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カテゴリ:音楽
アスペレンのフローベルガー・エディション第2巻を聴いているうちに、とても懐かしい響きのする曲に行き当たりました。
その曲は組曲第6番、「マイエリンのパルティータ(Partita “Auf die Mayerin”)」と題されています。 そもそもこの作品は、組曲第1番から第5番までとともに「Libro Secondo (1649年)」という曲集を構成しており、番号からも分かるようにその最後に置かれています。他の組曲はアルマンド、クーラント、サラバンドといった舞曲の組曲になっているのに対し、この曲だけは変奏曲の形式になっていて、おやっ?と思わせます。 というわけで少し調べてみるとこの作品、どうやらフローベルガーの作品の中でも比較的有名で人気もあるようで、選集のようなCDにはほぼ定番の一曲として収まっている模様。 アスペレン先生のライナーノートやネット上で見つけたAndrus Madsenという人の解説記事によると、変奏曲の主題となっているメロディーは同時代の「Die Meÿerin」という歌謡曲で、「Schweiget mir von Weiber (Frauen) nehmen(妻を娶る話などするなかれ)」という歌詞に付けられたものとか。[この歌詞は北ドイツの詩人・作家 Georg Greflinger (1620 - 1677)の手になるようです。] 元の曲はかなり人気があったらしく、同時代のオルガニスト、ヨハン・アダム・ラインケンも同じ主題による長大な変奏曲を書いています(IMSLPで入手可)。とはいえ、もとの歌謡曲がどういうものだったかについてはどうもはっきりしません。 Madsenは、この変奏曲がLibro Secondoの最後を飾る曲として置かれたことは理にかなっているとし、その理由としてこれに先立つ5つの組曲がいずれも作曲技法として変奏曲の要素を用いていることを指摘しています。確かにそう言われて演奏を聴いてみると、どの組曲も冒頭のアルマンドと引き続くクーラントはよく似たメロディーの形と和声進行を持っていて、後者は前者の変奏曲のような趣があります。 ところで、この変奏曲の主題を与える第1曲目を弾いていて困ることがひとつ。一番最後の小節で左手に11度も離れた音が出てきます。(DDとG。代わりに右手でGとbを取っても平行10度でFとaに移動、aの音にはトリルを付けたい--と思うともう絶対演奏不能!) アスペレン先生のCDを聴くと確かに音が鳴っているのですが、一体どうやって弾いているのだろうと怪しむことしばし。フローベルガー時代の楽器によく見られたショートオクターブならば指が届いたのだろうと想像しますが、アスペレン先生の弾いている楽器はケネス・ギルバート所有の有名なクシェ・ブランシェ・タスカンによるオリジナル楽器で、鍵盤はFF-f3のフルレンジ。(ちなみに、この楽器を使ってオリヴィエ・ボーモンにレッスンする様子を収めたビデオを見ることが出来ます。) 亭主はDDの音を足の親指で弾いてみましたが結構大変です(もちろん下段鍵盤でのみ可能)。その昔バッハは手足で弾けない音を口にくわえた棒で押して弾いたというウワサもありますが、いずれにせよ人前ではあまり出来ないマネです。皆さんはこういうときどうされるんでしょうか… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 16, 2014 02:39:30 PM
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