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2018年11月11日
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カテゴリ:音楽
先週末、例によってバロック専門のネットラジオ局から流れる音楽をかけっぱなしにしながら家事をやっていたところ、ピアノでもなければハープシコードでもない楽器によると思しきバッハの平均律クラヴィア曲集第2巻(確か第13番のプレリュード?)の演奏が流れて来たところで、耳が釘付けに。急いでリモコンのバナー(テロップ)に流れている文字情報を確かめると、演奏者は何とあのカークパトリック、しかもクラヴィコードによる演奏とあります。とは言え、ネットラジオの曲はすぐさま全く別の音楽に切り替わり、それっきりになってしまいました。

これまで亭主は、幾つものクラヴィコードのCDを聴いてきたものの、どれもいま一つパッとしないものが多く、所詮はハープシコードに及ばない練習用の楽器という先入観が出来上がって久しいものがあります。ネットラジオで一瞬流れた印象的なクラヴィコードの演奏も、きっと何かの偶然でそう聞こえただけだろう、と家事に戻ることに。

ところが、その後だいぶ時間が経ったところで、またも同じ音源と思しき平均律クラヴィア曲集の別の曲がかかり、今度こそはそのキラキラした音に取り憑かれ始めました。早速ネットで調べたところ、カークパトリックが1960年代終わりにクラヴィコードで録音、アルヒーフから出ていたものであることがわかり、件の第2巻の中古CD(2001年に再販)をゲット。この週末に音盤を回し始めた途端、完全にハマってしまいました。



このカークパトリックによるクラヴィコード、1960年代という録音時期にも関わらず音響が大変素晴らしく、サルテリーあるいはハンマーダルシマーを思わせる輝かしい響きが(これらの音が大好きな)亭主を虜にします。(かけ始めた時は再生装置のすぐそばにいたのでセンタースピーカーからのモノラルっぽい音に聞こえましたが、少し離れると普通のステレオサウンド。)さらに、デュナーミク変化に伴うピッチの揺らぎ、というこの楽器特有の問題も全く感じられず、カークパトリックが文字通り完璧に楽器をコントロールしていることがよくわかります。

何しろクラヴィコードといえば、その「蚊の鳴くような」小さな音で知られる楽器ですが、いくらマイクロホンで拾った音とはいえ、これまで触れたり聴いたりしたことがあるクラヴィコードとは全くと言っていいほど違う明るい響きに圧倒されるとともに、この楽器に対する認識を一新させられました。

もう一つ忘れてならないことは、この楽器を繰るカークパトリックの名人芸です。あの一見単純な作りの楽器からこれほどのサウンドを引き出せるテクニックは、とにかく形容しようがないほど超絶的です。

嬉しいことに、このCDにはカークパトリック自身によるライナーノートが付いており、これまた大変貴重な文献となっています。その中でも特に興味深いのがPlaying the Clavichordと題された部分で、これを読んでいた亭主は往年の名ピアニストB. ミケランジェリの演奏スタイルに思い至りました。彼の演奏は「指がピアノの鍵盤に吸い付いたように離れない」ことで有名でしたが、カークパトリックはクラヴィコードを制御する上で重要なポイントとして、まさにそのような指と鍵盤の関係--指が鍵盤を離れない--を語っています。これはタンジェントのポジショニングがそのまま音響に反映されるクラヴィコードならではの特徴ですが、モダンピアノにも通じるということかも?(この録音で披露された超絶技巧の秘密もこの辺にありそう…)

ところで、ライナーノートの後半、A. バートン氏による解説記事によると、カークパトリックはハープシコードとクラヴィコードそれぞれで平均律クラヴィア曲集全曲の録音を行う計画を立て、まず第1巻のクラヴィコードによる録音を1959年に、続いてハープシコードで1963年に行い、第2巻は先にハープシコードで1965年に、そして1967年にこのCD音源であるクラヴィコードによる録音を行って完結させています。ちなみにこの演奏で使われた楽器はChallis clavichordとあり、おそらく米国の楽器製作者John Challis(Dolmetschの弟子筋)の手になるものと思われます。録音セッションも5月に2週間、6月にはさらに2.5週かけたとのことで、カークパトリックの並々ならぬ熱意が感じられるエピソードです。

こうなって来ると、やはりクラヴィコードによる第1巻も聴いてみたくなるもの。(第1巻はDolmetschによる楽器だとか。)このブログを書きながら、こちらのCDもネットショップでポチりました。

なお、ネットを検索している間に、最近になって(2018年9月)「ラルフ・カークパトリックの芸術」という25CDボックスセットが売り出されたことを知りました。どうやら今回取り上げた録音もこれに含まれているようです。(ただし、この手のボックスセットではライナーノートが欠落していることが多く、依然としてオリジナルCDの価値は小さくない気がしますが。)






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最終更新日  2018年11月11日 20時31分13秒
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