テーマ:ショートショート。(573)
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お題は、ジープ、よろこびの酒、電気スタンドです。
だから何だ?よろこびの酒って。またきっと固有名詞だな。 港町の夜は凍えそうな寒さだった。 「寒いな。どこかに入ろうよ」 「スターリンさん、お金持ってるんですか?」 「預かった旅費に手をつけてしまおう」 「警部なのに貧乏なんですね」 二人は、酒場に入った。 そこは、見るからにごろつきどものたまり場だった。 「あ、キャバレーにすればよかったかな」 「…大丈夫なんですか。こんな店で」 スターリンは大男でそれなりの体躯をしているのだが、弱かった。 「おーい、マスター。何か飲み物くれ」 「何にします」 「ウーロンハイある?」 その時、二人は気付かなかったが、マントに身を包んだ二人組が店に入ってきた。 彼らはもちろんチョパニとミレディなのだが、この時は誰も知る由はない。 チョパニは、スターリンには目もくれず、店の奥の方にいる大男に話しかけた。 「おいしい酒はあるかい」 大男は大酒を食らっていたが、それを聞いて反応した。 「あんたも何か飲むか」 「よろこびの酒をもらおう」 その時、案の定スターリンが絡まれていた。 「見かけねえ顔だな。ここはよそ者が来ていい場所じゃねえんだ」 「有り金置いて謝ったら許してやる」 見るからに強いとわかる男達に囲まれていた。 だが、スターリンの肝は据わっていた。 「何だ。やるのか?」 ついでに目も据わっていた。早くも酔っぱらってるらしい。 レイチェルは一人で逃げる準備をしていた。 「こりゃ、ケンカになるな。奥についてきな」 チョパニは隠れるように、店の奥に案内された。 「ところであんた、誰の紹介だ?」 「モンテスティだ」 「ほう。珍しいな。あいつには借りがある。ここの電気スタンドもやつから回してもらったものだしな。用事は何だ」 「人を探している。ドゥゲラード卿の居場所はわかるか」 「聞いたことはあるな。パトロンを探したときに、知り合いが紹介したんだ。大層な道楽家だからな。今は、いるかどうか知らねえが屋敷の場所はわかるぜ」 チョパニが店の中に戻ると、人が勢いよく飛んできた。 とっさに避けると、スターリンが回転しながら壁に激突した。 腕と足がおかしな方向にくねっとして、泡を吹いて倒れていた。 ならず者の視線がチョパニに集まった。 「あんたらもよそ者だな」 「私はもう帰るところなのだ。通してくれないか」 険悪なムードが一瞬漂ったが、それはすぐに打ち消された。 なんと、後ろでスターリンがゆらゆらと立ち上がったのだった。 「ば、バカな。起きあがれるはずがない」 スターリンはイカれた目で睨め付けた。 「うふーふ…」 突然狂ったように暴れ始めると、周りの者を誰彼構わず殴りつけていった。 「くらえ。ジープ…いやチョップ」 ろれつのまわらなさも限界を超えていた。 しかも、鬼神のような強さだった。 チョパニはそのどさくさで酒場を出た。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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