2005/09/23(金)12:59
高機能さんの妻になった時
パパの障害がはっきりして最初に感じたのは小さな悲しみでした。前の日記にも書いたと思います。スカイの時とは違う意味で、です。
調べているうちにわかったいろいろな事…その中で健常者と高機能自閉症者の物事への『思い』や『考えかた』『思いでのもちかた』の違いを知りました。
同じ時間を共有していて、ものすごく仲のいい夫婦なのに、感じ方やとらえかたが違うのはショックでした。もちろん、健常者同士でも有りうることなのは理解していますけれども。
り~るは感受性が強いほうで、歌や場所でいろんなことを思い出したりドラマやドキュメンタリーを見てぽろぽろ泣いちゃうほうです。歌の歌詞に自分を重ねたり、励みにしたり…友達に会って元気になったり。
関わりのない人に陰口を言われても平気ですが、大切な人や友人にはとても気を使ったりもします。嫌われるのが怖いのです。
パパとは、ドラマのように出会い、あっというまに結婚しました。り~るは結婚後、何度も、その頃の話をパパにしました。一緒にドライブ中に聞いた、アメリカンオールディーズ…二人が好きだった、パパの愛車の小さなぼろぼろの英国車。皮ジャンに袖を切ったGジャンを重ね、皮のブーツを履いて二台の単車で走ったこと、今でも使ってくれている、初めてあげたZippoのオイルライター。
あたしにとっては、二人だけの短かった、大切な大切な思いでだったのです。それらの話を聞いて『そうだね』『楽しかったね』とは言いますが、それ以上の深い言葉はありません。寡黙だけではない、違和感を感じはじめていました。
り~るは仕事で訪れた先で背の高い人を見掛けました。素敵な人だな、そう思ったその人は一週間後、偶然一緒に働くことになりました。同僚となり三週間後、二度目のドライブでプロポーズされ…その日から今まで一緒に暮らしています。
それがパパです。でもパパのことは何も知らないままで結婚しました。そして、パパがなぜ『ずっと一緒にいようか』と言ったのか…今でも謎です。多分、パパの好きな車(旧車)に詳しかったからでしょう。パパにとって、話があう初めての女性だったのかもしれません。
ちなみに経済力は全くありませんでした(笑)。若さと勢いがなければできない結婚でした。恋愛はほとんど経験がないようです。他人に興味ないですから。
でも、実は雑誌に載ったことがあるほど、見た目は悪くないのです。告白されたことがないなんて不思議なくらいですし、平凡な見た目のり~るにとってはもったいないほどの旦那様でした。
まもなく不慮の事故にあい、単車をあきらめしばらく寝たきりの生活を送ったり~るは、まりんがお腹にいることを知りました。
結局、パパとり~るが二人だけで健康に楽しく過ごしたのは、出会ってたったの半年…単車もあきらめ、突然母として妻として専業主婦になってしまったり~るにとっては、とっても大切な思いで深い半年でした。
でも、パパにとって『思いで』は『出来事』でしかなく…『思いでのある物』は壊れたら捨ててしまっても別に平気だということがわかったのです。
パパの高機能自閉症がわかって一番悲しかったのは、そのことでした。
『あの頃楽しかったね』と言えば『うん』と言うけど…経験した出来事としてただ、楽しいみたいです。感情として、というのとは少し違うみたいで自分の思いを細かく説明したりはできません。
だからり~るが歌の歌詞などで思いでをたぐることなどはあまり理解できないみたいです。音楽を歌詞や音階(?)で楽しむり~るとは違い、リズムが気にいるようで…なるほど、洋楽を好んで聴く理由もわかります。り~るは歌詞がわからないからあまり聴きません(笑)。
愛車にこだわり、手放す時に涙するり~るにくらべ、手元にある時はピカピカに磨く車も…簡単に手放し、なんとも思わないようです。結婚後、パパの車は六台目になりました(お金を出したのは二台だけです(笑)あとはもらいました)。とは言ってもわがままで替えたわけではなく、譲って欲しいという人がいたり、別な車をもらったりしてかわっただけなんですが。
子供の頃からり~ると出会うまでのことを聞くと『こんなことがあった』という経験としては話ますが
「楽しかったこと」
「悲しかったこと」
「嬉しかったこと」
「悔しかったこと」
等を聞いても答えられません。自分が興味あった車や単車の話はしますが、家族ででかけたり友達とのことを話することはほとんどありません。
『忘れた』
『わかんない』
そう、言います。
隠すわけではなく、パパにとって経験したことと感情は深くは重ならないようなのです。そして、覚えていないようです。『過去のない人』。パパの小さい頃の写真も持ってません。一番古くて二十歳くらいの写真が数枚あるだけでしょうか…。
両親や兄弟の年齢や誕生日なども知りません。実家の住所も電話も覚えていません。
これが、り~るが自閉症のことを知って一番悲しかったことでした。でも個人差もあるし、全く思いでを持たないわけではないことは確かです。り~ると出会ってからのことは『楽しかった出来事』として記憶にはあるみたいなので。ただ、り~るとは記憶のひきだしがちょっとだけ違うのです。
パパはり~ると出会うまで…遊びも旅行もいろいろな食べ物も知りませんでした。
特に食べ物は、コンビニの物と牛丼やハンバーガー、カレー等ぐらい。実母は家事をあまりする人ではありませんでした。
マク○ナルドに行っても何にするか聞くと
『ハンバーガーとコーラ』
レストランでは
『カレー』
他のものは知らないし、興味もなく…セットにするのということも分かりづらいようなのです。
今でもメニューを見てり~るが決めてあげます。そのほうが美味しいものが食べられるんだそうです(笑)。そして、パパは世の中にはたくさん美味しいものがあることを知り、食べることが大好きになりました。
これらのことを
『健常者の夫だってそうよ』
と言う意見があるのは承知の上です。り~るが思ったことなので御容赦くださいませ。ただ言えることは、健常者とはやはり、どこかが違う…ということです。
また、パパも調子がいいときと悪いとき(自閉症の特徴が強くでているときとそうじゃない時)では、少し違います。雨の前、低気圧が近付いたり季節の変わり目は特に調子が悪く思えます。
今は随分なれてきたけれど、診断を受けてしばらくは(スカイの時より)しっかり受けとめられるまで時間が必要でした。
今も、寂しく思うことはあります。もっと感情を表現してくれたら…他の人と話してくれたら…父親として子供たちと接してくれたら…
だけど若い時に元彼にひどい暴力(命の危険もありました。でも恋愛上のことなので、自分も悪かったと思っています。)を受け、PTSDをもつり~るにとって、一番心を許せて自分をだせる相手でもあるのです。
り~るが機嫌悪くてもあまり気にしませんし(笑)。雑学話が好きなり~るが話したことも忘れてしまうので、同じことを何度も何度も話ました。でも、り~るはそれを『へぇ~』と感心して聞いてくれるのが、とても嬉しいのです。
そういう意味でも、り~るにとってもパパにとっても理想のパートナーと言えるでしょう…
次回はパパとり~るの生活でも書いてみたいと思ってます。興味をもたれた方は長い話で疲れちゃうかも~ですが、またのぞいてみてくださいね。
携帯で書くと3時間とかかかるので・・いつになるかもわからないですけど・・