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rirical world

La rose de Versailles

「ベルサイユのばら」

 フランス革命史上、悲劇の女王として名高いマリー.アントワネットと、架空の男装の麗人オスカルの二人の女性の対照的な一生を軸に据え、彼女たちの波瀾に満ちた人生、恋愛と成長を描いた少女漫画不朽の名作。

 私の人生観に強く影響を与えた作品。
 宝塚やアニメも見たけれど、原作が一番好き。

 これほど、読んでない人に誤解される漫画もないのではないかと思う。
 いかにも少女漫画的な絵柄+宝塚から連想される、どことなく気恥ずかしいようなイメージ。
「なんだか大仰で、おめめキラキラなお姫様と王子様が出てくる夢物語」みたいなね。
 この誤解が、長年のファンとしてはとても残念でならない。

 読まれたことのない方は、だまされたと思ってぜひ一度手に取ってみてほしい。
 ベルばらは、時代背景や人種、老若男女を問わず、読者を感動させる力がある素晴らしい作品なのである。

 私がファンになったのは小学生からで、宇多田ヒカルちゃんもその頃から大好きだったとブログで告白している。子供に訴える魔力があるのだろう。
 が、実は小学生がホントに理解できるのか?というくらい、骨太で普遍的な物語である。
 愛と死、そして人は何のために生きるのか?という、深遠なテーマが描かれている。
 舞台こそフランスだが作者が日本人のせいなのか、根底に流れている死生観がかなり日本的であるのが特徴だと思う。
 何といっても、ベルばらに登場するヒロイン達は「自分の意志で運命を選び取る」のである。

 意味のない生を生きるより、意味のある生を限りある中で燃焼し尽くす…いうなれば「滅びの美学」。
 現代の私達には絶対にできない生き方だけに、彼女達は潔くて、眩しい。

 作者はこれを26才という若さで描いたのだが(それであの深い人間洞察、綿密な構成と伏線…すばらしい…)、週刊誌ゆえのギリギリの締切を抱えて限界に挑戦し続けた。絵柄、デッサン、構図にしても、前半とプロに習った後半だとまるで違うし、ストーリーやキャラクターの処し方も当初とは違ったものになっていたそうなのだ。
 未完成な部分、粗い部分も含めて当時のファンの熱気とか作者のエネルギーのようなものが強く感じられるところも、たまらないなぁ。私はこの「当時の熱気」をどうしても体感したくて、わざわざ国会図書館まで連載誌を読みに行っちゃった位。こんな作品が一世を風靡するのは当然で、現在でも若いファンを惹きつけているところが凄いのだ。

 登場人物は、それぞれに個性豊かに描かれていて素晴らしい。特に女性の造形が出色だと思う。
 とりわけ、男装の麗人であるオスカルの設定は今でもとても魅力的だ。
 古今東西、色々な小説や映画やマンガや舞台を見てみても…彼女を超えるヒロイックな人ってなかなかいない。対抗できるとしたら「風と共に去りぬ」のスカーレットくらいかしら。でも、あの人は魅力はあるけれど…内面性に深いものを感じないというのが私の印象だ。

 オスカルには実はモデルの男性が存在する。が、著者が、男性の内面を描ききるのは難しい、同性である女性なら…ということで、あの男装の麗人という設定になったのだ。
 そういう意味でも、色々な幸運な偶然が重なった作品と言えるかもしれない。
 奇しくも、ベルばらが描かれた1970年代はまだ男女雇用均等法も施行されてなくって、その前提になるウーマンリブが台頭して来た時代。でもって、60年安保後の空気もしっかり感じられる。

 オスカルの魅力は、なんといっても主体性があって、自分の運命をその手で切り開くスーパーヒロインであることに尽きる。
 架空のヒロインだから、男性/女性のあらまほしい部分をいいとこどり。
 どの男性より剛毅果断で知的で行動力があって、
 どの女性より美しくて純粋で優しくて…
 その上、オスカルがたとえ男装してても男言葉を使っていても、素敵な男性に愛されまくるというのが一番のミソである。
 しかもよ、その男性陣がセレブな伊達男・ちょっと生意気な部下・侍従系男友達・うんと年下の崇拝者…と、実に多彩なバラエティに富んでいる。昨今のイケメンドラマなんて目じゃないかも。
 この設定、女性という性の欲深さを感じずにはいられない…(笑)。
 もしも、オスカルがああいう絶世の美女じゃなくて全然モテなかったら…軍隊を指揮してどんだけ出世したって、多分ここまで女性の共感と絶賛は得られないと思うの。

 しかも、オスカルが男性社会を生き抜く上での女性としての葛藤や悩みもしっかり描かれていて、これは…「はたらきマン(安野モヨコ)」にも通ずる、現代女性の抱えるリアルさなのだ。
 とはいえ、現実は女性が社会性を獲得して仕事に邁進すればするほど、モテから遠のく訳であって、そこらへんが違うのがやっぱりマンガともいえる。とはいえ、連載から35年が経過し、今の20代の女性がさっさと結婚して、産休とった後にバリバリ働いてるのを見ると、そこらへんの両立が凄く上手くなってるなーと感じることが多い。きっと、不器用だった私達世代を反面教師にしてるのだろうな(笑)。
 それだけ日本社会があんまり変わってなくて保守的だ、と言ってしまえばそれまでなのだが、そういう意味でもとても日本的な要素があるし、オスカルとアンドレ、アントワネットとフェルゼンの恋の道行も、日本的な美学に貫かれていると思う。
 個人的には、曾根崎心中とか、谷崎の「春琴抄」とか、三島の「憂国」とか、そういう作品を思い出す。
 
 アントワネットはオスカルとはものすごく対比的に描かれている。
 享楽的でワガママ、平凡な女性としての幸せだけを望む…はずが、そういう運命を選べない王妃としての境遇。そんな、枠にはめられていた彼女が、革命が起きた後から真の王妃として目覚めていくところがとてもドラマティックなのだ。ここで初めて彼女が主体性を獲得するのがミソですな。

 極限下にある人間が、どうやって自分の矜持を保っていけるのか?
 これはある意味、ベルばらに出て来る登場人物全員が抱えている命題かもしれないなぁ。
 だから、作品が古くならないし普遍的な魅力を放っているのだ。

※ベルばらの恋愛模様については、また続きで
 



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