|
カテゴリ:音楽
昨日は「ハロウィン」。この町内でも数年前までは子供達が仮装して家々を回るというイベントが行われていましたが、全体的に学齢が上がって参加者が少なくなったせいかいつの間にかなくなり、このところは静かなものです。季節柄か、近所のスーパーに北海道産の旨そうなカボチャが並んでいたので、「ハロウィン」メニューということで久々にカボチャのティアンを作りました。
ところで、先日放送された「題名のない音楽会」では、「宇宙旅行の音楽会」と称して映画やアニメに登場した音楽が取り上げられていました。そこで、「2001年宇宙の旅」の冒頭に出てくるR.シュトラウスの「ツァラトゥストラ」、J.ウィリアムズによる「スターウォーズ」や「E.T.」の音楽に共通する特徴として取り上げられたのが表題の和音(正確にはド→ソという5度の音階進行)です。 TV番組の解説では定石に従い、調性音楽における長調と短調が完全5度に挟まる第3の音(ミ)が作る音階の長短(長3度か短3度か)によって決まることを説き、5度を形成する2つの音のみではこれが定まらないので、これが「解放された響き」、「空間的に広がった感じ」=宇宙空間をイメージさせる、という説明がされていました。 この解説、まあもっともらしいといえばその通りなのですが、それでは例えば同じ完全5度の進行で始まる有名なベートーヴェンの第9交響曲第1楽章の冒頭が宇宙空間をイメージさせるか、というとそうでもない感じです。調性音楽にどっぷり浸かった耳には、長調、短調どちらでもない音程はむしろ緊張をもたらす中途半端な音程であり、第9の冒頭もそのように響きます。実際、バロック後期以降では完全5度のみの音程は「空虚5度」とも呼ばれて忌み嫌われた和音であることもよく知られています。(冒頭の文脈で言えば、むしろ「空虚」が人間にとっての宇宙空間の実態そのものであることとよく対応している、というべきかもしれません。) 一方、バロック以前の音楽では真逆で、完全4度、完全5度、オクターブといった音程(純正律における最も単純な整数比音程)が最も美しいとされており、中世・ルネサンス期の音楽ではそのような和音、音程が頻出します。例えば亭主お気に入りのギヨーム・ド・マショーの「ノートルダムのミサ(Messe de Nostre Dame)」の導入部では、完全平行5度の合唱が延々と続く、というものです。 平行5度は18世紀以後の和声法では禁則とされ、このような和音、音程が現れる曲は「古い音楽」として否定された時代が長く続きました。ところが、「調性音楽の破壊」という20世紀のカタストロフを経験した我々のような現代人の耳にとって、マショーの音楽はむしろ新鮮に聞こえます。教会旋法がもたらす「調性音楽を超えた浮遊感」とともに、このような新感覚の音楽を現代に蘇らせる上で足りないものは、リズムとの組み合わせだけでしょうか。(モード・ジャズはそのような試みの一つかも?) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 11, 2023 10:50:05 PM
コメント(0) | コメントを書く
[音楽] カテゴリの最新記事
|