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　国連総会は10月29日，アメリカが1962年から実施している対キューバ経済封鎖を解除するよう求める決議を，185ヶ国の圧倒的多数で採択しました。同様の決議は1992年以来，毎年採択され，今回で17年連続となりました。

　賛成国は昨年より1ヶ国（アルバニア）増えて，過去最多です。

　反対はアメリカ，イスラエル，パラオの3ヶ国。昨年反対したマーシャル諸島が棄権にまわり，ミクロネシアも昨年同様，棄権しました。


　キューバのペレス外相は総会演説で，ハリケーン被災や食料・燃料高でキューバ国民が苦難を強いられていることを挙げ，「もしアメリカがキューバ人民のことを真に心配しているなら，倫理的に行動すれば封鎖を解除するはずだ」と指摘。

　「封鎖は，国際法，国連憲章の規定に違反している」と批判しました。
　
　欧州連合（EU）を代表して演説したフランス代表は，EUが6月に対キューバ制裁措置の解除を決め，関係が途絶えていたキューバとの対話を開始したことに触れ，封鎖を続けるアメリカの措置に異を唱えました。

　非同盟諸国会議を代表して発言したエジプト代表は，「主権と独立を脅かし，非同盟国に圧力をかける措置に反対する」と主張しました。

　同決議に拘束力はありませんが，国際社会が一致してアメリカの対キューバ制裁を批判したことになります。ブッシュ大統領は経済封鎖に固執する姿勢です。

　しかしアメリカ・メディアからも，「50年にもなろうとする対キューバ経済封鎖は失敗」（ロサンゼルス・タイムズ紙10月29日付社説）と，解除に向けた政策転換を求める声が出ています。


　アメリカによる対キューバ経済封鎖の解除を求める国連総会決議が17年連続で，特に今年は過去最高の賛成数で採択されたことは，キューバの体制転覆を狙うアメリカの干渉政策を世界が拒否し，アメリカが完全に孤立していることを示しました。

　大統領選を間近に控えたアメリカでは，イラク戦争の破綻や金融危機で，内外政策の根本的な転換を求める声が強まっています。そうした中でアメリカの国際的な孤立を際立たせた今回の決議は，とりわけ大きな意義を持ちます。

　いま国民の10人に7人は，生まれた時から封鎖下の生活を送っています。今夏キューバを襲った大型ハリケーンの復旧作業も，経済封鎖が大きな障害のひとつとなって難航しています。

　国連総会の討論では，経済封鎖は国連憲章や国際法に反する違法行為だと糾弾する意見が相次ぎました。

　デスコト国連総会議長は，「国連憲章の精神と内容をこれほど踏みにじるものはない」と強調。「親米国」とされるメキシコも，「社会は独自の状況に応じて発展，変化する。外からの独断的措置の押し付けでは変わらない」と批判しました。

　キューバのペレス外相は，「国際社会は，不合理で違法な政策を修正するよう明確なメッセージを送った」「アメリカとは尊重と平等にもとづいた関係を持つ用意がある」とも述べました。

　このメッセージにアメリカ政権はどう答えるのかが，いま鋭く問われています。


【参考】キューバ経済封鎖

　1959年に誕生したキューバ革命政権の崩壊を狙うアメリカが1962年から実施している措置。1990年代には，対キューバ貿易の禁止・制限を他国に強制する法律や，第三国の企業活動まで規制する法律を制定。

　キューバ外務省によると，2007年の同国の損害は約37億ドル（約3,600億円）。1962年以来の累積損害額は930億ドルに上ります。