ロシア生活2004－2012

[ペテルブルクの暮らし] カテゴリの記事

全59件 (59件中 1-50件目)

1 2 >

• 

  マトリョーシカのピアス

  というわけで、今回のロシア滞在も無事に終えることができました。え？なにか欠けている話題がある？そう、今回は常連の白猫の話がありません。なぜなら、飼い主である友人が二人目を出産したばかりで旦那さんの実家に行っていたため、ディオゲンたちには会えなかったからです（涙）でも、旦那さんの実家に呼んでくれて、生まれたばかりの小さな小さな女の子を抱かせてくれました。そこの家にも猫がいた。私が持参した日本産キャットフードは彼らの胃袋に。そして、やはり大家さんが亡くなって、寂しくなったということもあります。だいたい年に一度会うと、その間に起きた家族やら彼氏やらとの事件を山盛りで聞かせてくれて、驚嘆させられたものでした。留学を終えてから何年も経ったのに、ペテルブルクは今もなんとなく、もう一つの生活の場のような気がします。でも今回は、皆も私も、いろいろな環境の変化を経験しているんだなぁ、と思いました。もっとも、新しく生まれる人がいたり、新しく知り合う人がいたりすることは、とてもワクワクすることです。いずれまた、ロシアに行く機会があることを楽しみに。マトリョーシカのピアス。友人へのおみやげ。

  2012/03/26

• 

  水辺の街ペテルブルク

  街歩きをして撮った写真を数枚。フォンタンカ運河グリボエードフ運河モイカ運河海軍省、イサーク寺院、宗務院手前に見えるのは雪原のようですが、ネヴァ川です。どの水辺も厚い氷で覆われていた2月のペテルブルク。今はもう、雪が融けている頃でしょうか…

  2012/03/25

• 

  レニングラード900日包囲戦

  ソ連時代、ペテルブルクは街の名前を「レニングラード」と変えていました。その時期の大きな出来事の一つが、ドイツ軍による包囲戦（1941年9月8日－1944年1月27日）です。すなわち、第二次世界大戦のときに、この街はナチス・ドイツによって約900日間包囲されたのです。空から繰り返し爆撃されても敵に囲まれているので街から逃げられず、また、食糧や燃料が枯渇して餓死者、凍死者が相次ぎました。レニングラードの人々は草や土まで食べたと言われます。いつ終わるのか分からない極限状況が900日。最近、終わりの見えないストレスがあると人は鬱になるとかよく言われますが、これは、ちょっと考えられないレベルのストレスではあるまいか。と、そんな話を一年ぶりに会うロシア語の先生としていたら「マネーゲームを知っている？」と聞かれたので、拝金主義の横行するロシア、ついにそんなカタカナ英語まで定着したのか！と思ったらそうではなく、マンネルヘイムのことでした。（ロシア語では「ヘ」が「ゲ」になるので、「マンネルゲイム」と発音される。）彼はフィンランドの最高司令官で、ドイツと同盟していたのですが、レニングラード包囲戦の支援はしませんでした。なぜなら、マンネルヘイムは革命前、ロシア帝国の将校だったため、ペテルブルクを愛していたから。（ただ、先生が「マンネルヘイムのおかげでこの街は助かったのよ！」と言うのは、少し違う気も…ソ連とフィンランド、戦争してたし…）フィンランドで寄り道したのでマンネルヘイム像の生写真あります。今回の滞在の終わりのほうで、市の北部にあるピスカリョフカ墓地に行きました。ここは、900日包囲による犠牲者を悼む記念墓地です。ただ、雪に覆われて、何がどこにあるのかさっぱり分からなかったのですが…両脇は墓石なのかな…？ペテルブルク市内には博物館があるそうです。この900日包囲による戦禍で、革命後も旧首都として繁栄していたペテルブルクが一地方都市に陥落した、とも言われています。

  2012/03/24

• 

  地下鉄でニンジンをむく

  地下鉄に揺られていたら、乗ってきたおじさんが黒いカバンを床に置き、大きな声で滔々と話しはじめました。手には、ニンジンが。「尊敬する乗客の皆さん！今日は皆さんに素晴らしい製品をご紹介しましょう。それは、このピーラー（皮むき器）です」（そこで、黒いカバンから　ピーラーをとりだす）「これは大変品質が良く、　この通り、ニンジンの皮を　手早くむくことができます」（シュッシュッと、ニンジンの皮をむく。　むいた皮は、黒いカバンの中に落とす）「逆さにして反対の部分を使えば、　ニンジンをスライスすることができます」（ピーラーもニンジンもさかさまにして、　手早く千切りを実演する。　千切りも、黒いカバンの中に落とす）「スライスしたニンジンは　韓国風サラダにどうぞ。　ニンジン以外にも、　スヴョークラや玉ねぎに使えます。　この優れたピーラーが、　今なら100ルーブル（＝約280円。円高だなぁ）　たったの100ルーブルで、手に入ります。　必要な方は私に声をかけてください」ロシアの地下鉄や郊外電車にはこのような物売りがしばしば現れます。今回のおじさんは朗々とよどみなく、レシピの指南まであって、たいへん結構でした。しかし、地下鉄の中でピーラー買うか？まして、ネット・ショッピングが広まっているのにいまどき交通機関で調理器具を買う気になるか？？と、懐疑的に眺めるワタシ。ところが、おじさんが車内を練り歩くとドア横の席に座っていた若い女性が声をかけて100ルーブル札を渡すのです。えっ、サクラじゃないの…？と思いきや、初老の男性や中年の女性が次々に物売りのおじさんを呼び止めて、ピーラー屋さんは大繁盛。ビックリしたので、思わず写真を撮ってしまいました。販売中。あの黒いカバンの中にはピーラーと予備のニンジンとが入っていると思われる。まだこういう商売、健在なのだな。表の店で売っているのものは高いから、非正規ルートがあれば、それでお得に手に入れよう、という考え方。亡き大家さんを思い出します。いや、もしかするとネット・ショッピングも、同じ考え方なのか？だって彼らは、ネット検索をして、安く売っている場所に足を運ぶんだもんね？「クレジット・カード決済で便利」とか「クリック一回で自宅に届いて楽」とか言って、クールにお買い物するのとは訳が違うのか？あれこれ考えているうちに地下鉄は次の駅に着き、物売りのおじさんは商戦を拡大すべく、隣の車両に乗り換えていきました。

  2012/03/17

• 2012年のロシア渡航【入国準備編】

  2012年も、ペテルブルクを訪れる機会がありました。約一年ぶりにブログを更新します。昨夏に大家さんが亡くなってしまったため、今回はこれまで考えないでよかった、「どこに泊まるか？」という問題が生じました。ホテル？でもペテルブルクのホテルはむやみに高い。そして高いお金を払ってもよいものが手に入るとは限らないのが、長いことサービスという観念のなかったロシア。ホテルだって、きっとトラブルが発生するんじゃないかしら。壁が薄いとかお湯が出ないとか暖房が弱いとか南京虫がいるとか…（←いつの時代だ。）すると、知人から驚くべき情報が。「ネットで申し込めるアパートメント・ホテルがあるよ。『オクサーナ』っていう旅行業者がやってるの」な、なんかロシア人のお姉ちゃんが微笑んでるサイトですね。しかし、ロシア人相手に、ネットで申し込んだりクレジット・カードで支払ったりして、ほんとうに現地でちゃんと宿所が用意されるんですか…？「大丈夫。去年頼んでみたけど、すごくスムーズだった。 メールで問い合わせてもすぐ返事が来るし、 メールは英語で大丈夫だし」えっ、ロシア人が問い合わせメールにすぐ返事を…？そんなアメリカンなことが、本当に…？？だけど、ロシアに入国するには向こうの旅行業者に招待状を出してもらって、日本のロシア大使館でビザを申請しなきゃいけないじゃないですか。「それも大丈夫。 招待状は、この業者が PDFファイルでメールに添付して送ってくれるから それをプリントアウトして、 東京のロシア大使館に持っていけばいいんだよ」ええっ、招待状がメール添付のPDFファイルで！そんなの、ほんとにロシア大使館が受理するの？？半信半疑ながら、ものは試しと『オクサーナ』にメールを出すと、たしかにオクサーナという女性からすぐに英語で返事が来てさくさくと手続きは進み、ほんとうにPDFファイルで招待状をゲット。それで、未だに半信半疑ながら、麻布のロシア大使館に持っていったら…窓口の係官はすんなり受理して、2週間後には無事にビザが発給されたのでした。（しかも、即日とか1週間とかではなく　2週間後でよければ　ビザ発給って無料で済むんですよね。）こんなにスムーズな入国準備は、初めての経験です。何がどうしたのだろうか、ロシア。少し戸惑いすら感じながら、今回の滞在は始まりました。

  2012/03/08

• 

  ニコライ二世の暮らし

  滞在も終わりに近づいた週末、ペテルブルク郊外の街プーシキンをちょっと歩きました。革命前の名前はツァールスコエ・セローというロマノフ朝代々の皇帝が暮らした宮殿都市です。今回は最後の皇帝ニコライ二世ゆかりの場所をいくつか。フョードロフスキー聖堂ニコライ二世ファミリーが礼拝するために1909-1912年に建立された教会で、第二次世界大戦時にドイツ軍に破壊されたのを1990年代以降に再建したそうです。特に、地下に作られた聖人セラフィーム・サロフスキーに捧げるお堂は皇帝一家専用の祈りの場だったのだとか。（撮影禁止だったので、web上から借用）実際にはもう少し暗くて、祈りに没頭できそうな雰囲気なぜそんな自家用教会をここに建てたかといえば、一家が暮らしたアレクサンドロフスキー宮殿が広場をはさんですぐそこだったからです。勤行の時間だから、庭をつっきってお参りしてくるわ、てな感じだったのでしょうか。（庭といっても広大ですが。）木立の向こうにあるのが宮殿教会が古式ゆかしい建て方だったのに対してこちらは当時のトレンド、アール・ヌーヴォー様式による内装でした。（もっとも、復原されているのは一部でしたが。）とりわけ、ニコライ二世の緑色の書斎は隅々まで粋が凝らされて、印象深かったです。（こちらもweb上から借用）カーテンの柄や照明がオサレ壁には父アレクサンドル三世の肖像。よく見ると皇太子アレクセイの肖像も新旧の趣味を混交させてずいぶん心地よく暮らしていたんだなぁ。1917年の革命でニコライ一家は、まさにこの宮殿から連行されてシベリアに送られたのだそうです。

  2011/04/27

• 大統領にメールした話 (2)

  住宅委員会で適当にあしらわれて怒った息子がメドベージェフ大統領にメールしてから2週間。委員会から先生に電話が。「レニングラード地区の部屋を 提供することになりましたから、 手続きに来てください。 あなた、やってくれましたね」なんという水戸黄門型大団円。もちろん大統領本人が動いたわけではなく、大統領府の目安箱的メール受付部門がペテルブルクの住宅委員会に指示を下したのだと思われますが、それで事が一気に進むんですね。そういえばプーシキンにも女帝エカチェリーナの鶴の一声で一発解決する話があったっけなぁ。これが、200年経っても変わらないロシアの特質なのでしょうか。ロシアの電脳化はめざましく、今回仕事をした文書館も事前に国外からメールで必要な史料を注文でき、コピーも後からPDFファイルとしてメール添付で送ってくれるようになっていて、たまげました。（かつての状況を読んでいただければ、私の驚愕も分かろうかと思います。）しかしその際も、コピーの注文には窓口でとんでもない量の署名が必要だったり係の人が笑みを浮かべつつ、実は全然親切じゃなかったりします。メールやらtwitterやらの電脳ツールがほらボクたちロシアも今はこんなにオープンなんだからというアピールに用いられつつ、その背後にある制度はあくまでもロシアだということでしょうか。空港タクシーが、受付や外見を小綺麗にしつつ中身はとんでもない運転手だったのも同じ図式と言えるかもしれません。ネット文化といえば、ソーシャルネットワークの普及も顕著です。「Facebook」も人気ですが、「V Kontakte」というSNSがより大きなシェアを占めているようです。これまた久々に再会した図書館研究員のマダムは先日、道でパスポートを拾い、落とし主を「V Kontakte」で検索して見つけ、無事に返せたそう。「それが地方からペテルブルクに来て　大学に入ったばかりの男の子で、　図書館に取りにくるように言ったんだけど　サドーヴァヤ通りがわからなくて迷っちゃって、　ペテルブルクに住んでサドーヴァヤも図書館も　わからないのもどうかと思うし、　そもそもパスポートを落とすのも　相当うっかりしてるし、　こんな子を遠くで一人暮らしさせて、　お母さんはさぞ心配だろうと思ったわ」ちなみに晴れて一人暮らしの住居を得たロシア語の先生の息子のほうは「ここまでの住宅委員会とのやりとりで　精神的に参ってしまったらしくて、　仕事に行かれなくなって　新しい家に引きこもってる。　おかげで私が家賃を払わなくちゃいけないのよ！」Boysの一人暮らしもなかなか大変ですね！

  2011/04/16

• 大統領にメールした話 (1)

  これまた一年ぶりに再会したロシア語の先生のご家庭では、20代のご長男が一人暮らしを始めたそうです。これまで二人の住まいはペテルブルク中心部にある、コムナルカという共同住宅でした。これは現代風に言えば4LDK、5LDKといった規模のロシア帝国時代のマンションの各部屋をソ連期に数家族に分配したものです。そのため、赤の他人同士がキッチン風呂トイレ共用で一つ屋根、というか、一つ天井の下で共に暮らしています。ソ連崩壊から20年経ちましたが、住宅不足のためにまだペテルブルクにはかなり残存。今の日本だとシェアハウスという居住形態が注目されるようになってきたりして、時代が追いついてきた？と見えなくもないですが、彼らはやりたくてやってるわけではないので同居家族間にしばしば揉め事が起こり、かなりストレスがたまるそうです。先生の息子も隣家の主婦と大ゲンカし、「もう我慢できない！　ママは中等学校の教師だから、　教職従事者向けの住宅枠があるだろう！！　頼むから申し込んでくれ、　そしたらオレはそこに出ていく！！！」そこで母子は市の住宅委員会に出かけていったのですが、長い長い順番待ちリストを見せられて、けんもほろろの対応だったとか。そこで、結婚して他所に暮らしている長女に「ママがコムナルカから追い出されることになって　路頭に迷いそうである、　国に尽くしてきた教師がこんな目に遭っていいのか！　ってゴネてらっしゃい！！」と助言を受け、再び住宅委員会に行ってみたところ、今度はある地区の物件を見せてくれたとのこと。（たぶん窓口で相当怒ってみせたんでしょうね…）ところがその後、数ヶ月待ってもさっぱり手続きが進められる気配がない。しびれを切らして電話してみると「なんのこと？」ととぼけられる。そこで怒髪天を衝いた息子がとった手段が大統領にメールを書くということでした。Twitterを始めて話題になったメドベージェフ大統領、お便りはこちら、というメルアドも公開しているらしいのです。（と、ここまで書いたところで時間切れになったし長くなってきたので、続きはまたあとで。）

  2011/04/13

• 

  ザゴロドヌイ大通り

  一年ぶりのペテルブルクは、ずいぶん派手になっていました。ネフスキー大通りにはチェーンのレストラン、大手の携帯電話会社、銀行、ファースト・ファッション大型店などなどが並び、黄色やら赤やらの看板、ネオンが踊っています。モスクワ駅の周辺では、斜向かいに北欧資本のストックマン、裏にはガレリアという、巨大な百貨店が二つもオープンしていてびっくりしました。ストックマン（店のHPより）。行ったときは、なぜか停電していましたが。景気が上向きなのはいいことだけど、なんだかモスクワと似てきたというか、ペテルブルクの慎ましさが薄れてきたというか…そんな懐古趣味のヒトにお勧めするのはザゴロドヌイ大通り。カフェや去年行ったソ連風ジャズ・ホール、小規模な大学や博物館など結構いろいろあるのですが、昔の繁華街の面影を充分に残しています。ということで写真を何枚か。ザゴロドヌイ大通りの往来奥の丸塔のところには、四つ角ならぬ五つ角というドライバー泣かせの交差点があります。アール・ヌーヴォー様式のビルヴィテプスク駅（写真はいずれも、ネットから借用）ベラルーシ方面の長距離列車やプーシキン（ツァールスコエ・セロー）、パーヴロフスクなど近郊観光地への電車が出る駅です。待合室もアール・ヌーヴォー様式で、とてもよい雰囲気。塔のあるビル革命前には、この建物の中庭に「ペトロフ」というウォッカ業者があったんだそう。ライバル社だった「スミルノフ」は今でも有名だけれども、こちらは廃業して忘れられてしまったんですって。ちなみに久々にお会いしたちょいワル親父風写真家のサーシャさんは、昨年こっそりとあの塔に登ってみたそうです。「高いところから大通りを撮影したかったんですか？」と聞いてみたら、「いや、ただ登ってみたかったから」なんか天井が骨組みだけで足場崩れてそうに見えるんだけど！？ 手入れの悪さと表裏一体で昔の雰囲気が残っているのも、ペテルブルクのよさのように思います。

  2011/04/05

• ペテルブルクの空港タクシー

  2011年3月中旬、一年ぶりにロシアにやってきました。降り立ったのは、ペテルブルクの郊外にあるプルコヴォ空港です。このとき、震災が起きてまだ数日。いろいろなことを日本に残して、一人ここにいてよいんだろうか。そんな私の迷いにはもちろん関係なく入国審査を通り、（そして私の迷いに関係なく、通らないときは通らないわけだが）空港ロビーへ。するとそこには、若くて小きれいな格好をしたお兄さんの立つ「TAXI」と書かれたスタンドが。こんなの去年はなかったなぁ。「市街へ行くタクシーはここで注文するんですか？」「そうです、ここで注文してください。　どこまでですか？」お兄さんは察するに大学生くらいのバイト。その脇には、ジャンパーを着たおじさんがスタンドに寄りかかって立っています。「K通り1の15番地まで」するとおじさんが「K通りなら知ってるぞ」どうやら順番待ちの運転手らしい。お兄さんが「その地区までだと950ルーブリ（約3000円）です。　お帰りの際も当社をご利用ください」と言って渡した伝票を手に、おじさんに荷物を持ってもらってタクシーへ。車は派手な赤い塗装で、ぴかぴかに洗浄済み。一年来ないうちに、ロシアはなんと文明化したのでしょうか…！　　＊　　　＊　　　＊と感激するのは早かった。渋滞を抜けて市街地に入ったけれども、おじさんはK通りがわからなくてイライラしはじめる。ようやく見つかったものの、通りの入口で止めて「ここだ」と言う。「ここじゃありません。　もう少し先まで行ってください」「なんでだ、あんた15番地だって言ったじゃないか」「1の15って言いました」「ここだよ！」「私、そこに一年住んでたんですよ？」「あんたが15番地って言ったんだ！」さっさと降ろして片づけたいのが見え見え。正直に言いましょう、私も震災の件でかなりイライラしてました。それで、実に大人げないことでいま思い出すとお恥ずかしいのですがつい頭に血が上り、「じゃあいいですよ、ここで降りて自分で探しますから。　しかし変ですね、ここだとは思えないんですけどね！」するとおじさんは怒ってアクセルを吹かし、通りを驀進。ようやく見慣れた家が現れたので「そこでいいです」と言って、1000ルーブリを渡すと私と荷物を降ろして発車しようとする。「ちょっと」「なんだ」「空港で950ルーブリって言われたんですけど」「それがどうした」「今、私はあなたに1000ルーブリを渡しました」おじさんは顔をしかめて釣りの50ルーブリをよこすとまたアクセルを吹かし、後ろから来た車にクラクションを鳴らされながら走り去っていきました。外見はいっぱしの空港タクシーでも、まったくもって油断ならん…！帰りは絶対に頼まないぞ！！！（いま一瞬、チップと見做された可能性を考えましたがこれはロシアではあまり一般的な慣習ではなかったし、しかもその前にあの対応だったら、出す気も失せますよね！）落ち込んでいてはいけません。ここはロシアなのです。俄かに闘志が湧いてくるのを感じながら、今回のロシア生活は始まったのでした。

  2011/04/03

• 

  マトリョーシカ・グッズ

  今回ロシアで入手したマトリョーシカ・グッズ。本家本元のマトリョーシカもありますが、キーボードと比べると、小ささがわかるでしょうか？こんなランチ・マットも。そして、ついにロシアでも開店したというスタバのタンブラー。本国ロシアでも、マトリョーシカのキャラクター化が進行しているようです。空港の売店では、着色前の木のマトリョーシカと絵の具、絵筆がセットになって「自分の好みでマトリョーシカを塗ってみよう！」とか書いてあるおみやげ、約3,000円相当を見かけました。でも、制作側の労力が省かれていることを考えると、3,000円は高いんじゃないかな…

  2010/03/08

• コノゴロ　ミヤコニハヤルモノ (2)

  さて見知らぬおばあさんが口にした三大イライラの最後、渋滞は、昨年、一昨年の短期滞在時でもびっくりすることしきりでした。日本車、ヨーロッパ車が順調に売れて、道路も駐車スペースも許容量を超えたのです。ところがこの冬はそこに、大雪という要素まで加わりました。四半世紀ぶりくらいの雪の量で、除雪が追いつきません。「だからあちこちで交通事故よ」久々に会ったロシア語の先生の娘が自分の三菱車に私を乗せて言います。「こんな雪、当局は想定してなかったのよね。　ほら、あそこでも事故」「あの、いま、この道路、　雪でハンドルが不自由だったり　凍ってブレーキがきかなかったりしてるよね…？」「そうよ、だから私も運転してて心配なのよ～」助手席の私も心配だぜ…（真っ青）（ちなみにロシアの交通安全お守りは　正教会聖人のイコンです。）まぁでもどうにか大通りを走破し、彼女のマンションの敷地に入ります。「それでも公道はまだいい。　マンションの中の道が最悪。　車輪が通ったところは踏み固められるけど、　轍の間に、今年はものすごい量の雪が積もってて、　誰も除雪しないから　車のお腹がそれをこすって走っちゃう。　それであちこちで車が故障してて、　私の車も壊れたのよ！」さあどうぞ、と家に迎え入れられ、食事をしながら「ロシアだと車の寿命が短いでしょうね」と言うと、彼女は「そうよ、だから中古車市場でも　ヨーロッパで2、3年走った車なら売れるけど　ロシアで2、3年なんて言ったら売れないわよ！」「日本の技術者は、きっとこんな大雪の国で走ること　考えてないんじゃないかな」「そうかもね」するとそこで、一緒に食卓を囲んでいた先生が「待ちなさい！北欧を考えてごらんなさい。　同じようにたくさん雪が降っても　普通に車が走っているでしょう。　（娘に）フィンランドではどうだったの？」「除雪されてた」「ほらご覧なさい！　結局はロシアがこういう国だからなのです（ため息）」一月以来の大雪で、除雪が追いつかないことに市民から不満の声があがった時にこの街の女傑市長は「しばらくは若い人が毎朝、　運動がわりに雪かきすればよろしい」と発言して、みんなアタマにきちゃったそうです。とはいえ、そこで憤激しつつもどうせお上はアレだから、と思って自分たちでどうにかするのがロシア人なのかしら…とか考えていると、窓の外から人の声が。近所の人が、シャベルを貸してくれ、と言っているらしい。「車が雪で埋まっちゃったんだって」その後、寒い中、遅くまで二人の男性が舌打ちしながら駐車場を掘っていました。

  2010/03/06

• 

  コノゴロ　ミヤコニハヤルモノ (1)

  車道に降り積もった雪は両脇に投げ寄せられる形で除けられているので、歩道には実際に降った以上の雪が積もり、往来する人が踏み固めた足跡が一筋だけ、獣道のようについています。これがとても細いのでバランスがとりにくく、前を歩いている知らないおばあさんも、何度もよろけます。 苦労して通りの端まで来たおばあさん、交差点を渡ろうとしますが、少し先で信号が赤になったのか、眼前に次々と車が詰まって通せんぼ。獣道から抜けられなくなったとわかると、ムッとした顔で振り返って、よたよた追いついた私に「街じゅうどこも、銀行！レストラン！渋滞！　もううんざり！！」そ、そんなこと、見ず知らずの外人に言われても…でも、このセリフは、ペテルブルクの変化をとても的確に表現しているかもしれません。銀行は見かける名前が実に多くなりました。それ以上に驚くのが、一年見ない間のレストランの増加。一本の通りに5軒お店があったら、そのうち4軒はレストランだと思っていい。古都ペテルブルクには雰囲気のある建物が多いのでどこもなかなか素敵なのですが、それにしても増えすぎだろう？？不思議に思って友人に聞いてみると、ペテルブルク市が「この街にはもっとレストランがあるべきだ！」と言って、レストラン開店を助成しているのだそうです。なので、以前、雑貨屋や文房具やがあったところでも軒並みレストランに改装。都心のアール・ヌーヴォー建築の粋、エリセーエフ商店（かつて日記に書きました）も、いまは閉店中でしたが、遠からずレストランになるのかも。これで競争が激しくなったのか、既存の飲食店でも目に見えてサービスがよくなりました。紅茶がポットで出されたり。きれいなナフキンをたくさん渡されたり。なにより、店員が「ありがとうございました」と言う…！…書きあげてみると、以前がどこか異次元だったような気もしますが。（まぁそれがロシアン・クオリティーだったんだ。）毎回行く老舗ケーキ屋さん「セーヴェル」もどことなく華やいで、ショウケースにいろんなケーキがたくさん。もっとも、「ケーキと紅茶を」と頼んだら「湯沸かしが壊れたので、お湯がない。　どうします？」「…じゃあ、なるべく甘くないジュースを」「それだったらリンゴだと思う」そして出されたロシアのジュースはやっぱり甘かった。このへん、やっぱりロシアン・クオリティー…甘過ぎるティータイム（ティーじゃないけど）長くなったので、渋滞の話はまた今度。

  2010/03/04

• 

  －25℃！大雪！

  この冬、雪が多くて寒いのは世界共通のようで、着いた日に－17℃と聞いてビビったのが、日に日に下がって、最初の週末についに－25℃に到達しました。この気温は、留学中も体験したことがなかった…それでもめげずに、夜、友人と出かけたのですが身を切る風が、寒いとか冷たいとかを通り越して、い、痛い。立ち止っていると、凍えるとか風邪をひくとかじゃなくて、なにか動物的に身の危険を覚えるのです。そして翌日は－18℃で、あ、暖かい、と呟いてしまった自分がちょっと凄いと思ったり。ところが少し気温が緩むと（いや数値的にはちっとも緩くないんだけど）今度は雪が降って降って止まりません。中心部の大通りですら除雪が追い付かず真っ白。屋根の上には俵のような積雪。車は埋まり、掘り出す人多数。おかげでシャベルが売り切れ…街じゅうが、白く、いつまでも溶けない砂に静かに覆われていく様は、かなり不気味です。ロシアの知人たちの間ではこんな記録的な冬がいつ以来かがホットな話題で、「あれは私が娘を生んだ冬だから　1987年以来よ！」「あなたくらいの年だとそうでしょうけど、　私たちだと、60年代の　まだ学生だった頃の大雪を思い出すのよ！」そしてこれが戦中派の大家さんに言わせると「ナチス・ドイツがレニングラードを　900日包囲したときの冬みたいだわ！」ということになり、ジェネレーションを感じさせて、なかなかおもしろかったのでした。ベランダから下がるつらら雪降る夜

  2010/03/02

• 3月のロシア

  2009年3月中旬、久々にサンクトペテルブルクにやってきました。約1年半ぶりのロシアです。3月のロシア…それは雪がとけはじめ、現れた地表から各種病原菌が活動を再開し、長い冬にビタミン不足に陥った人々が次々にインフルエンザに罹患する時期…と、ろくなイメージがなかったのですが、日本の春休みは3月だから仕方ないの。もしかしたら間違った思い込みかもしれないし。と思ってロシアの大地の北端に降り立つと、3月のロシアは雪がとけはじめ、泥土がぬかるみ、そこに水気の多い雪がなおも降り、野菜果物は元気なくしおれ、気圧だか磁力だかのせいで会う人みんな「具合が悪いの…」とおっしゃる、実にイメージ通りの季節でありました。今回はさらに、「いま経済危機でしょ！」というのがみんな一様に口にするフレーズ。新しい自動車専用道路が何本も作られ、渋滞と駐車場不足の問題が連日テレビや新聞を賑わすほど自家用車が普及してはいましたが、消費は徐々に冷え込みつつあるのかもしれません。さてそんな3月のロシアでの2週間の滞在から、いくつかトピックを綴っていきましょう…

  2009/03/30

• 

  自動車天国到来

  一年ぶりのペテルブルク。飛行機が陽射しの強い空の上から高度を下げて雲をくぐると、そこには陰鬱な曇り空に覆われた北の大地が広がっています。茶色い土とところどころの緑の草と黄色や赤の紅葉。まだ雪は降っていません。あー久々にほんもののロシアだ、と嬉しくなり、日本での生活のことがいちどきに頭から抜けて行くワタシ。ところで、地上のあちこちに見えるあの光の筋はなんだろう？黄色かったり、赤かったり、十字だったり……あ、車のヘッドライトとテールランプか！ということは、あれは渋滞。えー車がそんなに増えたのー。一年ぶりのペテルブルクには、本格的な自動車社会が到来していました。今や「一家に一台」が普通になりつつあるとのこと。日本から輸入された中古車もたくさん走っています。さらに、ペテルブルクに工場を開いたトヨタは、もう間もなく現地生産を開始するそうです。自家用車で行く郊外型大ショッピングセンターもずいぶんたくさんできていました。そしてその大型駐車場にはおびただしい数の車。きっとロシア人ファミリーの週末の過ごし方は変わりつつあるんでしょうねぇ。自動車の普及にともなって、当然のごとく発生するのが渋滞。以前は週に1回聞く程度だった「プロプキ（渋滞）」という語を、今回は毎日のように耳にし、そして私も、幾度となく巻き込まれました。ところで最近、ペテルブルクのトヨタに、ペテルブルク市長マトヴィエンコが視察にくることになったんだとか。ところが社員一同、朝から準備したのに待てど暮らせどやってこない。けっきょく数時間遅刻してやってきたその理由は、「車が渋滞したから」自動車工場にくるのに渋滞で遅刻ですか、うーん、責任の所在はどこにあるのかなんというか…というか、マトヴィエンコの車だったら「そこをおどき！」と優先通行できないんですかね。  女傑マトヴィエンコ。あだ名は「ママ」。

  2007/10/30

• 

  ユーモアの人、レーピン

  近代ロシアを代表する画家にイリヤ・レーピンがいます。（詳しい履歴はこちら）「ボルガ川の船曳人夫たち」（部分）　　…他にも、「クルスク県の十字架行進」など、下層民を描くことで　　　社会矛盾をあらわにする作品が多い。彼が住んだ家が、ペテルブルクから北へ1時間ほどレーピノというところにあります。（この地名はレーピンの名前から取ったもの。）あたりは静かな真緑の森。そこにとんがり屋根の、茶色い一軒家がたたずんでいます。至るところにガラスの天井や採光窓が設けられて、屋内はロシアの建物にしては珍しいほど明るい。おそらく冬は相当寒かったと思いますが（暖房器具がいくつもあった）描くための心地よい環境を追求したようです。レーピンはある時期から手を傷め、パレットを持てない状況に陥ったそうですが、そのときには腰巻きパレットを考案して描き続けたとか。と、ここまでなら偉人レーピン像をイメージするだけで終わったのですが。この旧居には、それ以上に彼のキャラを物語るものがありました。毎週水曜がお客を呼ぶ日だったそうなのですが、使用人のいないこちらのお宅の原則はともかく「自分でやれ！」ということ。まず玄関を入ると手書きの看板と大きな銅鑼が。そこに書かれているのは、「自分でコートと帽子を脱ぎ、　自分でコート掛けに掛けたら、　銅鑼を高らかに楽しげに　タンタンタンと鳴らして主人を呼ぶこと」食堂にあるのは巨大な丸テーブル。おそらく中華料理屋のを真似て作ったのでしょう、真ん中がくるりと回るようになっており、さらに各々のお腹に当たる部分に引き出しが作られています。なぜかといえば、ここでも「自分でやれ！」だから。お料理は自分で丸テーブルを回して取るべし！使い終わった食器はひとまず引き出しの中に片付けるべし！もしうっかり「塩とって」とでも言ってしまったら、罰ゲームが待っています。罰ゲーム、それは、暖炉の上に作られたお立ち台に立って、「なにかオモシロイ話をすること」主人のレーピン自身ひっかかったらしく、一生懸命演説している写真がありました。その下で座っている女性二人がぜぇんぜん聞いてない風なのがなかなか笑える構図で。二階では生前のレーピンが雪の中を散歩する映像も公開されていました。オモシロいことがあったら見逃さないぞ、とでも言いたげな、茶目っ気たっぷりの瞳でニコニコ歩いていました。これまでレーピンについては重い主題の絵を見るばかりで、「きっと気難しい、暗い人だったんだろう」と思っていましたが、どうしてどうして。つらいもの、歪んだものを見つめて描きながら、生活をユーモアにくるんで生きたその姿勢に、逆に、重いものを見たような気がした一日でした。

  2006/09/20

• 

  ペテルブルクの風景

  撮りためたペテルブルクの風景写真を何枚か。ネフスキー通り、ドーム・ジンゲル　帝政期はジンガーミシン社のビルで、　ソ連期に入ってから最近まではドーム・クニーギという　大型書店が入っていました。　ここ数年はずっと修理中。　この街のアール・ヌーヴォー建築の代表です。フォンタンカ、アニーチコフ橋付近から夏の庭園方面を眺める　ここの風景がペテルブルク中でいちばん好きです。　ちなみに白猫3匹はこの先の先生の家で生まれました。フォンタンカ沿い、夏の庭園手前の建物　彩りが可愛らしくて、　何度も写真を撮ってしまいました。　雪の中でも映えます。ルビンシテイン通り、劇場の建物　青空、緑の葉とよく合う色。いたるところ絵になるのがペテルブルクの素敵なところです。

  2006/09/18

• 

  アール・ヌーヴォー建築のエリセーエフ商店

  ペテルブルクの市街地はユネスコ世界遺産に登録されています。なぜかというと歴史的な街並みがきれいに残っているから。しかし一見すると古い建物ばかりの中にも、実は建造年代の差があります。1703年誕生のペテルブルクの建築史を大まかに言うと、バロック（18世紀前半）→ロココ（18世紀後半）→クラシック（19世紀前半）→折衷様式（19世紀後半）→アール・ヌーヴォー（20世紀初頭）となります。1917年の革命後の建物はごく限られているので、アール・ヌーヴォー建築がいちばん新しい、と言えます。つまりアール・ヌーヴォーの建物はロシア帝国末期の最先端だったわけで、当時のロシア人は、我々が有楽町の東京国際フォーラムや六本木ヒルズを見て「すごーい、あたらしー」と思うような感覚で、感心してたんじゃないかなぁ、と思います。（日本では今やもっと最先端なビルができているのでしょうが、　すいません、例を思いつきません、2年離れて浦島花子なもので。）実際、アール・ヌーヴォー建築はどれもかなり独創的で、見ていて楽しいものです。特に代表的なものはこちら。旧エリセーエフ商店のビルディング。ペテルブルクの銀座ネフスキー通りのど真ん中に、1902－1903年に建造されました。丸みを帯びたアーチ、ステンドグラスが特徴的です。個性的なのは外ばかりではありません。インテリアも、ゆるやかなカーブ、植物のモチーフなど大変やわらかく、優美な感じです。おそらく帝政期はかなりの高級店だったのだと思いますが、今は駄菓子みたいなチョコレートや、どこでも売っているような牛乳、卵、ソーセージなどをあんまりやる気のないおばちゃんたちが販売しているばかりで、その辺の食糧品店と大して変わりません。この入れ物でこの中味。なんだか不思議です。ソ連時代がもたらした平準化の名残なのでしょうか。

  2006/09/06

• 

  晩夏のペテルブルク

  晩夏のペテルブルクで、船から撮った写真を載せます。運河フォンタンカから見た飛行機雲グリボエードフ運河につづく飛行機雲運河にかかる橋のたもとは、いろいろな動物が守っています。アニーチコフ橋の馬マリインスキー劇場そばのライオングリボエードフ運河のグリフォンやがて日が沈みます。夏も終わってしまいました。

  2006/08/31

• 

  ペテルブルクのイスラム教寺院

  ペテルブルクにはイスラム教寺院があります。左端のぼやけは心霊写真ではなく、雨粒がついただけ。ペトロパーヴロフスク要塞の北側。最初に見たときは、なんちゃってモスクで実はショッピングモールかレストランかと思いましたが、そうではなく、20世紀初頭に建造された本物のモスクです。中央アジア、サマルカンドの寺院を模したもの。ただしペトログラーツキー地区と呼ばれるこの一帯、モスク建造と同時期に開発されてこぞってアールヌーヴォー様式のビルが建てられた場所なので、このモスクにもそのスタイルを用いた部分があるそうです。残念ながら私にはどこだかわからないんですが。ペテルブルクでは、数多くのロシア正教寺院のほかに、ネフスキー通りにはカトリック、プロテスタント、アルメニア正教それぞれの教会が計画的に配置され、また、マリインスキー劇場の近くにはユダヤ教のシナゴーグがあるなど、往時の国際都市ぶりがうかがえます。しかし仏教寺院となると、ほんとに北のはずれにチベット仏教のお寺がぽつんと一軒あるだけだそう。エカチェリーナ二世に請願しにはるばるここまで辿り着いた江戸時代の漂流民大黒屋光太夫、宗教的にも圏外に来ちゃったんだな、と、ふと思いを馳せてみたりしました。ところで先日のトロイツキー寺院火災（→その話はこちら）ここ数年ずっと修復中だったものの資金難でさっぱり進まない状況だったそうで、そこにあのド派手な火事で耳目を集めてペテルブルク市当局がすぐに修理費提供を決めたので、むしろ修復の目処が立ったとか。信者にとっては「恵みの火事」だったんですって。

  2006/08/30

• 

  トロイツキー寺院炎上

  日々、何かしら起きるロシアです。今日はペテルブルクで聖トロイツキー寺院が炎上しました。NTVニュースの写真から聖トロイツキー寺院は1820年代から30年代にかけて建造されたロシア正教の寺院です。45台の消防車が出たもののドームのてっぺんには水も梯子も届かないので、ヘリコプターから水を3トン投下してようやく鎮火したとのこと。原因はまだわからないようです。青地に星がちりばめられた大きなドームがとても美しいお堂でした。遠くから見たことがあるだけでまだ行っていなかったのが残念です…

  2006/08/25

• 

  跳ね橋が上がる

  ペテルブルクの夏の風物詩、ネヴァ河の跳ね橋が上がるのを見てきました。大型船舶の航行のために、深夜1時と早朝4時（4時半だったかも）に橋が上がるのです。どれも大きな橋なので、なかなか壮観。宮殿橋　　　　　　　　↓　　　　　　　　↓トロイツキー橋右端だけ上がります。街灯もそのまま上がっているのが見えるかな？道路から見るとこんな。真ん中が橋です。なかなかシュールです。夏の風物詩と書きましたが、実は、川が凍っていない季節は毎晩上がっているようです。でも夏以外は寒いから、みんな深夜の川べりに見物に来たりはしないのね。夜道は危険なので、見物の後は近くにある友だちの家でオールナイト。朝帰りの道すがら、運河フォンタンカは染み渡るようににきれいでした。朝のフォンタンカ

  2006/07/24

• 白夜のマリインスキー劇場

  白夜もピークを迎えたここ2週間ほどのマリインスキー劇場はすごかった。なにがって、夜に2公演あるのです。6時からコンサート、9時からバレエかオペラ。あるいはその逆。どう考えても2公演目の終演は深夜12時近くなるのだけれども、「いいでしょ？白夜で明るいんだから」というノリで。この日は9時からのバレエのチケットを持っていたのですが、「すごくいいコンサートなんだから！」と友人に無理やり誘われ、6時のほうにも足を運ぶことに。5月からこっち、マリインスキーではショスタコーヴィチの交響曲全曲上演という企画をやっているのですが、この夜は第6番を、今年のウィーンのニューイヤーコンサートを振ったM.ヤンソンスが指揮するというコンサート。と書いていてもクラシックに疎い私はそのありがたみがよく分からないのですが、でもともかくコンサートは素晴らしかったです。クラシックを聞き慣れない私ですらわくわくしてしまう演奏で。終わった瞬間、客席から拍手と共に、嬉しそうな「わぁっ」という歓声が上がったのが印象的でした。その後9時からは、フォーサイスの抽象バレエ、というプログラムの組み方はちょっと間違っているような。普段からそれほど客の入らないフォーサイス、ましてや深夜帯とあって客席はがらがらでした。（おかげですごくいい席に移れましたが。）あれは踊る方もテンション上がらなかったんじゃないか。それにあまり遅い時間だと、リズムの持っていき方が難しそうですね。3幕目しか出なかったロブーヒンなんか、10時50分からの登場でしたから…（つまり、また観た、彼を。）かくして、劇場を出たのは11時半。実に5時間半、マリインスキーで過ごした夜でした。でもそろそろ白夜も終わり。この週末からは普通の1公演体制に戻ってしまうようです。

  2006/07/06

• 天井桟敷の人びと

  マリインスキー劇場の最もお安い席は4階席。その最後列に座ると天井の飾りに手が届いてしまうような、まさに天井桟敷です。ところがこの4階席、実はかなり見やすい。充分な傾斜がついているので、2階や3階の迂闊な席をとるよりはずっと楽に見ることができるのです。（2、3階の一部だと、前の人の頭で見えないため　よく観客同士でもめごとが起きる。）この日私が手に入れた天井桟敷席は160ルーブリ（約650円）。でもこれ、外国人チケットだったので周りのロシア人はおそらく400円くらいで入っていたんじゃないかと思います。また、天井桟敷はまるでスタジアムのような横がけベンチ席なので、お隣さんとの垣根が大変低い。そしてこれだけ安いチケットで入る人たちは20ルーブリ（80円強）のプログラムも買わないので必然、「ちょっとプログラム見せてもらえません？」と、声をかけられることになります。そこから始まるロシア語会話。「きみはアメリカが“原爆が戦争を終わらせた”　と言ってることについてどう思う？え、反対？　でも日本人だってパールハーバーをやってるじゃないか」と、じいちゃんにやられたのには閉口しましたが。平土間など、下のほうの席と比べて圧倒的に質素な身なりのお年寄りが多い席ですが、バレエ、オペラが好きだから、大して多くない年金割いて始終来てるんだろうなぁという雰囲気。この日はショスタコーヴィッチの『黄金時代』というバレエをアメリカの振付家が改作した世界初演、という日だったのですが、2回目の休憩時間にはそこかしこで「よくないね」というじいちゃんばあちゃんの声高な批評が聞こえたのでした。でも石原ノブテル似のミハイル・ロブーヒンが主演だったので余は満足だったのでありましたが。（なんとなく伊原剛志にも似てる気がしてきた。）

  2006/06/28

• 

  ペテルブルク運河クルーズ

  先生の娘さんが、ペテルブルクの運河クルーズに連れて行ってくれました。この街には3本の運河とそれぞれをつなぐ支流が縦横に走り、ネヴァ河に注いでいるのですが、観光シーズン（つまり水が凍っていない季節）にはたくさんの小型船が観光客向けクルーズをやっているのです。先生の娘はダンサー。彼女の所属するグループがその日ショーをする船にこっそり乗せてくれたというわけでした。（でも彼女は自動車全損事故で骨折して休業中。）出発はいちばん南の運河フォンタンカ。車やら徒歩やらでわらわら集まってきたダンサー及び歌手の人たちは、サングラスやらジャージやら革ジャンやら（いま寒いの）ごく普通のいでたちでしたが、船に乗った途端、メイクと着替えを始めて、できあがったらこんなに華やか。　 座長さん。風格があって立派だったこの日はオーストラリア人ツアー客の貸切です。どこの国でも、海外ツアーというのはお金と時間に余裕のある年配の人が参加するのですね。（私の存在、怪訝に思ったでしょうねぇ…）座長さんに促されてロシア民謡を歌ったり、ダンサーたちが手を取って一緒に踊ったりしてノリノリです。南半球の見ず知らずの人を勝手に載せてスイマセン。クルーズはなかなか充実していて、フォンタンカをずっと西に走り、マリインスキー劇場などを見ながら支流を通って北の運河モイカに回り、これを東に一通り走ってから、エルミタージュの小運河を抜けてネヴァ河を疾走、そこから夏の庭園の水路に入り、再びフォンタンカに出てスタート地点に戻って終わり、というペテルブルク中の運河を一通り見ることができる、実に2時間半に及ぶコースでした。ネヴァ河から見たペトロ・パーヴロフスク要塞運河にはたくさんの橋があります。かなり低いので、気をつけないと頭をぶつけます。橋の下はこんな。どういうわけか、船は、後ろの景色を見るのがきれいなようです。あっという間に過ぎ去っていく景色を見ていると、私は今、ペテルブルクで暮らして楽しい時を過ごしている、でもこれもあっという間に過ぎて、すぐに夢の中のことだったような気がしてしまうんだろうな、と思い、不覚にも涙が浮かびそうに。が、一瞬後には、「アブナイ！」というオーストリア人の声と共に次の橋に頭をヒットされそうになり、慌ててしゃがみこみました。船室内では、ダンサーの女の子がチップを求めてお盆を手に歩き回っているところ。シチェドリン図書館やエルミタージュに勤めてる人が300ドルとか400ドルで薄給だと嘆いていたけれど、こういう仕事の方が、チップもあるなら多く稼げるんじゃないの？と娘さんに聞いてみると「とんでもない！」「月給300ドルなんていうのは立派な仕事であって、　観光客相手の仕事はもっとずっと安い、　たとえばレストランでロシア民謡奏でるようなバックバンドは　1日4ドル。1日4ドルったらたとえ毎日仕事があったとしても　月に120ドル。120ドルなんてお金じゃないわよ！」「だからチップをはずんでもらえたらいいんだけど、　ああやって手を出してお金をくれと頼んで回るのは、　ジプシーの衣装のときにしかやる気になれない。　ロシア風衣装のときには気持ちが違うのよ」やがてクルーズが終わり、ツアー御一行がバスへと去るとダンサー及び歌手の人たちも下船して、そのまま道でお金の分配を始めました。うーんたしかに、この人数で分けたら、一人あたりの取り分は、大したものじゃないだろうなぁ…（しかし彼女はその後、　けっこう高いレストランに出かけていったので、　別に倹約するとかいう思想はないようである。）これから本格的な観光シーズン到来です。来る人にとっても、来る人相手に働く人にとってもいいことが起こるような、素敵な街であれよ、ペテルブルク、と思います。運河から見たニコライ一世の騎馬像

  2006/05/12

• 

  写真で解説・マリインスキー劇場

  今日は写真でマリインスキー劇場をご紹介しましょう。マリインスキー劇場はアレクサンドル2世の皇后マリアにちなんで1859年に建てられた劇場です。（この写真はマリインスキーのHPから）折衷様式と呼ばれる建物。最近はロビーに、どこかの銀行がスポンサーになって作った皇后マリアの胸像があります。内装は、モスクワのボリショイ劇場が赤を基調としているのに対してマリインスキーは（この写真だと白っぽいですが）薄緑です。（ただし、現在のボリショイ新劇場はエメラルドグリーンです。）ちなみにあれ↑が皇帝ボックス。（皇帝ボックスのお値段の話はこちら）柱にはこんな人がいたりします。近代の街並みが残っている西欧の都市だとどこでもそうかもしれませんが、ペテルブルクには彫刻がとても多いです。銅像以外にも、建物の外装、内装いたるところに彫られているのでペテルブルクの人口に匹敵するほどいるんじゃないか？という気もします。誰か数えてないんだろうか。さて、この日なぜ劇場にカメラを持ち込んだかといえば、ミハイル・ロブーヒン、名づけてノブテルが『ドン・キホーテ』のバジルを踊る日だったから…（でもフラッシュはたいていませんよ。　ちなみにノブテルさんについて熱く語ったのはこちら）しかし動いている人を撮るのは難しい。これじゃあオモシロ写真だよ。（ちなみにヒロイン、キトリはオスマルキナ。）これはシャッターチャンスはよかったんだけど、どうしてもぶれてしまう。どうでしょう、似ていませんか、ロブーヒンと石原伸晃元国土交通大臣。ロブーヒン石原さん小さくてわからないか…『ドン・キホーテ』はテンポの速い、とても楽しい作品です。本物の馬も出てきたりします。影になって見えませんが、向こう側にはサンチョ＝パンサが乗っている驢馬もいます。でもこの日はあまり盛り上がらず、カーテンコールは一度きり。まぁあんまりオスマルキナが、鉄火娘という雰囲気がなくて似合ってなかったような気は…でも写真がたくさん撮れて、満足であります。

  2006/05/01

• ヒトラーの誕生日

  話は少しさかのぼりますが、4月20日はヒトラーの誕生日でした。ヒトラー、ナチスの総統、ドイツ人。別にロシアと関係ないじゃん？と、思いきや、この日、外国人は外出してはいけない。そういう日です。なぜかというと、欧州他国と同様、ロシアにもヒトラーを崇拝するネオナチ集団（スキンヘッドが目印）がいるからです。第2次世界大戦のときに3年近く包囲されて大量の餓死者を出したペテルブルクにかぎらず、この国、至るところでナチス・ドイツにさんざんな目に遭わされており、なんだってヒトラー万歳とか言い出すのか、全くもって理屈が通っていません。でもともかくいることは事実で、無視できない。この半年ほどのあいだに、ペテルブルクでは、排外的民族主義集団によって中央アジア系の男子学生が殺されたり、アフリカ系の父とロシア人の母を持つ4歳の女の子が暴行されたり、アフリカ人留学生が射殺されたり、と物騒な事件が続いています。実はモスクワより危険だったりするのです。「明日はなるべく出かけちゃダメよ。　夜も遅くならないように。　私も授業休むつもり。」前夜心配して電話をくれた友人は、ロシア人ながらイルクーツク出身のヤクート族なので、外見はまったくの東洋人。だから彼女も用心が必要なのです。「あなたなんてちゃんとしたロシア人なのにねぇ…」と言ったら、「レイシストはいちいちパスポートを　チェックしたりはしないのよ！」まぁそうだわな。けっきょくこの日は特に事件はなかったようですが…ロシアだけでなく、欧州の暗部を垣間見た気分。

  2006/04/27

• 着るものに困る

  最近は連日、7、8℃の日が続いています。ダウンジャケットはもう脱ぎましたが、まだ日本の冬コートを着る日々です。でもこれ、こっちでは春コートって言うらしい。それなのに日はどんどん長くなっています。なんといっても5月下旬からペテルブルクは白夜。日が沈まないのです。現時点では日没は夜9時くらいのようです。だから帰ってきてご飯を食べようがお風呂に入ろうがまだ明るい。すっかり日本の夏気分になって、つい窓とか開け放ちたくなってしまう。ノースリとか薄手スカートとか着たくなってしまう。でも外は7、8℃。なんなのこのギャップ。昨年はモスクワにいたので白夜は未経験です。夜眠れるのかなぁ…

  2006/04/20

• 元祖「獄中で襲われ」－イヴァン6世

  イヴァン6世は18世紀中頃のロシアの皇帝で、生後わずか6ヶ月で即位しました。もちろん実権は大人に。すなわち母であるアンナ・レオポルドヴナとその夫ブラウンシュヴァイク公アントン・ウルリッヒが握っていました。この頃のツァーリの継承順序は入り組んでいて言葉で説明するとややこしくなるのですが、要約すると、ピョートル大帝の子孫の系統と、ピョートルの兄であるイヴァン5世の子孫の系統が対立していたと言うことができます。アンナ・レオポルドヴナはイヴァン系統の出身。したがって赤ちゃんイヴァン6世はイヴァン系の期待の星の男子だったわけです。ところがそこに、ピョートル系が巻き返しをはかります。ピョートル大帝の娘エリサヴェータがクーデターを起こし、自ら女帝となるのです。クーデター情報を事前につかめなかったアンナ夫妻は即刻逮捕。宮殿に足を踏み入れたエリザヴェータはイヴァン6世を抱き上げ、「あんたは悪くないのよ。悪いのはあなたの親なの」と言い、この赤ん坊を監獄送りにしたのでした。（ほんとにそう言ったのかは知りませんが、　こっちで読んだ歴史小説にはそう書いてあった。）やがてイヴァンは独房に監禁されて20歳を迎えます。子供の頃より家族から完全隔離されて、壁だけを見つめて育つと人間ってどうなるんでしょうね。ただ、イヴァンは自分がツァーリだったことは看守から聞いて知っていたそうです。池田理代子は『女帝エカテリーナ』の中でイヴァンを、知恵遅れ気味の、しかし自分をツァーリであると声高に叫ぶ狂人として描いています。そのエカチェリーナには、イヴァンは非常にまずい存在。なぜならエカチェリーナはロマノフ家にとってあくまでもドイツから来たお嫁さんなので、エリザヴェータ同様にクーデターで即位したものの、相当無理があるわけです。そこに、正真正銘の元ツァーリだったイヴァンがいるのは大変めざわり。かつて「あんたは悪くないの」と言われた乳児もいまや20歳を超え、反対勢力に担ぎ出されたりしたら致命的です。そこでイヴァンは獄中の身のまま、エカチェリーナの配下にぶすりとやられたとかやられなかったとか…獄死の真相は未だに不明です。ちなみにイヴァンの父母は極北の地に軟禁され、そこでつましく家庭を営み、第2子、第3子…と続けて産んでおりました。ところが第5子の出産時にアンナが死亡。以後、父子家庭でウン十年。獄中の長男のことはどう思っていたのでしょうか。やがて父にだけドイツ帰国が許されたときも、子供たちと離れることはできないと、幽閉地に残ったそうです。ああ、18世紀って、実に非人道的だなぁ…と思ったけれども、19世紀にはアレクサンドル2世が爆殺され、20世紀になってもニコライ2世が家族もろとも監禁、銃殺です。権力の周辺の残虐さというのは変わることがないのかもしれません。だから21世紀になってもホドルコフスキーがシベリアの獄中で襲われるんですかねぇロシアは…

  2006/04/18

• ロシアの司書という仕事

  ロシア国立図書館（サルトゥイコフ＝シチェドリン図書館）はこの頃どうも人手不足のようです。長大な利用者の列をたった一人の司書がさばくという光景が日常茶飯事。するとこんな貼り紙が。「司書急募　あなたもロシア国立図書館で働きませんか　この仕事は、たしかに　薄給　で生活することになります」おお…薄給なのか、シチェドリンの司書って…「しかし、この欠点は、以下のことによって埋め合わせできます」え、なに？「1. 労働手帳に権威のある職歴がつくこと　2. 親戚、友人たちの間で評価が上がること　　3. 社会保険など福利厚生があること　　4. 図書館学の初歩が身につくこと　　5. 新刊図書に触れられること　6. コミュニケーション能力を高められること」…3とか4はわかるけど…新刊本って、本屋さんでもさわれるんじゃ…？ていうか、普通に図書館の利用者であればアクセス可能だよね。それからコミュニケーション能力、ほんとに上がるのか？日々窓口の無愛想な対応を受けている身としては、ロシアの司書職がコミュニケーション能力増進に有益とはとても思えないぞ。（でもモスクワに比べればペテルはずっとマシ。）あと、就職の決め手が親戚うちの評判ですか。うちの姪、ペテルブルクの国立図書館の司書なんですよ、手堅いお仕事でしょう～とか、極東ハバロフスクの叔母さんに自慢されたりするんだろうか。薄給を埋め合わせるほどのメリットじゃないような気がするんですが。ちなみに「労働手帳」とは、年金や勤続表彰を受けるために一生涯、自分の職歴を記入し続ける手帳で、ソ連時代に導入された制度がまだ生きているようです。ただ、薄給ゆえに、司書や大学の教授などは今のロシアでは権威を失った職だと言うロシア人もいます。しかしシチェドリン図書館の職員数は分館を含めて全3館で1700人だと聞きます。日本の国立国会図書館が5館で900人であるのに比べると格段に多い。（でもエルミタージュの館員が2000人というのもどうかと思う。）読書によるプロパガンダはレーニンが早くから研究を重ねていた分野でもあり、ソ連期には国策として、図書館での効果的な「良書」普及に力が入れられました。その結果として、ロシアの図書館には日本よりもはるかに充実した研究機関が附属していますが、同時に職員数が多すぎて薄給になっているのかも…だってロシアの司書さんって、部署によってはすごくヒマそ～な人も見かけます。薄給のまま新規採用するよりも、少人数でも回るシステムに変えて適正人数まで減らしたほうがいいんじゃないかと外国人ながら私は思う。

  2006/04/11

• 1万円で皇帝になる方法

  19世紀半ばに建造されたマリインスキー劇場には、エラそうな席があります。2階席のど真ん中、舞台の真正面のアーチとカーテンで縁取られたボックス席です。皇帝ファミリーが来場した際にはここに座るのが慣例でした。そのため今でもこの席は、「ツァールスカヤ・ロージャ（＝ツァーリ（皇帝）のボックス席）」と呼ばれています。この皇帝ボックスのチケット、今では普通に窓口で売っています。価格はおおよそ1万円。つまり1万円で、あなたも皇帝になれるのです。（人気演目だともっと高くなるけど。）日本では1万円近いチケットを買ってNODA・MAPやら四季やらを観ていた私。こちらでも同じことをやれば、余裕でロイヤル・ファミリーなのですが…800-1200円のチケット相場に慣れ、2000円出したら大フンパツ気分の今となっては、「13日の『ドン・キホーテ』？　皇帝ボックスの席ならあるわよ」「うえ。それは無理です」と呻いて窓口で笑われる始末。「当日、3階席（天井桟敷）が　売られるかもしれないから　またいらっしゃい」との言葉に見送られて、チケットオフィスを後にしたのでした。しかし今、ロシアはインフレで物価高騰中です。皇帝の値段もどんどん上がる見込み。日本人観光客の方は、今のうちに試してみたらどうでしょう？

  2006/04/08

• 

  クンストカメラ

  クンストカメラに行ってきました。これは、ピョートル大帝のコレンクションをもとに18世紀前半に創設された、ペテルブルク最初の（だからおそらくロシアでも初の）博物館です。「地球の歩き方」にも載っている有名な観光地ですので、ご存知の方もいるかもしれません。私も知ってはいました。でも行っていなかった。行きたくなかった。なぜならここには、胎児のホルマリン漬けがあるから。ピョートル大帝が、自ら大工に身をやつして西欧見学ツアーに出かけたときにオランダで買ってきたコレクションだそうです。ピョートル大帝というのは土俗的モスクワをばっさり切り捨てて、沼沢を埋め立てるところから作られたペテルブルクへの遷都を断行し、西欧的な街を築き上げた、まことにスケールの大きい人ですが、偉人なのか奇人なのか、評価は二分されていて、まぁこんなコレクションがあることを思うとやっぱり相当の変人だったんじゃないかという気がします。でもロシア人の友だちに熱く勧められたので、ついに覚悟を決めて足を運びました。で、ありましたよ、胎児…。いっぱいありました。撮影禁止だったのでイメージ写真で再現してみますと↑こういうのが裸にされてガラス瓶にたくさん入って部屋中の棚に並んでいる感じでした。（ちなみに写真は、あるトルコ系スーパーで売っている　赤ちゃん人形。可愛くないのよね。）クンストカメラには、世界各国の風物の展示もされています。ほとんどはピョートルより後の時代に収集された品々のようですが、日本コーナーで印象に残る展示が。大黒屋光太夫がエカチェリーナ二世に献上した扇や器などの日本製品があったのです。光太夫は井上靖の『おろしや国酔夢譚』にも描かれているように、遭難してアリューシャン列島に漂着し、苦難のシベリア越えをして首都に到着し、やっとのことで女帝の謁見を受ける機会を得て日本に帰してもらえることになった人です。何年にもわたる異国での旅暮らしで、日本の物なんてそれほど手許に残っていなかっただろうに、どうにかして帰国する力添えを得るために、苦労してかき集めてエカチェリーナにさしだしたのかも、必死だったんだろうなぁと思いを馳せてしまいました。実際、それほど豪華な品ではなかったことも感慨深かったです。

  2006/04/05

• BOMZHの問題

  しかしマンション建設ラッシュとはいえ、必ずしも皆が買えるわけではありません。この頃は、ノーヴィ・ルースキーと呼ばれる超お金持ちの新興階級ばかりでなく、ふつうのロシア人でもそこそこ貯金があって新居を買えるようで意外の念に打たれるのですが、それでもやはり、貧困層が生じていることは否定できません。特に、ごく最近、家賃を半年滞納した者には立退き要求できる、と法で定められたそうで、その結果、住むところを失った、BOMZH(Бомж: Человек без определенного места жительства、要はホームレス)と言われる人々の増大が社会問題化しています。日本でも路上生活は厳しいものでしょうが、ここロシアでは、特に冬場はほとんど不可能です。その結果、彼らは1階の入口の鍵が壊れている集合住宅に入りこみ、廊下や階段で夜を過ごすようです。そういう建物は、落書きや酒瓶が並んでかなり荒んだ雰囲気に。ロシア語の先生の家は、19世紀にはカラムジンやヴャゼムスキーら文化人が住んだ建物なのですが、今は「江ノ島の暴走族参上？」といった乱れっぷり。　　（ちなみにうちの大家さんちはバッチリ鍵つき。　　　「だから部屋代も高いの」と来たもんだ。）それじゃあ入口の鍵を直せばいいじゃないか、と思うのですが、共用部分の手入れというのは、徹底的に後回しにされています。どうも自分のこと以外について、他人と協力し合う余裕と信頼感が、ロシア人にはないようです。ですから、BOMZHを支援する社会的なガイドラインも到底なりたちません。ロシアがこのまま経済成長を続ければ、福祉向上に取り組む経済的、精神的ゆとりが生じるのだろうか？しかし、社会主義を捨てたからといって、なりふりかまわず「資本主義！競争原理！」とか言っていないで、今のうちからもうちょっと安全装置を考えてもいいんじゃないだろうか…つくづく極端な人たちです。ペテルブルクでは2003年の建都300年祭に続き、今夏のサミットに向けて、街並み外観の手入れはせっせとなされています。きれいなのは気分がいいけれど、この充実がどうか早晩、内にも向くように、と思わざるをえません。

  2006/04/02

• マンション購入のススメ

  目下ロシアの大都市圏ではマンション建設ブームです。モスクワでも至るところに工事現場を見かけましたが、ペテルブルクでは地下鉄車内に販売広告がベタベタと貼られています。こうした広告は、1平米あたりの単価がドルで表記されています。図書館に行く道すがらの地下鉄内、ヒマなので頭の中で計算してみると、2DKで500万～600万円新築でこれって、かなりお買い得なんじゃ？そりゃあたしかに、ほっそり鉄骨、スリムな柱のひやひやロシア・マンションではありますが、なんといってもこの国には地震がありません。地殻変動でもないかぎり、未来永劫ないのです。モスクワでの家が見つからず、ペテルブルクでも夏場は家賃値上がりにあえぐ私。一瞬、自分の持ち部屋があったらこんな面倒も起きず便利なのでは、との思いがよぎります。でも一瞬の後には、自分で買うには高すぎるので、どこか日本のロシア研究機関が研究者向けゲストハウスとして買ってくれたりしない？と軌道修正。さらに一瞬後には、しかしこの転変激しい国で外国人が所有権を保持し続けられるか大いに疑問なのでリスキーな買い物はやめよう、と結論。それにしても、ペテルブルクの郊外、パーヴロフスクやプーシキンという街あたりはペテルブルクまで通勤1時間ほどでありながら静かで空気もきれいですし、公園（もと宮殿）もあってとてもよい住環境です。インフレ進行中のロシアのこと、昨年よりは今年、今年よりは来年と、マンションがどんどん値上がりすることが予想されています。誰か、ロシアで世渡りできそうなツワモノがいたら即決購入がオススメ。

  2006/04/01

• 

  ガッチナ

  土曜はペテルブルク近郊の町、ガッチナへ行きました。電車で南に1時間ほど。垂れ目のパーヴェルさんが即位以前に住んでいたお城で、後にひ孫のアレクサンドル3世ファミリーも住むことになった場所です。パーヴェルは軍事マニア、アレクサンドル3世はマッチョなので（あ、指導教官にはとても聞かせられないテキトーな形容をしてしまった）そのお城はこんな。18世紀末のロシアの宮殿としては例外的な、装飾のなさです。しかしこのガッチナという町、皇太子が住む場所とはとても思えません。だって電車でも1時間かかるのです。当時はきっと橇でしょ？遠すぎるよ、首都から。パーヴェルがいかに母エカチェリーナから遠ざけられていたか実感。（ちなみにアレクサンドル3世は、　父アレクサンドル2世が爆殺された　ペテルブルクを嫌がって、この城までやってきた。）エカチェリーナは息子パーヴェルを飛ばして孫に皇位を譲りたかったので、パーヴェルには常に、亡き者にされる危険が付きまとったそうです。そういうわけでいざというときのための脱出用地下道あり。これまた、ロシアの宮殿ではきわめて珍しい設備だそうです。でも実際には、ここはパーヴェルの子供たちの遊び場でした。エコーというものを知らない子供たちは、何か叫ぶと返事が来るので、神様が住んでいると信じていたとか。あるとき、皿だったか壷だったか（忘れた）貴重なものが壊れたので、地下道に来て声を合わせて「クトー・ヴィナヴァートゥイ？（誰が悪いのか？）」と叫んだら、最後の「トゥイ」だけ戻ってきて、ロシア語で「トゥイ」って「あなた」という意味ですから子供たちはビックリ。慌てて親のところに走ったら、父パーヴェルと母マリアが「あれはエコーというものだよ」と教えてあげたのだそうです。（以上、ガイド談。）ミハイロフスキー城砦でも、子供たちがガラスにぶつかってけがをしないよう、パーヴェルとマリアは広間の窓際にクッションを敷き詰めさせた、という解説を聞いた覚えがあるので、家族愛ってのがパーヴェル帝の表象の一つとして認識されているんですね。こんなに遠くに押し込められて、身の危険もあったから家庭に癒しを見出していたのでしょうかねぇ…

  2006/03/04

• ロシアでロックコンサート

  日本人の留学生仲間に誘われて、ロックコンサートに行きました。Depeche modeというイギリスのグループです。会場はパルク・パベードゥイ駅にある巨大なスポーツスタジアム。スポンサーがペテルブルクの地ビールメーカー「バールチカ」社であるため、会場の周りにバールチカの缶の形のアドバルーンがぷかぷか浮かんでいるのが遠くからでも見えます。そして正面入口まで来てみると…砂糖に向かって順番待ちするアリさんたちの群のような、長い長い行列が。100メートル近いのが3本です。どうやら荷物検査をしているため入場が滞っているらしい。こ、これに並ぶのか。一瞬くらくらしたけど、でも、どうしようもないのね…きっと戦時中の配給待ちってこんな気分だったのね、と思いながら並ぶこと15分。時間は18時50分。あと10分で開演なのに、まだ私たちは入口から70メートルくらいのところ。と、そのとき、3本の列が一斉に崩れて、皆、なだれを打つように前に。どうやら開演が迫ったので荷物検査をやめたらしい。そうとなれば我々も。ところがあるところまで行くと、人が先に進まないのです。横一線に帯のように広がる群集。スタジアムの玄関はまだ先なのに、なぜかその手前で、みな前進できなくなっている。ナゼ？？疑問に思うのはみな同じ。結果、「押せ！押せ！押しまくれ～」ということに。「コンサート開演は遅れています。急がないでください」という放送にも「いっそ、コンサートは終わりました、急がないでください、　って言やぁいいのよ！」と毒づきながらロシア人は押す。ラグビーのスクラム状態。一歩前に出るごとに圧迫は強くなる。さすがに身が危険かも!?将棋倒しというのがいかなるものなのか想像できるレベルまで達したとき、ぽん、と押し出されて、一気に身が軽くなりました。振り向くと、群衆はすでに後ろに。私は堰き止められていたラインを超えたのです。堰き止めライン、それはなんだったかというと、即席の木の柵。通り道は細いのが３つだけ。つまり最初行列が3本あったのは、それぞれに並んでいたから。しかしこんなに細い通り道しかなかったら、検査やめても、柵撤去しないかぎり意味ないじゃん!?ていうかむしろ危険だっつーの!!ロシア的不合理さを痛感しながらスタジアムに入ると、手に手に皆紙コップを持っている。なんだろう？と思ったら、スポンサー「バールチカ」社がお客様にビールを無料提供中。ロ、ロックコンサートでアルコール配るって、アリなんですか…?けっきょくコンサート開始は50分遅れでした。Depeche modeはいろいろな国でツアーしてるんだと思いますが、入場整理の不手際でここまでの開演押しを経験させられるのって、ロシアくらいなんじゃないでしょうかね…予想しようよ、ロシア側主催者。テロリストがいたら、したい放題だったと思うよ…でも、Depeche modeのライブ自体はとてもよかったです。CD買おう。

  2006/03/03

• 森でスキーをする２

  後から知りましたが、スキーに行ったゼレノゴルスクはソ連・フィンランド戦争で係争地の一つだったのですね。（ウィキペディアの解説はこちら）「フィンランドに近いのね」なんてとぼけたことを言っている場合ではありませんでした。失礼しました。ところで上記ウィキペディアの解説中に出てくる、「スキー兵」ってまさにバイアスロン。さて森に入り、いざ歩くスキーをスタートさせたのですが…ご夫妻と進む速度が全く違う。どんどん置いていかれます。ナゼ？？けっきょく、歩くスキーであろうとも、スキーは滑るものなのです。一歩一歩スライディングすべきであって、踏みしめちゃいけないのね。だけど、日頃、道で滑るまいと下を向いて丁寧に歩いている私は、どうにもすすーっと行くことができない。ちょっとでも滑ると、バランスがとれずに転倒…そして歩くスキーの誤算はもう一つ。歩くんだろうが、森だろうが、坂はあるのだ！！いったい何度転んだことか…だってスピードが出ると怖かったのです、止まり方知らないから…そして上り坂もあるんですね。リフトなんてないし。スキーを逆ハの字にして上れって言うんだけど、そうする間にも後ろに逆走する私。これは怖かったです。もう「いて」とか「うひゃ」とか、間投詞をロシア語で言う余裕などなし。ていうかそんなロシア語そもそも知らないし。奥さんに「ほら、○○が鳴いてるわよ。見てごらんなさい、木の上」と言われても、○○がリスなのかカラスなのかを理解する余裕もなし。よれよれになった頃、焚火痕がある窪地にたどりつきました。アウトドア派で再婚カップルのお二人は、2年前の冬、ここで結婚式をしたのだそうです。写真を見せてもらったことがあるのだけれども、雪の中、仲間うちが集まって火をたいて、ソーセージを焼いたりワインを飲んだりしてなかなか素敵な式と思われました。この日も薪を作り（旦那はナタを持ってきていた）火をおこし、持参した飯盒にきれいな雪を入れて、それを沸かしてお茶を入れる。ほっと一息ついて見回してみれば、森は穏やかな静かさで、ぐるり樅の木はかぶった雪がレース飾りのよう。完全に足手まといの私でしたが、こういうところに来られて、ほんとによかったなと感謝しました。まぁ帰りがまた大変だったんだけどね！

  2006/02/24

• 森でスキーをする１

  ナイスミドルカップルのご夫婦に誘われて、スキーに行ってきました。と、さらりと書きましたが、実は行く前、少なからず動揺しておりました。なぜなら私、運動がからきしダメだから…恥ずかしながら、水泳の成績で1をとり（しかもそれ10段階評価だった）、マット運動で腕を折ったことがある私。その上、スキーは15年前に、小学校のスキー教室でやったのが最初で最後の経験です。無事に帰ってこられるだろうか…「普通に滑ってたら骨折することなんてない」「ロシアのスキーは歩くスキーだから大丈夫」周囲の慰めに耳を傾けつつ、それでも足を折ってそのまま病院に担ぎ込まれるサイアクの事態を想定して海外旅行保険の証書をリュックに入れてから出かけました。連れて行ってもらったのは、ペテルブルクから郊外電車で30分ほど、「ゼレノゴルスク」というところにある森。ここは1939年のソ連・フィンランド戦争以前は、フィンランドの領土だったそうです。それだけフィンランドに近いのね。（もっとも革命前は、　フィンランド自体がロシア帝国領だけど。）森の入口付近には小さなダーチャ（別荘用のロッジ）や貸しスキーの小屋があります。ここで靴とスキー板をレンタル。ちなみに板は木製とプラスチック製があり、「初心者は木でよろしい」とのダンナさんの言に従い木のを借りたのですが、借り賃わずか60ルーブリ（＝240円）。プラスチックは少し高いけれども、それでも150ルーブリ（＝600円）。日本のスキーより断然気軽なスポーツですねぇ。黒い厚手の皮でできたスキー靴の先のゴム部分を板の留め金に簡単に挟んだら準備完了。ストックは、「きみにはちょっと大きいかな。まぁいいよね」とレンタル屋のおじさんに言われて、内心「いいのかよ！？」とつっこみつつ受け取った長いのを持ち、いざ森へと入り込むのですが…（スキー疲れで眠くなってきたので、つづく）

  2006/02/23

• 日本センター

  ペテルブルクには、日本総領事館が運営する「日本センター」があります。外国に来ると、国威誇示なんでしょうか、日本の外務省関連施設というのはなにかとリッチなのが相場ですが、ここも例外にはあらず。場所はネフスキー大通り、カザン聖堂の隣という都心も都心のど真ん中。ストックマンというスウェーデン資本の高級デパートが入っているビルのビジネスセンターゾーンの4階に、スカンジナヴィア航空とフロアを二分して入居しています。敷き詰められたグレーの絨毯に白い壁、明るい色の木の扉。きれいなトイレが男女それぞれ３つずつあって、困ったときはここに駆け込め！という感じ。図書室には日本語の本が置いてあり、発売に多少遅れるとはいえ、新聞、雑誌も入っています。（欲を言えば、週刊朝日だけでなく、　新潮、文春も入れていただけまいか。）他には事務室、レクチャールームなど。レクチャールームでは、豪気なことに、ロシア人向けに日本語の授業を無料でやっています。いいなぁ日本でもロシア大使館が無料でロシア語の授業やってくれないかな。無理だろうけど。ここで日本語を習っているロシア人の子と待ち合わせがあったので、夕方、日本センターにやってきました。するとちょうど、一人ずつ個室に呼ばれての日本語の口答試験の真っ最中。順番待ちで軽くパニックに陥っていた彼らは日本人の私を見つけると「日本語で何かしゃべって！」しゃべってって…試験では何を聞かれるの？「ペテルブルク案内とか、病気とか、　あ、そう、あと料理の仕方について！だから、　ブリヌィ（ロシアのクレープ）の作り方のコツを　日本語で話してください」いや、知らないから、そんなコツ！ロシア人が教えてくれっつーの！（だからこそ試験の課題なのだろうが…）ところで日本センターには日本人、ロシア人双方向けの情報掲示板もあるのですが、ロシアの旅行社による日本ツアー6泊7日で1890ドル航空運賃別という案内が出ていました。それ、高すぎるだろー！団体割引とかのツアーのメリット、全然ないよ…ロシアの旅行社って、謎です。

  2006/02/14

• 

  ミハイロフスキー城砦

  ペテルブルクには、「ミハイロフスキー城砦」というお城があります。作らせたのは、女帝エカチェリーナ（2世）の息子、パーヴェル1世です。ちょっと垂れ目のパーヴェルさん、（これについては2004年12月11日の日記参照）母親と大変仲が悪く、そのせいで長男でありながら危うく皇位継承権を自分の息子のアレクサンドルに回されそうになりました。しかしすんでのところで母エカチェリーナが崩御。目の上のたんこぶだった母がいなくなり、自分が無事に皇帝に即位し、なにもかも思い通りにできるぞ!となった時期にこの城は造営されました。だからこのお城、個人的な趣味に満ち満ちています。パーヴェルは軍事マニアだったのです。見てください、このお城の創建当時の絵。水を張った堀にぐるり囲まれています。さらに拡大してみると、大砲まで常備。ちょっと小さいけど見えるかな?いったいこのお城、どんな要害の地にあるんだ？と思えば、街のど真ん中もど真ん中、ペテルブルクの銀座、ネフスキー通りからほんの500メートルほど。当時すでに、百貨店ガスチーヌィ・ドヴォールがオープンしていましたから、買い物する人々でさぞにぎわう繁華街だったことでしょう。そんなところに大砲つきの城砦を作ったわけです、パーヴェルさんは。いったい誰に攻め込まれるつもりだったんだろうか。最悪、ペテルブルクが陥落寸前になっても、ここよりペトロ・パーヴロフスキー要塞にこもるほうがはるかに堅牢だと思うぞ。パーヴェル1世って、いささか中庸を欠く人物だったのかもしれません。残念ながら多くのことを判断できるほど彼の治世は長くなかったのですが。なぜなら彼は即位からわずか5年で、クーデターによって暗殺されてしまったのでした。その現場が、外への守りバッチリのこの城の、寝室内だったというのは皮肉なお話です。彼の暗殺後、皇室ファミリーは「不吉な城だから」とここを離れたため、しばらく経ってから工兵学校の校舎として利用されたそうです。若いときのドストエフスキーもここに通いました。いまはロシア美術館の分館になっています。ていうか、ロシア美術館ってここも含めて4つの宮殿から成り立ってたのね。この城砦に来るまで知らなくて、本館行っただけですべて見た気になっていたよ。他の宮殿についてはまた今度…

  2006/02/05

• 冷蔵庫の中で

  竹内まりやの歌で、「冷蔵庫の中で　凍りかけた愛を」というフレーズがありましたが、日本工業規格では、「冷蔵庫とは10℃以下、冷凍庫とは-12℃以下」と定められているのだそうです。この日、ペテルブルクは-22℃でした。朝も昼も夜もそれくらい。歩いていると、足の小指、手の小指から凍えてきます。きっと冷凍庫の中の海老やペリメニ（水餃子）も端の方から凍っていくのでしょう。まさか自分の人生で、冷凍食品の身になって物を考えられる日が来るとは思いませんでした。冷蔵庫ですら凍りかける愛でしたら、ここロシアでは完全凍結するのでしょうね。耳を隠さないとてきめんに寒いので、最近はストールを頭からかぶり、首にぐるぐる巻きつけています。大家さん夫妻には「昔のロシアの貴婦人みたい」と言われましたが、女友達には「ムスリマンカ（イスラム教徒の女性）みたい」と言われました。自分としては、まるで農作業の頬かむり状態じゃないかと不安。チョーチャになってないかしら…（いやいや、この話題ひっぱるのはもうやめよう^_^;）

  2006/02/03

• 

  ペテルブルク生活

  ペテルブルクに移ってきてから、とみに気分がよくなりました。ロシア暮らしを開始して以来初めて、生活が楽しいなぁと感じられています。たぶん2年目の余裕もあるでしょう。また、ペテルブルクにはロシア人の知合いが結構いるのも楽しいですし、朝夕テンションを上げてくれる大家さんと一つ屋根の下、というのも元気が出ます。それからなにより、ペテルブルクという街。キレイだし。歴史的街区が保存されているので、19世紀気分に浸ったまま歩けるし。ロシアでペテルブルクは例外的な街だ、と言われますが、たとえば帝政期、ネフスキー大通りの「ガスチーヌィ・ドヴォール」という百貨店のスタイルがニージニー・ノヴゴロドやらカザンやら、帝国内各地で模倣され広まっていったように重要な文化的発信地だったわけで、雛形としてよーく見ておくことはやはりとても大切ではないかと思います。そんなわけで気分よく闊歩していたからでしょうか、こちらで会うロシア人が何度か、「去年よりきれいになったね」と言ってくれました。ところが、え、ほんとに？と嬉しく思ったのも束の間、次の一言。「太ったから。」ほんとうに何人ものロシア人に、そう言われました。皆、どうやら誉めてるつもりであるらしいのは、顔を見てるとわかる。ありがとう。気持ちは嬉しい。だがしかし、「太る＝善」ってロシア人基準ですよね？「太った＝きれい」って日本人には認めてもらえないんじゃ…？たしかな事実としては、「太った」があるばかり。日本に帰ったらなんて言われるの私…？？そんな不安を抱えつつ、明日、日本に一時帰国します。お会いする方々から審判を仰ぐことになるのでしょうか？トホホ。でも日本のお正月は久しぶりなので楽しみです。雪降る日のペテルブルクの街角

  2005/12/26

• 流行の最先端ジャパニメーション

  こちらに住む日本人の知り合いとモイカ運河沿いを歩いていたときのこと。「あそこの、ネフスキー大通りとの交差点に　美容院があるの見える？」「ええ。」たしかに白壁、ガラス張りの新しい美容院があります。エルミタージュに程近い都心だけあって、今風の高級サロンのようです。「あの店の中の壁に、　われわれ日本人にはとても関係があるけど、　普通はこういうところには貼らないでしょ、　っていう絵があるよ。見てごらん」なんだろう？十二単の紫式部でも貼ってあるんだろうか。近づいて覗いてみると…！！！エロゲーっていうんですか？萌えっていうんですか？そっち系の日本のアニメだと思われる女の子二人の巨大な上半身が描かれているのです。髪が短い子と長い子。二人とも目を閉じて、頬は紅潮。手をあてていると思しき胸元には、モザイクがかかっている…うぎゃ～～～（脱力）日本のアニメは、アメリカのようにお付合いの深い国ばかりでなく、ここロシアでも大人気です。寿司などの日本食とともに、流行の最先端、トレンドを構成しているようです。しかし日本のアニメとは宮崎駿止まりではなく、エロゲーっていうんですか？萌えっていうんですか？ほんとうにあたしゃわかりませんが、きっとアキバに溢れかえっているような、そういった雰囲気、属性をも伴って、ロシアに流れ込んできているのです。だからこの美容院も、あくまで流行を追ってるんだよね。クールに決めてるってことなんだよね。だけど日本人として、私は行かれないよ…！！

  2005/12/23

• 明るいナイトライフ

  ここのところ殊更に夜明けが遅く、日暮れの早いペテルブルクです。朝は10時近くならないと日が昇らず、おかげで私の目は一向に覚めません。そして、たとえ9時半まで寝ていてもご来光が拝める。なかなか清々しい気持ちです。一方、夕方は3時を過ぎれば薄暗い。そこから5時くらいまでは暗くなる一方です。ところが6時を過ぎたあたりから、街の様相は一変します。ネオンが灯りはじめるのです。昨今の好景気を反映して、ペテルブルクの銀座ネフスキー大通りは隅から隅まで煌々と照らされます。とはいえ、モスクワのトヴェルスカヤ通りのようにカジノのネオンがぎらぎらするのではなく、カザン寺院や18－19世紀創建のデパートである「ガスチーヌィ・ドヴォール」、「パッサーシュ」、アール・ヌーヴォー建築の「エリセーエフ商店」などが照らし出されるので、どことなく品のよい感じです。昼間は天気が悪いことも多く、視界は灰色なので、むしろ夜、ネオン点灯後のほうが明るくなるのがこの街なのです。

  2005/12/15

• ワガノワ・バレエ・アカデミー

  図書館に行くときはたいてい「建築家ロッシ通り」という道を通ります。ロッシというのは19世紀前半に、ペテルブルクの数々の建物や公園を設計した建築家です。通りはアレクサンドリンスキー劇場の裏手にあります。幅は22メートル、両脇の薄黄色の建物の高さも22メートル、長さは220メートルと、なかなか凝っており、ペテルブルク中で最も19世紀的雰囲気を残しているものの一つとして有名です。さてその薄黄色の建物の片方が、ワガノワ・バレエ・アカデミーです。この国のバレエ学校の最高峰。11歳(たしか)で入学して、基本的な勉強と共に、（当然ながら）バレエを習う専門的な学校だそうです。薄黄色の壁に白い円柱が立ち並んだ宮殿風の古い建物の2階の窓には、、何本もの手やら足やらが見えます。どうやら2階が練習スタジオらしい。（足が見えるのは、彼ら彼女らが頭の上まで　高々と足を上げているから。)スタジオはいくつもあるようで、、隣合う窓の中には、それぞれ異なるポーズの手や足が。おもしろいなぁ、中で見られたらいいのになぁ、と思いながら見上げているのですが、あまり立ち止まっていると不審者と間違われるので、未練を残しつつもそそくさと通り過ぎるのでした。

  2005/12/02

• ペテルブルクの地下鉄２

  大家さんが帰ってきて言うには「今日私はとてもラッキーだった」「病院に行って、帰りがけに駅のそばでたくさん買い物をして　疲れ果てて地下鉄に乗ったの。　でもガスチーヌイ・ドヴォール駅で１号線から４号線に　乗換えをしなきゃいけないでしょう。　もう力がないと思って、参っていたそのとき、　車内にアナウンスが流れて、“この列車はガスチーヌイ・ドヴォールから４号線になります”　だから乗り換えなしで、まっすぐ帰って来れちゃった！」いわば丸の内線が途中でいきなり銀座線になるようなもの。ペテルブルクの地下鉄ってそんなことがあるのね…予告なしでこういうことは起きるようなので、気をつけよう。

  2005/11/18

• ペテ印　モス印

  牛乳を買ったら名前が「PETMOL」これはすなわちペテルブルク("PET"ERBURG)のミルク("MOL"OKO)ということ。モスクワにいたときは、バスはモストランストヴォ、大学はMGUやらMGIMOやら、なにかとMで始まるモス印がついていたので、ペテ印は新鮮です。帝政期の雰囲気を色濃く残すペテ印のこの街に来てみると、モス印は何かと社会主義的装飾と結びついたんだな、と違いが実感されます。かつて指導教官に「ロシアやっててソ連嫌いじゃしょうがねぇんだぞ！」と叱られましたが、やっぱり私、ペテ印の方が好きよ…

  2005/11/13

• センナヤ広場

  『罪と罰』で有名なセンナヤ広場。ドストエフスキーの筆によればまったくの貧民街でした。そんなセンナヤ広場に用があって夕方立ち寄ることに。頭の中にはラスコリニコフの陰鬱な姿。あぁスリとか多いのかも。気をつけなきゃ。カバンを抱え込む私。ところがサドーヴァヤ通りを抜けて広場が開けてみたら、目の前には大きなショッピングモールが二つ、煌々とネオンに照らされてそびえているではありませんか！中には高級スーパーやブティックの数々。広場自体もきれいにタイルが敷き詰められ、キオスクが整然と立ち並び、とてもお行儀よく賑わっています。どうやら今センナヤ広場は、ペテルブルクでのショッピングの中心地のひとつのようです。ショッピングモールの横には、まだ市場もありました。ただしこちらも、きれいな鉄骨の建物におさめられています。売っているのは中央アジア系と思しき人ばかり。自分たちが食べるナンを焼いて運んでいたりするので、ペテルブルクにいながらにして「ここはサマルカンド？」と錯覚してしまいました。他にもショッピングゾーンあるんだろうな。探そう。

  2005/11/11

• ペテルブルクの地下鉄

  ペテルブルクで初めて地下鉄に乗りました。モスクワ同様、地下深くて、長ーいエスカレーターはかなりのスピードで走っています。ホームはモスクワの方が意匠を凝らしてあってきれいかな。すると電車が轟音を立てて駆け込んできました。青いワゴンに白いラインのボディー。全くモスクワと同じです。それなのに何かが違う印象。きれいなのだ！よく見れば、駅のあちこちに「ペテルブルク地下鉄開通50周年」と書いてあります。モスクワではつい先日70周年のお祝いをしていました。車体がきれいなのは、この20年の差なのねぇ…てことはあと20年経つと、ペテの地下鉄もモスクワみたいになるんじゃない？と誰かが言っていたけれど、今のロシアは景気がいいので、80-90年代に財政困難で放置されて荒れてしまったモスクワの地下鉄のようにはならないですむんじゃないかと期待。

  2005/11/10

全59件 (59件中 1-50件目)

1 2 >