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カテゴリ:美術
仕事で土曜日の午前中東京に出ていた亭主は、割に最近似たようなタイトルの展覧会に行ったなぁと思いつつ、「ものはついで」ということで渋谷のBukamuraで開催されている表記の展覧会に足を運びました。(2014年に開催された「ラファエル前派展」についてはこちら)
例によって何の事前情報も持たずに会場に入った亭主が最初に対面したのは《いにしえの夢-浅瀬を渡るイサンブラス卿》と題されたジョン・エヴァレット・ミレイの大作。ミレイは1848年に結成された「ラファエロ以前兄弟団」の主要なメンバーで、このところ日本でもそれなりに知名度も上がっているので、展覧会の冒頭を飾るにふさわしい作家と言えます。展示室にはこれに続いてミレイの大作がいくつも並んでいて、なかなか壮観でした。 とはいえ、会場を進むにつれて徐々に湧き上がってきたのは「何とも散漫な展覧会だなぁ...」という印象。確かにロセッティやバーン・ジョーンズの作品も所々にあって、それなりに「ラファエル前派」展の雰囲気もなくはないのですが、ラファエル前派が仇と見定めた「どちらかというとアカデミー風」の絵画も少なからず展示されていて、展覧会のお題から見るとやや羊頭狗肉なところもあります。 それもそのはず、実はこの展覧会、リパプール国立美術館が所蔵する作品の中から19世紀英国の絵画で主だったものを拾い出してきた、というのが本当のところのようで、「ラファエル前派」というキーワードは、どうやらその中の目玉作品を展覧会の宣伝に使うための方便として入れたフシがあります。 まぁ、確かに正直ベースで「19世紀英国絵画展」としてもあまり人目を引かず、興行的には失敗する可能性が大ですが、せめて「ラファエル前派vsアカデミー」といった19世紀の英国画壇を俯瞰するようなお題をつけてくれていれば、まだ見る目も違っていたかも。(今のお題ではラファエル前派以外の作品は単なる「おまけ」というメッセージにしかなっておらず、それらに対しては観覧者にネガティブなバイアスを与えてしまいます。) 上記のような状況に加え、アルバート・ジョゼフ・ムーア、ローレンス・アルマ=タデマ、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスといった「アカデミー」寄りの作家の作品群には初めて目にするものが多く、亭主はむしろこちらを大いに楽しむことができました。 もちろん、アカデミーの画家たちの作品は基本的に写実主義に裏打ちされた新古典主義的、あるいはロマン派的な作風をその身上としているので、同時代のパリで始まった印象派のような芸術運動が持つ「絵画とは何か」といった本質的・先鋭的な問題意識は感じられません。一方で彼らの作品は(これは音楽についても当てはまりますが)、同時代の美意識における最高の完成度を目指した絵画の到達点として、鑑賞者を十二分に楽しませる力があるのだと思われます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 17, 2016 06:03:01 PM
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