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「源義経黄金伝説」 飛鳥京香・山田企画事務所           (山田企画事務所)

第13回■吉次、昔を思いやる!

義経黄金伝説■第13回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http:// www.yamada-kikaku.com/

第2章 一一八六年(文治2年) 平泉

■■6一一八六年(文治2年)10月 多賀城・吉次屋敷

平泉で、義経が感激している時期、西行は少し離れた、多賀城(たがじょう)
(現・宮城県多賀城市)に入っている。奈良時代から西国王朝の陸奥国国府、
鎮守府がおかれている。つまり、多賀城は西国王朝が東北地方を支配がせん
がためにもうけた城塞都市である。

いわば古来からの西国征服軍と先住アイヌ民族戦争での最前線指揮所である。
ここから先は、慮外の地、今までに源氏の血が多く流されしみついていた。
今も奥州藤原氏勢力との国境にあり、世情騒然たる有様である。鎌倉と平泉と
の間に戦端が開かれるかいなか、民衆は聞き耳をたてている。

西行は多賀城にある金売り吉次の屋敷を訪ねる目的があった。
屋敷はまるで、御殿のようであり、「大王の遠つ朝廷(みかど)」多賀城政庁
より立派な建物と評判であり、金売り吉次の商売の繁盛を物語っている。ここ
だけではなく日本中に屋敷はある。

2人は先刻から、座敷に対峙していた。
吉次は赤ら顔でイノシシのような太い体を、ゆらゆらと動かしている。
体重は常人の倍はあるだろうか。
西行は、思いが顔にでていまいかと、くるしんでいる。
話はうまく行ってはいない。

「吉次殿、どうしても秀衡殿の荷駄の護衛を受けてくれぬか」
吉事はふっとためいきをいき、上目つかいで、ためないながら言った。
「西行様、、、、いくら西行様のお願いとて、吉次は、今はやはり商人でござ
います。利のないところ商人は動きませぬ。今、藤原秀衡様は鎌倉殿と戦いの
火ぶたを切られようとするところ。さような危ないところに、吉次の荷駄隊を
出すことはできませぬ。やはり、昔のような事ができませぬ」

「わたしとお主との旧い縁でもか」
「牛若様、いあや義経様が、鎌倉殿とあのような、今は、、、やはり、時期が
悪うございます」
「吉次殿、お主も偉くおなりじゃな」
 西行は吉次に嫌みを言った。
(一体誰のお陰で、、この身上を吉次がきづけたのか)という思いが西行には
ある。

「西行様、もうあの頃とは時代が違ごうてございます。今は世の中は、鎌倉
殿、
頼朝様に傾きつつまると、吉次は考えます」
「そういうことなら、仕方あるまい」
 西行、吉次の屋敷振り返りもせず出て行く。先を急がねば、
いつの間にか、姿を消していた重蔵の姿が現れている。
この2人をとりまくように、人影がまわりを取り巻き歩いている。鬼一方眼が
使わ
せた結縁衆である。
西行は重蔵に語りかけるのでもなく、、一人ごちた。
「不思議な縁じゃ。いろいろな方々との縁でわたしは生きておる。平清盛殿、
文覚
(もんがく)殿、みな、北面(ほくめん)の武士の同僚であった。清盛殿は平
家の
支配を確立し、文覚は源頼朝殿の旗揚げを画策し、この私は義経殿をお助けし
たの
じゃ。がしかし、この治承・文治の源平の争いの中を、この私が生き残ってこ
れたの
も、奥州藤原秀衡(ひでひら)殿のお陰じゃ」
西行は昔を思い起こしている。
あれは五十年程前であったか、、、。

(続く)
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