2011/09/17(土)21:38
さかのぼって、入院中のこと
入院中、いろいろありました。
わたしは車で自宅から往復4時間以上かかる病院に入院したので、見舞いも、家族の物資支援もありません。週に一度、あるかないか。
そんなことになるとは思っていなかった。検査入院だけだと思っていたから、ろくな用意をしていなかった。
入院中、同じ病室には、喉頭がんで入院して、退院待ちの50代の女性と、敗血症の40代の女性がいました。他にも居たのだけど、すぐ退院していった。
50代の女性は 霊が見える らしい人で、
ベットの四隅に盛り塩をしていた。
心理カウンセラーの資格をもっていると、話していた。証書のシャメも見せてくれた。
40代の女性は、入退院を繰り返していて、いままで子どもと会う時間もろくになかったと言っていた。
入院して10日ほどが経ち、早い退院は無理そうなことがわかって来た頃、同室に同じ病気の20代女性が、入院。
杖をついていました。
カリンコリンに痩せていました。
話し方が、少しおかしいような感じがしました。
3年くらい前から、脳幹に症状が出て、体がマヒしてしまったらしいです。
一日目、わたしは普通でした。
二日目、そのひとに50代のおばちゃんが話をしていて、
「たいへんだね」 とか言っていたら、その子が
「でも、もうすぐ新薬とかも出るし、じぶんは、がんばるだけです」
と言った時、わたしの涙腺はおかしくなった。
どうして泣いているのか自分でもわからない。
ふつうにしゃべっているのに。
泣いていたらどんどん暗いほうに考えが行って。
……わたしには、とてもできない。
体が動かなくなって、がんばるなんて。
このひとはどうしてこんなにしっかりしているのだろう。
わたしには、絶対無理だ。
同室の人たちに泣いてしまったことを謝って、一服しに屋上へ行った。
病院敷地内全域禁煙のはずだが、スモーカーのひとは、いつも屋上にいた。
癌患者のかたもいらっしゃった。
みんな明るくて、楽しい話ばかりしていた。
たわいのないことばかり話していた。
わたしはそのころウンコ座りができなくなっていて、コンクリに体育すわりをして、その人たちと笑って話をしていた。
屋上に同室の年上二人が、泣いて屋上へ行ったわたしを心配して、見に来た。
「大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。タバコ吸ったら、した行くよ」
わたしは、もやもやした気持ちを抱えたまま、屋上のおじさまたちや若者たちと話をしていた。たわいのないことばかり。考えると、どんどん暗くなりそうだ。
病室へ戻ったら、50代の人がいきなり
「わたし、タバコやめる」
そう言って、煙草を紙袋に入れてゴミ箱へ捨てた。
「あんたもやめなよ」
……なんで?
「上にいって、あんな奴らとヘラヘラ笑って、あの涙はなに? って感じだよ」
……わたしはその人は、いいひとだと思っていた。
「急にやめるのは、無理なのわかるから、せめて食後だけとかさ」
嫌いじゃなかった、おもしろいひとだと思っていた。だから言ってしまった。
「うん……ひかえるようにする」
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