秀808の平凡日誌

第11話 破壊

第11話 破壊



 ブルンネンシュティグの東門で、戦闘が始まった。

 ロレッタとアシャーは、国王に”もしも”のことがあったときのため、王の間の前の広場で待機していた。

 ラムサスとレヴァルは東門の方の援護に向かっていた。

 戦闘が始まったといっても、古都の東門は厚さ25cm、高さが4mもある巨大な鋼鉄の扉だ。それを打ち破っていまだ入れたモンスターはいない。

 レッドアイ所員や、信仰者達が壊そうと扉に攻撃するが、攻撃は一向に通る気配はない。逆に、扉の上に待機していた弓兵やウィザード達の攻撃で倒されていくばかりであった。

 そんなときだ、例の『輸送車』が到着したのは。



「・・・ついた、行くぞ。お前たち」

 隊長格の戦士はそう告げると、懐から薄緑色の水薬のようなものを取り出し、彼等に手渡した。

 彼等はそれをぐいと飲み干すと、それぞれの獲物に不備はないかチェックしはじめた。

 確認している間、戦士は今回の目的は彼等に告げる。

「・・・いいな?城の中にいるブルンネンシュティグ国王だけは、殺しちゃいけない・・・わかったな?」

 ミーシャがボソリと答える。

「つまりそれ以外はいくらやってもいいんだろ?」

「つまりそういうこと」

 ラベルがしたり顔でうなづき、レーシェルは端整な顔を下品に歪め、

「ゴチャゴチャうるせーぞ」
 
 と吐き捨てる。

 戦士が、彼等に注意するかのように呼びかける。

「喧嘩ならやめな。レーシェル、お前は一番最初に活躍してもらうことになる。あの扉が、なかなか破れない。・・・お前ならできるな?」

 レーシェルはそれを聞き、にやりと笑ったあと、

「当たり前だろ?・・・祭りの先陣は、いつも俺がきってるんでね」




「な、なんだ!?あれは!?」

 東門の上で迎撃していた弓兵達が、レーシェルの持っている巨大な砲筒を見、驚愕の声をあげた。

 同じくそれを見ていたラムサスが、苦痛の表情で告げる。

「奴等の新兵器かもしれない、全部隊、あれに攻撃を集中するんだ!」

 それにならい、全弓兵、ウィザードがレーシェルに攻撃を集中する。

 だが、常人ではありえない速さで次々と攻撃をかわすレーシェル。

 そのとき、隣りから血飛沫が舞い上がった。

 顔を向けると、ラムサスの隣りにいた兵士の首が断ち切られ、ただの肉塊と化していた。

 その横には、巨大な鎌を血に染めたラベルが、鎌の刃筋をつたってくる血をなめながら、叫んだ。

「まずは1人だ・・・どんどん殺してやるよ!」

 そして新たに近くにいた兵士の首を狙い、鎌を振り下ろす。

 それに気づいたラムサスが阻止しようと『ウォーターキャノン』を至近距離から撃ちこむ。

「やらせるか!」

 背中からの突然の衝撃に、鎌はその兵士の首を捉えることはなく、すぐ真横の足場に振り下ろされた。

 すさまじい衝撃とともに、土煙が舞い上がる。

 ラベルは鎌を持ち直すと、ラムサスを見、子供が新しい玩具を与えられたかのような笑みを浮かべ、言った。

「ちっとは出来そうな奴・・・殺してやるよ!」



 
 レーシェルは、今保持している巨大な砲筒を、扉に向けた。

 そして懐から、なにやら砲弾のようなものを取り出し、砲筒に入れる。

 入れた後、その砲身に小さく取り付けてある引き金に指をかけ、引くと同時に叫ぶ。

「・・・祭りだ祭りだ!さぁおっぱじめようぜぇ!!」

 その直後、砲筒から火球がすさまじい速度で扉に吸い込まれるかのように向かい、激しい爆発と衝撃が広がった。



 扉は破られた、たった一発の砲弾によって。

 その勢いに乗じて、次々とレッドアイ警備兵や警備犬が古都になだれこむ。

 ・・・と同時に、中で待機していた兵士達も、すぐに迎撃を開始した。

 その中で、今レッドアイ護衛兵を『ダブルスローイング』で倒したレヴァルが、兵士3人を一瞬にして倒したミーシャに気づく。

 あちらもレヴァルに気づいたのか、常人にはありえない瞬発力でレヴァルに近づく。

 そして振り下ろされた爪『ドラゴンクロー』による攻撃を、両手に持った『フランシスカ』で受け止める。

 すぐにやられると思っていたミーシャが驚きながら、静かに、そして冷徹に呟く。

「へぇ・・・少しはまともなのがいるじゃん。相手してよ」



 敵のほとんどこない広場で待機していたロレッタ達は、突如現れた人影に武器を慌てて構える。

 それは、あの隊長格の戦士・・・レクルだった。

 体は『コンポジットアーマー』に防具を固め、背中には『エグゼキューショナーズソード』を装備している。

 頭は、レッドアイの紋章の刻まれた大型兜を装備し、表情が全く見ることができない。

「・・・そこをどいてもらえるかな?俺は国王に用があるのだ・・・」

 それを聞いた瞬間2人は(こいつは敵だ)と理解し、武器を持つ手に更に力を込める。

 だがロレッタは、多少の疑問感を感じていた。

(こいつの声・・・どこかで聞いたような・・・?)

 道をあける意思のない事を悟ったレクルは、威圧を込めた声で言い放つ。

「道をあけないというなら・・・武力行使で排除させてもらうぞ」

 そういうと、背中の『エグゼキューショナーズソード』を抜き取り、構えた。


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