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カテゴリ:音楽
週末となり、いつものようにハープシコードを調律していたところ、e’の音をチューンしている途中で弦がプツンと切れました。この音、最近音が下がり気味で変だなと思っていたところなので驚きませんでしたが、切れたのはチューニングピンに近い位置。ここはピンの回転時に最もストレスがかかるので、調律の度に鉄の弦が少しずつ塑性変形していたものと想像されます。幸い予備の弦を持ち合わせていたので、30分ほどかけて弦を張り直しました。
弦は切れても張り直せばほぼ完全に元に戻りますが、気のせいかこのところよく折れるジャックの爪(プレクトラム)の交換はそうも行きません。デルリンの爪を医療用メスで削り出すのですが、この数年来とみに老眼が進んだ亭主には結構辛い作業です。10年ほどの間に交換した爪の数はかなりのもので、素人作業の不揃いな爪による音のばらつきが気になり始めました。(根気も衰え気味なので、そろそろ専門の方に一度再調整してもらう時期かも。) ところで、昨日2月17日はコレッリの誕生日(1653年)に当たります。表題は、亭主が最近手に入れたCDに付けられたタイトルで、音楽の表意記号として訳せば「最大級の荘厳さをもって」とでもいうところでしょうか? 中身はといえば、コレッリに霊感を受けたヴィヴァルディ、ピゼンデル、タルティーニ、ヴェラチーニによるヴァイオリン作品を集めたもので、演奏は今やバロック・ヴァイオリンの重鎮とも言えるレイチェル・ポッジャーです。 ところが、ライナーノートを繰ってみると、演奏家のプロフィルはあるものの、いわゆる楽曲解説のような記事はどうも見当たりません。表題のすぐ下にある文章をみると、どうやら取り上げられている4人の音楽家を主人公にした空想の宴席(座談会?)のようなものでした。なかなか面白いので、初めの方を少し訳してみましょう。 AV:アントニオ・ヴィヴァルディ GT:ジュゼッペ・タルティーニ FMV:フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ JGP:ヨハン・ゲオルグ・ピゼンデル 情景:ヴィヴァルディ、タルティーニ、ヴェラチーニ、そしてピゼンデルが背もたれ無しの椅子に前屈みに腰掛けている。彼らは騒々しくまたほろ酔いで、特別なタイプの音楽家--ヴァイオリニスト兼作曲家--のために用意された天界の片隅で盛り上がっている。ここでは年に一度、第二月の第17日に彼らヴァイオリニストが集まって思い出にふけり、噂話や議論に花を咲かせる。彼らの議論は往往にして技術的な側面に及び、ボウイングのテクニック、装飾音、音響などが議論される。今宵はまた個人的な話にも耽っているところである。気安さに加え、どんどん注がれるワインに促されて話が弾んでいるところで、我々も挨拶を交わして仲間入りする。 AV:皆グラスを挙げて、さあ始めよう。 アルカンジェロへ! 他の面々:そして彼の作品5へ! AV:コレッリの作品集が我々にとってどれほど重要なものか、常に驚かされっぱなしだ。その形式から修辞まで、彼の音楽的な影響は我々の音楽に満ち溢れている。彼は本当に我々の音楽の創始者なんだ。それにしても作品5の出版を1700年まで待つとは何とズル賢い悪魔なんだろう—まるで新しい世紀の扉を彼の新しい音楽で開こうとするかのように。 FMV:コレッリの販売手腕には本当に驚かされる。俺は自分の作品1を1721年に出版してから、アルカンジェロへの応答作品集をかき集めるのに23年もかかった。俺のソナーテ・アカデミーシェ・作品2は、完全に彼の曲集をお手本にしている。彼に敬意を評して調の構造までも真似させてもらったよ!中でもト短調ソナタ「最大級の荘厳さをもって」は、コレッリの作品5の性格にものすごく負っているんだ。コレッリのヴィヴァーチェが持つ拍子の曖昧さに霊感を受けて、俺のカプリッチョのフーガ的主題は繰り返された8つの音で始まる—言ってみれば「これなら拍子記号を見破れないだろう!」。もちろん、作品2最後のソナタはアルカンジェロのフォリアへのご挨拶以上のものだ。それはパッサガッロとチャッコンナからできている。新世代の作曲家たちはこれら二つの言葉をますます合体させようとしている。 JGP:フランチェスコ、あんたのいう通りだ。お前さんの作品2が出版された1744年までに世の中はすっかり変わった。…(以下数ページにわたって続く) ちなみに、この文章を書いたのはMark Seowさんというお若い御仁で、詳しいことは分かりませんが、どうやらロンドンでヴァイオリンの修行しながら作家活動(音楽学者?)もしているようです。というわけで、こんなところにも新しい波が感じられます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 18, 2018 11:26:52 PM
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