子どもが白血病かもしれない→病院で検査
「熱が上がったり下がったりしてる…こないだも足にアザがよくできてたし…」
「小児白血病の初期症状はわかりづらいらしいからさ…明日大きい病院行ってきて」
…妻にそう言われた。
たしかに長男(3)のサクは最近、熱が下がったと思ったら39度、今度こそ治ったと思ったら38.5度…等、2週間に渡り体調が優れない。
僕は妻に
「大丈夫だよ、俺も最近ノド痛いし身体だるいし、サクの風邪がうつったんだよ」
と言った。
妻は
「そうだと良いんだけど…」
とだけ応えた。
そして今日、病院に行ってきた。
大きい病院に予約もしないで行ったもんだから、すべて終わるまで計5時間かかった。
さらっと書いたが、僕も体調が悪いので、待ち時間も病院までの電車もバスも徒歩も結構きつい。
…たしかにキツいが、息子が大病を患ってるかもしれないと思うと、僕の体調のことなど別にどうでも良いと思えた。
もし本当に大病がサクの身体を蝕んでいるのであれば、代わってあげたい。
心からそう思った。
アデノウイルスと溶連菌を疑われたが、
そのどちらも「陰性」と言われたとき、
恐ろしさで押し潰されそうになった。
「6番のお部屋どうぞー」
「次は血液検査しますね」
「お父さんはどうぞこちらへ。」
…
「はい、お待たせしました。また30〜40分くらいお待ちください、結果見るんで」
…(40分経過)
「お父さん?10番のお部屋へどうぞ」
?
さっきまでは6番で診察してくれてたんだぞ…?
なんで…急に10番?
10番はもしかしたら白血病を詳しく説明するための材料が揃ってる部屋なのかもしれない…
じゃなきゃ10番の部屋になんかわざわざ案内されないはずだ…
僕は胸を締め付けられながら、待合室で昼寝をしてしまったサクを抱きかかえた。
昼寝をしたサクの頭は寝汗でびっしょりだ。
相変わらず寝顔が可愛い。
厚い唇はママ似だ。
少しだけ長いまつ毛は僕に似たのかもしれない。
普段は元気いっぱいで、電車が好きで、じーじばーばが大好きで、ピタゴラとトーマスをこよなく愛し、妹のムギのほっぺをつねっては僕に怒られている。
そんな可愛くて仕方ないこの子が、白血病かもしれない。
僕は10番の部屋に入りたくなかった。
でも検査結果をしっかり聞かなくては病院まで来た意味がないし、こういう時こそ父親はしっかりしなくてはならない。
そして、10番の扉を開けた。
「まず、結論から申し上げますね。」
「はい…」
「なんらかのウイルス感染です」
「はい…?」
「いや、あの、ウイルス感染です」
「ウイルス感染…?」
「通称、風邪です」
「風邪…え、風邪?」
「そうですね」
「白血病じゃないんですか?」
「え、白血病?どうして?」
「だって、熱が上がったり下がったりってネットで検索したら出てきますよ!」
「あー…まぁ初期症状は様々ですからね。お父さん、この数値を見てください。白血病の場合、ここの数値とここの数値、それぞれが大きく動きます。この子は正常値ですよ。白血病の可能性は、極めて低い」
「じゃ、じゃじゃ…じゃあ、風邪?」
「はい、風邪」
「お薬は…?」
「解熱剤だけ出しとくんで、熱が上がって苦しそうなときにだけあげてください」
「はい…」
僕は会計の列でサクと手を繋ぎながら、妻に詳細のLINEを送った。
サクの手は温かく、
まだ眠いのが伝わってきた。
いつも以上にサクが愛おしく、
気がついたら頭を何度も撫でてしまった。
「なーにー?父ちゃん?」
そのおぼつかない言葉は
僕の目に涙を溜めさせた。
明日からもしっかり働いていこう
僕は、そう思った。