連載リポート2「天龍村物語」
今回の旅のハイライトとも言えるのが今日の写真。古くから天龍村に伝わる坂部地区の「冬まつり」です。地元の諏訪神社で、1429年から代々継承されてきた湯立神楽の作法を伝える神事です。1月4日の夜から翌日の昼近くまで一昼夜かけて開催され、国の重要無形民族文化財に指定されています。山間の峡谷にへばり付くように点在する集落。真っ暗闇の曲がりくねった細い山道を、車で登りましたがもちろん提灯や、のぼり旗、看板も出ていません。こんなに山奥で本当に「祭り」をやっているの?「遭難しても不思議じゃないわね」そんな会話も飛び出すほど、私には秘境に思えるところでした。やがて木立の隙間から、灯かりが漏れてくるのが見えてきました。村の小さな神社には、近隣の村の人達も含めて数十人くらいの人達が集まっています。境内には焚き火が燃えて、冬空に火の粉が舞い上がります。振舞い酒で暖を取りながら、やがて一緒に舞い踊り、そして‥祈ります。厳しい大自然と寄り添うように暮らしている人々の自然に対する畏怖と感謝。誰かに見せるためでなく、自分達が生きている感謝と、祖先に対する祈りです。今年の幸せを願い、新しい春を待つ心が、素朴な祭りに凝縮されているようでした。少女、青年、大人たちと舞は続き、クライマックスは鬼の登場で斧と剣が火花を散らすそうですが、鬼が出て来るのは夜明けの6時頃と聞き及び、寒空の下で徹夜は無理と、残念でしたが引き上げました。なので「鬼」はポスターでごめんなさい。そして遭難しそうな山道を命がけ?で運転して下さった【まっち】さん、ありがとう☆ところで、祭りの境内で素敵な方と出会えました。柚餅子(ユベシ)作りの名人・関さんです。隣村から、この坂部に嫁いで45年、柚餅子作り一筋の関さんも天龍村の振興に役立ちたいと頑張っています。※柚餅子(ユベシ)は柚子の中身をくり抜き、 その中に味噌、くるみ、ゴマを詰め、 2~3ケ月かけて干した地元の保存食。薄~くスライスして酒のつまみやお茶うけに。なかなかオツな味でした♪1年に1度しか作れず、しかも大量生産できないとのこと。なかでも関さんの作るものは、先日、雑誌「サライ」でも紹介された超人気「柚餅子」(ゆべし)です。!村に暮らす八十代のお婆ちゃんが、(ゆべし)を包む水引カゴを一つ一つ編み上げています。今年の分はすでに完売してしまったそうですが、神社に残っていた最後の一個を頂きました。来年のご予約は、天龍村坂部の生産者組合まで。(電話0260-32-3470)●追伸 とても悲しいお知らせが一つ。 昨年「里山暮らし、ときどきスペイン」のために 早々と書評を寄せて下さった「翠泉0228」さんが、 去、1月6日午前4時に他界されました。 翠泉さんから、いずれ「風の会」にも参加したいし、 もっともっと「幸せ」に対して貪欲に生きたいとの お手紙を頂戴したばかりでした。 あまりにも早すぎる訃報に言葉もありません‥。 翠泉さんが残された書評が、彼女の心の一片として、 インターネットのレビュー欄に、これからも輝き、生き続けて いくだろうことが、私にとって、せめてもの慰めです。 翠泉さん、書評をお形見として大切に心に刻みます。 どうぞ安らかにお眠りください。 謹んでご冥福をお祈り致します‥。.........................................................................翠泉さんが絶賛して下さった思い出の本になりました‥【里山暮らし、ときどきスペイン】太陽出版 1,260円(税込)各章の扉絵は、スペインの風「水彩画人・俊介」さん。楽天ブックス