最終話 辿り着く場所後日話 辿り着く場所「ルーナ…」 虚ろな瞳で目の前に広がる闇を見つめながらクロウは呟いた。 ルーナの最期を見とったあの部屋でクロウは何度目かの春を迎えた。 開け広げた窓から吹いてくる風が心地よい。 「…もうすぐ、お前に会いに行けそうだよ…ルーナ…」 老いて細くなった腕を宙に上げながらクロウは目を細める。 「あれからたくさん、たくさん…色々なことがあったよ。すべて話そうとしたら、一日じゃ終わらないくらいに…」 今までの人生を振り返るかのようにクロウは穏やかな口調で呟く。 人に自慢できるような、立派な人生を送ったわけではない。 思い出すと、愚かさに恥じ入ってしまう事もあった。 けれどそれすらも、懐かしく思えてしなうのは何故だろう。 「……なぁ、ルーナ…こんな皺くちゃの爺さんが側に行っても驚かないでくれよ…」 不意にクロウは眠気に襲われた。 今まで心地よく感じていた風の感覚が急に遠ざかっていく。 そしてクロウはあの時から一日たりとも忘れたことのない、とても懐かしい声を聞いた。 『……ゥさん、ねぇクロウさん…』 クロウは目を開き声の方に目を向けた。 「ぁ……」 声にならなかった…そこに、クロウがこの世で唯一愛した人がいた。 『やだなぁ、忘れちゃったんですか?』 忘れられない声、忘れることなどできる筈のない声。 「忘れるわけないだろ…」 クロウの目から涙がこぼれた。 「待っててくれたんだな…」 クロウは立ち上がりルーナをそっと抱きしめた。 いつの間にかクロウの姿があの時の…ルーナと出会った頃の姿に変わっていた。 『当たり前じゃあないですか…』 そして二人はどちらからともなく歩き出す。 『ねぇクロウさん、また色々話を聞かせてくださいよ』 「そうだな~、でもだいぶ長くなるぞ?」 『大丈夫ですよ、時間はもう気にしなくても良いんですよ』 「ああ、そうだったな。じゃあまずは……」 な? また会えただろ? 迎えに来てくれたのはルーナの方だったけどさ… 俺はルーナと会えて本当によかった。 ルーナを好きになれて本当によかった。 確かにあの時は悲しかったけどさ。 それでもまたこうして会えた。 もう絶対離さないから… 大好きだよ、ルーナ。 本当に、本当に会えてよかった。 【後書き】 楽しみにして読んでくれた方も、暇だから読んでやったぞと言う慈悲深い方も 読んで下さって有り難うございます。 これを書きながらふと思ったのは、運命は自分で変えられる、変える物だ、と良く言いますが、 作者によって完結まで考えられてから執筆された物語の登場人物は、 その運命を変えたくても絶対に変えられないんだなーと思ったり… 途中で作者の考えが変わったり、ストーリーの分岐があるような小説じゃあない限り、 執筆を進める内に、そのキャラが死ぬシーンにどんどん近づいていくわけですよ。 そう考えると自分がそのキャラを殺すために執筆しているような気も少々w。 もちろん、死ぬ事で遺されたキャラ達に及ぼされる影響と言うものも多々ありますが。 この話で感動してくれた方がいたら嬉しいです。 クロウは最後、ルーナに何を伝えたかったのか、それは物語の外側へ… 答えは皆様の心の中にあります(ぇ こんなことまでお付き合い下さり有り難うございました。 これからもGFとこのブログをよろしくおねがいします。 |