002425 ランダム
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ringing sea

ringing sea

Hunter's night

人類がこの世界に生を受けて以来、彼らは常に夜を忌み嫌っていた。
様々な怪異が息を潜める暗黒に、恐怖してきた。
漆黒の世界に存在する光は、宇宙の彼方よりもたらされる。
星々の淡い煌きが微かに射すのみ。
一際明るく照り輝く月光も、圧倒的な闇の前では何と矮小な存在であろうか。
そして、夜は何時の時代においても、常に邪悪な存在によって満たされていた。
太陽の光から身を隠していた怪異が姿を現し、穢れた咆哮をあげては、瘴気を撒き散らす。
それは、宴の開幕を告げる鐘の音。
血生臭く、凄惨な儀式を開式を知らせる雄叫びにして、生ある者への宣戦布告である。

宴が始まる。
宴の席における人間は、ただ陵辱されるがままの非力な獲物。
もしくは、満たされることの無い欲望を満たすための哀れな生贄。
悲鳴と言う名の狂想曲を奏でる、生きた肉楽器。
そして何より、闘う為の牙すら持ち合わせていない無力な弱者でしかない。
邪悪な存在は、夜の世界を謳歌する。
我が物顔でのさばり、闇を支配する。
己の本能に従うまま、無知にして無垢な獲物へと、底知れぬ略奪の牙を突き立てる。

おぞましい宴は続く。
幾日も、幾月も、幾年も。


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