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2007/06/11(月)21:56

日本の青空

映画(312)

 近所の大学祭で日本国憲法制定過程を描いた「日本に青空」を観た。昔、勉強したことが映像化されていた。ただ高橋和也の演じる鈴木安蔵が治安維持法違反第1号で投獄されていたのは知らなかった。この法律はたとえば戦争が嫌だと心の中で思っても犯罪となる大変な悪法、この亡霊がよみがえってきているので憂慮している。 この映画の監督、大澤豊氏と憲法学者の長谷川正安先生のお話付き  以前、監督の沖縄戦を描いた「GAMA-月桃」を観たことがある。今回の映画は若い人に観てもらいたいのでドラマにしたと。月刊誌の派遣社員!が恋人(司法試験を受けようとする若者) と日本国憲法の原点を問う取材を通して鈴木安蔵を知る設定。  鈴木は47歳まで職に付く(静岡大学教授)ことが出来なかった。1904年、福島県生ま  れ。京都帝大哲学科から経済学部に転部。民衆の立場に立つ憲法学を成立させる。  妻(藤谷美紀)俊子はロシア語の翻訳家。「女が選挙権持っていたら戦争する人に投票しない」「戦争中は戦争反対なんて言えなかった」という俊子の言葉に安蔵が憲法草案に「男女平等」を入れた場面がある。子供が三人いて無職の、研究ひとすじの夫では大変な苦労されたでしょう。彼女の実家も開明的だったらしい。調べたい。  長谷川先生も憲法は誰が作ったかはそんなに大事な事ではないと。イギリスは13世紀のマグナカルタから始まり、フランス革命他世界各地の民主化の闘いで生み出され結集したもの。特に日本は多大な戦争の被害を諸国民に与えてしまったのだから平和憲法なくしては許されなかった。  明治の青年たちが外国からルソーなどの文献取り寄せ学習し各地で憲法草案が作られた。映画の中でも自由民権運動や五日市憲法、植木枝盛などの憲法草案作成過程を子供たちがドラマ仕立てにしていた。それらの運動や草案は明治政府により抹殺され、国民には秘密のうちにドイツ憲法を手本とした君主権の強い大日本帝国憲法が作られてしまった。明治初期から日本は台湾や朝鮮への出兵、日清、日露、シベリア出兵、日中戦争、太平洋戦争と戦争にあけくれた。これでは豊かになれるはずもない。  戦後日本が奇跡の復興とげたのも平和憲法あっての事。9条という歯止めなくしたら、子供たちの未来を奪ってよいのだろうか。  鈴木安蔵だけでなく各政党や、高野岩三郎(加藤剛)の共和制の憲法草案もあった。鈴木中心の憲法研究会の案が英訳されGHQ案に取り入れられた。日本政府案はほとんど大日本帝国憲法と同じ内容だった。戦前の日本に住んでいたベアテさんは日本女性の惨めな境遇に心痛め男女平等を取り入れた。彼女はまだ不充分と涙浮かべて主張したが日本の保守階級は抵抗した。 押し付けられたと思ったのはそういう特権階級。あの当時新憲法を国民がどんなに歓迎したか。秘密のうちに作られた憲法を押し付けられた戦前と違い議会で審議、通過している。  憲法前文の格調の高さをぜひ多くの人に読んでもらいたい。  写真は「日本の青空」公式サイトより。上はイ・ビョンホンの吹き替えでもお馴染みの高橋和也と井上ひさしの東京三部作にも出縁した藤田美紀演じた鈴木夫妻。  下の写真は現代の青年を演じた田丸麻紀と谷部央年。宍戸開の白州次郎も登場する。

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