小学5年になった長男が、 今日初めて家庭科の授業を受けた。 前の晩、彼はポップコーンを作るのだと張り切っていた。 そうかいそうかい、私の頃は最初はミルクセーキを作って、 しかもしばらく家でも作ったもんさ…。 そう言いながら、私は息子のエプロンの準備をしていた。 市販の子供用エプロンは、どうも購買意欲がそそられず、 私が以前仕事で使ったエプロン(ギャルソンみたいなの)を、 彼に譲る事にした。 彼の班には恐らく学校一かわいいと思われる女子がいるので、 彼女の気でも惹けばいいのではないかという、 勝手な親心でござんす。 そして、三角巾代わりのバンダナにアイロンを当てていると 長男が『このバンダナは?』と、 真新しいバンダナを持ってきた。 それは、去年のバレンタインに、 長男がもらったチョコと一緒に入っていたものだった。 『この、たわけが!!』 キョトンとする長男。 『なんで?こっちのが新しいじゃん。』 そんな長男を座らせ、私はこう力説した。 『バレンタインにもらったものを、学校に持って行く… これ即ち、両想いの証なり!!』 『………はぁ。』 『チョコをくれた彼女の事が好きならば、持って行けい。 母はもう何も言うまい……。 じゃがしかし! そうでないならば要らぬ期待を持たすだけであるぞ。』 『いや、何もそんな……。』 『よく聞け、息子よ。 このバンダナを頭に巻く姿を例の彼女が見る。 きっと彼女はこう思うであろう。 私のあげたバンダナ…!こんなところに持って来るなんて、 もしかして私に気があるのかも!とな。』 『それはないよ~。』 若い…。彼はあまりにも無知だ。 『息子よ。それが、それこそが恋なのだよ。』 息子は例のバンダナを、元の位置に収め、 ため息を吐きながらこう言った。 『女って面倒臭いね。』 だが息子よ。 もう何年もすれば、その面倒な女に振り回されるのかも知れんぞ。 だから今の内に、女の極意をしっかり伝授してやろうではないか。 そこで生米食ってる薄皮饅頭(三男)。 お前は最後だ。