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カテゴリ:音楽
この週末、今年の9月にワルシャワで開催された表記コンクールのドキュメンタリー番組を見る機会がありました。コンクールの開催については昨年から話題になっており、日本人演奏家(川口成彦さん)が2位になったことも報道で知っていたので、実際にどういう楽器が演奏に使われたのかなど、イベントの詳細は大いに興味があるところ。
残念ながら、番組の構成はファイナリストの演奏を並べるといった音楽番組仕様ではなく、もっぱらコンクールに参加した何人かの演奏者(川口さんも含む)の人間ドラマを中心にしたもので、ピアノ演奏の部分は断片的(1回せいぜい10秒程度)、音もカメラのマイクで拾っただけのものが流れていました。とはいえ、プレイエルやエラールといったショパンの生前と同時代の19世紀中葉に製作された楽器が何台も並んだ様子はなかなか壮観で、短い演奏シーンからもモダン楽器とは全く異なる色々なピアノの響きが聞こえて来るという点ではそれなりに収穫がありました。 特に印象的だったのは、2位になった川口さんがピリオド楽器奏者として既に10年のキャリアを持ち、様々に異なるピアノの個性を弾き分けるとともに、その音色について実に能弁に語る様子です。番組でハイライトされた他の演奏家が、このコンクールをもっぱらキャリアアップの手段と見なしている(まぁ当然といえば当然ですが)のに比べ、彼がこの時代の楽器そのものに愛着を感じるとともに、その表現の大きな可能性を信じていることがよく伝わってきます。 亭主はかねがね、現代ピアノの世界が楽器という点でほとんど選択肢がなく、スタインウェイやヤマハに代表されるピアノの音色も(細かいニュアンスに差はあるものの)似たり寄ったりであることに不満を持っている一方で、ピリオド楽器のピアノというと18世紀の「フォルテピアノ」しか念頭になく、これらがハープシコードに比べて華がない上に、時として調整が悪いモダンピアノのようなイマイチな音であることから、これまでずっと敬遠してきました。 ところが、今回のコンクールの様子を眺めるにつけ、安川加寿子さんが若かりし頃留学先のフランスでエラールやプレイエルのピアノを愛用していた話を思い出すことに。今年没後100年を迎えたドビュッシーやラベルもこれらピアノの音を枕に音楽を紡ぎ出していたことを考えると、彼らの時代はまさにフランス・ピアノ音楽の黄金時代だったのだ、と再認識させられます。 これら19世紀-20世紀前半のピアノが「ピリオド楽器」という名の下に広く再認識されることで、ピアノ音楽シーンが多彩な音色の楽器で溢れるようになれば、これほど楽しいことはないでしょう。このコンクールがそのような展開の引き金になることを期待したいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 25, 2018 09:34:05 PM
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