秀808の平凡日誌

第3話 陰謀

第3話 陰謀

 グレートフォレスト入り口付近にある旧レッドアイ研究所。

 ここでは以前『REDSTONE』についての情報がたくさん管理されていた。

 しかし、『シュトラディヴァディ家の反乱』が起きてから、ここも例外無く徹底的に破壊され、廃墟と化していた。



 最下層B3よりもさらに奥、ここはレッドアイの者でも一部の者たちしか知らない隠し階層である。

 幸いにも、破壊されることはなかった。階層は薄暗く、中央に大きい魔方陣があるだけだ。

 そこに、1人のウィザードが立っている。

 その者はファントム・クラウン。

 さきほど、ヴァン達と戦い、ここに戻ってきたのだった。

 傷口には手当てが施してあったが、どうやら彼がやったわけではないらしく、少し離れた所に、彼の従者なのかアーチャ-が1人佇んでいた。

 彼は中央にある魔方陣に近づくと、何かしらの『スイッチ』を押した。

 すると、魔方陣が輝きはじめ、薄暗い部屋の周りのたいまつが一気に点灯し、明るくなった。

「クソ・・・追放天使があれほど頑固で融通の聞かん奴だったとはな・・・」

 ファントムが魔方陣にある何かしらのキーに指を走らせながらつぶやく。

 ヴォン という音とともに魔方陣の中央から『ホログラム』と呼ばれる、データを具現化した物が浮かび上がった。

「・・・このままでは、わざわざ悪魔を殺してまで奪った意味が無くなる・・・」

 その間にも、表示されたデータは切り換わっていく。

 言語は、この世界のものではなく、あきらかに『天界語』で表示されていた。

 よくはわからないが、炎のような紋章の数字だけかなりの異常を示していた。

「・・・このまま火の元素の割合が高くなれば、大変なことになるな・・・そのことをわざわざ説明までしてやったというのに・・・アシャーめ」

 ファントムは軽く舌打ちすると、近くにいた従者に向かって「キャロル!」と言った。

 キャロルと言うらしいアーチャ-が振り向いて答えた。

「なんですか?ファントム様?」

「今、怪物共はどれぐらい動かせる?アウグスタ付近のだ」

「ざっと、ウルフとティンバ-マンぐらいですか」

「よし・・・私の予想では、すでに奴等は道の中間点まできているはずだ、そこを襲撃させろ・・・わかったな?」

「・・・今まで怪物達を動かさなかったのに、今ごろなぜ?」

「フ・・・」

 頬につけられた傷跡をさわりながらファントムはいう。

「・・・私がやられっぱなしで、黙っているわけが無い。それにだ・・・」

 奥の祭壇らしき物に収められている『赤い石』を見つめ、言い放った。

「・・・火の神獣の『ヒナ』の羽化も近づいてきている・・・急がねばな。」

 その石は、あきらかに『REDSTONE』そのものであった。



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