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ゆるゆると優雅な心で・・・・

不思議な樹

先日の不思議な木を載せてから数日後、夢を見ました。
 木が夢の中で会話をしています。
 「僕たちは兄弟なんだ」って

 長いのでお暇な方は読んで下さい。

 
 僕とお兄ちゃんは同じ時に芽が出たんだ。
 お兄ちゃんの方がほんの少し先。
 だからお兄ちゃんは僕が芽を出したときこう言った。
 
 「暖かい大地から出たら、さまざまな事が襲ってくるんだ。
  僕が守ってやるから、僕の言う事は正しいから聞くんだよ。」
 
 弟の僕はまだふにゃふにゃしていたから、ちょっとしっかりしたお兄ちゃんが
 とても頼もしくて「うん。お兄ちゃんの言うことは正しいね。」と素直に答えた。

 それから数日して、お兄ちゃんが言った。
 「外はまだ寒いだろう。」 「うん」
 「お兄ちゃんがしっかり巻き付いていてあげるから言うことを聞いて素直に従うんだぞ。」   「うん」
 僕の目の前にはお兄ちゃんしか見えなかったからお兄ちゃんが正しい。
 僕はなんにもできないんだと思っていた。

 雨がよく降った後、暑い陽射しの中
 お兄ちゃんが
 「外は怖いんだよ。僕たちがこうしてくっついていないと、旅人に引き抜かれたら
 お終いだからな。一生こうしてくっついているんだぞ。
 何があってもお兄ちゃんを頼りにしていたらいいんだよ。」
 
 僕は本当のところ少し窮屈だった。隣の木は一つでまっすぐにすくすく大きくなっているのに。
 けれどお兄ちゃんは言う
 「あいつはいつか倒れるさ、その時ざまあみろだ。こうしてくっついている方が絶対に      間違いないんだ。 お兄ちゃんの言う事が信じられないのか!」
 
 僕は不安になった。お兄ちゃんに捨てられたら僕は生きていけない。

 こうして僕たちはくるくる巻き付いて数年が経った。

 数年の間に他の木はすくすく上を向いて大きくなった。
 風がふいても、大雨でも倒れずに。僕は羨ましかった。
 
 僕たちはくるくる巻いていくので時間がかかる。僕はだんだん苦しくなってきた。

 お兄ちゃんに少し離れてみようかと言ってもみたがその度に
 「おまえは馬鹿か!こんなにお兄ちゃんが一生懸命がんばっているのに感謝もないのか!
  謝れ! そして出るなよ、出る杭は打たれるからな。世の中に楽しいことなんてないんだ。
  辛いことばかりだぞ。」と言う。

 僕はしぶしぶ謝った。けれど混乱させられた。
 こんなこと思っちゃいけないんだ。感謝しなければお兄ちゃんに悪いんだ、
 けれど他の木も羨ましい、でも言えない。
 あぁ~ 僕はどうすればいいんだ。
 
 お兄ちゃんは「こうしてくっついて大きく大きく太るんだ。この地面からの栄養は財産って
 いうんだ。決して誰にもやっちゃいけないんだぞ。しっかり他の木よりもたくさんもらうんだ。
 そして財産が増えたら他の木が財産が欲しいから守ってくれるんだ。 僕たちを。
 汚いものだ、他の木は。利用しなければ損だからな。」
 
 僕は最初素直に聞けなかった。だって地面の栄養はみんなものだから。
 けれどお兄ちゃんが毎日毎日繰り返すから本当にそうなのかなと思いこんでいった。

 ある日、どこからともなく石が飛んできて、お兄ちゃんを傷つけた。
 お兄ちゃんは「痛い!! お前がちゃんと見ていないから怪我をしたじゃないか。
 ほんとに気がつかないやつだ。」

 僕はその頃には、自分で栄養もとれるし、他の木と楽しく会話もしていた。
 僕はみんなに相談した。
 
 笹くん「そりゃあ、お兄ちゃんが悪いんじゃないか。別に君のせいじゃないよ。
     お兄ちゃんにガツン!と言って仕返ししたら?」
 
 おだまきさん「自分が謝っておけば波風がたたないから、腹が立っても我慢よ。」
 
 ガヤガヤ、ザワザワ。みんないろんな意見を言ってくれたけど
 僕にはピンとこなかった。もう僕の心は混乱し、早く答えが欲しかった。

 その夜、ぼくはお兄ちゃんとくっついている部分を剥がそうとした。 
 ベリッ! あまりの痛さに体が震えた。次の日も泣きながら剥がそうとしたが、剥がれない。
 
 「こんな僕はもうダメだ。そしてお兄ちゃんも嫌いだ。生きていたくない。」と
 僕には明るい未来も楽しみもなく暗闇の中に落ちていきそうになった。
 
 僕は身動きもとれないからじっとしていた。そして静かに流れる川の音、鳥の声、風を感じ
 太陽の暖かさと月の光、雨、いろいろな虫の声を聞き、じっとしていた。

 そして或る夜、
 とても綺麗な光が僕に近づきささやいた。「目覚めましたか?」
 僕はお兄ちゃんが起きるのが怖くて「あっちいけ」といい寝たふりをした。
 光はどんどん大きくなり僕はあまりの熱さでしっかりと目を覚ましてしまった。

 光の中から声がしてきた「よく我慢しましたね。お疲れ様でしたね」
 僕は思わず号泣してしまった。涙が次から次から止まらなかった。声は続けて言う
 「ゆっくり深呼吸して、緊張しないで、そしてすべて私にゆだねてくださいな」
 僕は逆らわず、もう言われた通りに何もかもどうにでもなれと思った。
 
 その瞬間だった。暖かな綿のようなものに包まれ頭の先のくっついていた部分が
 離れたのだ。痛みもなく。するりと。
 
 「あなたは、もう自由です。はじめは自由に慣れないから戻ろうとしたり、
 お兄様は引っ張り込もうとするかもしれません。もう後ろは振り返らずに思うように
 進みましょう。そして生きている喜びと心の満足を味わって下さい。
 あなたを止めているものはもうありません。あるとしたらそれは幻想です。
 自由になったあなたは、お兄様にただ感謝の気持ちと見守る愛を。あなたは自分が楽しく
 穏やかに毎日を過ごすだけでいいのです。それだけで愛はまわりに光を放ちます。そして
 お兄様に助けが必要になればいつでも来ます。私を呼んで下さい。」
 
 光が消えあたりがまた暗闇に戻った。けれど僕の中からキラキラとした光がふんわりと
 出ているのが見えた。
 
 僕はなぜかとても気持ちが軽くなっていた。先回りしてあれこれ考えるのはもうよそう。
 ありもしない事を想像して不安になるのもやめよう。
 僕はいつでも欲しいときに大地から栄養をもらえるんだ。必要なだけ。
 誰かが「お兄さんを見捨てたの、冷たいのね」とか言うかもしれない。
 この言葉に否定する必要もない。決して見捨ててはいないんだから。
 もしかすると自分が見捨ていないと自分を信じていたら罪悪感を持つこともないんだ、
 そんな言葉も聞こえなくなるかもしれない。
 兄がいないと生きていけないという事も思いこみだったんだ。
 僕は幸せになる。

 僕は楽しくなってきた。
 
 太陽が昇り始めると、僕は驚いたことにお兄ちゃんを見下ろしてしまうくらいに伸びていた。
 下でお兄ちゃんが「こら!置いていくのか!卑怯者!」と大声で叫んでいる。
 
 けれど僕は太陽の光が嬉しくて、鳥のさえずりの音楽が嬉しくて、あれ?
 嬉しいとか楽しいと思うたびに伸びている。お兄ちゃんの声がだんだん遠くなる。


 その頃、下にいたお兄ちゃんは弟に対し、「あれだけしてやったのに。人生を教えてやった
 の僕だぞ。僕がいなければあいつは死んでいたのに。僕が、僕が、、、むかついてきた。
 腹が立ってきた。悲しい。誰か弟の代わりになるものはいないかな。
 僕が正しい事を認めさせなければ。こんなことで腹を立てていては僕は木として失格だ。
 弟がいい気になっているのも今のうちだ。そのうち泣きながら帰ってくるさ。
 僕の何が悪いんだ。どうすればよかったんだ。」とさまざまな感情や考えが渦巻き始めました。
 弟が帰ってくるようにいろいろな策略も試してみました。


 しかし一向に弟は帰ってきません。兄はだんだん怒りと悲しみと恨みや苦しみなどを貯めて
 上に伸びずぷくぷく太り始めました。そんな兄には誰も怖がって近づきません。
 まわりのたくさんの葉に覆われて陽の光も届かず、暗い中悶々としている兄がいました。

 
 兄は上の方で楽しそうにしている弟が羨ましく、またそんな弟を羨ましがっている自分に
 腹が立ち、弟に仕返ししたくなりました。
 
 古い弟と繋がっている所をつつき始めたのです。

 弟は気づいていました。お兄ちゃんが自分を元に戻そうとしているのを。
 弟は祈りました。お兄ちゃんが自分の殻から解放されて楽になれますようにと
 毎日、毎日。

 兄は疲れ果てました。いくら過去に繋がっていた部分を突いても傷ひとつつきません。
 それどころか前よりもピカピカと光っているではありませんか。
 兄はもう戦う気力もなくなり、毎日ぶつぶつと恨み言を言うようになります。

 数日後、兄は自分を傷つける方法を思いつきました。心配した弟が戻ってくると信じて。
 弟は、びっくりしました。まさかお兄ちゃんが兄自身を傷つけてまで振り向いてもらおうと
 していることに。

 弟は必死になり、愛のビームを送りました。一度目は効果があったのか兄はほんの少し
 傷ついただけで済みました。
 けれどその後、何回も何回も「僕なんて、僕なんて」と言いながら、兄は弟の方を見上げ
 てはうっすら笑いながら自分を傷つけようとします。
 弟はへとへとに疲れてきました。

 兄の元に戻ろうか、いや戻りたくないと心の葛藤の中、思い出したのです。

 「私を呼びなさい」という言葉を。


 弟は必死に助けを求めて呼びました。このままでは僕たちは傷つけ合って倒れてしまいます。
 どうか助けて下さい。 おまかせします。

 その瞬間、以前よりも神々しい光が現れ、「あなたの願いは聞きました。お兄様が気づく    ようにチャンスを与えましょう」

 そう言い残すと光はふっと消えてしまいました。
 あたりを見回しても光はありません。弟は不安になりました。
 その時枝の先の葉っぱがキラリと光りました。
 よおく見ると葉っぱに何か書いてあります。
 「あなたはお兄様を見守っていて下さいね。そしてこれはお兄様につけて あげる愛の光のお薬です。必要なるときまでしっかり持っていて下さい  ね。」と葉っぱの中に見たこともないような光を放つ水が溢れるくらいに たくさん包まれていました。

 弟は兄をずっと愛していました。兄が自分を傷つけても、罵詈雑言を
 浴びせても、自分の強さを誇示しても、醜い感情があっても
 成長せずにとどまっていても、愛していました。
 ともに成長するために学びの為にこの世に芽を出したのだから。
 


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