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カテゴリ:音楽
キャロル・セラシの電脳空間追っかけを始めた亭主、先週までに入手できたのは、E.ジャケ・ド・ラ・ゲール(1998)、D.スカルラッティ(2012)、そしてF.クープラン(2018)のCDです。このうち国内の通販 (HMV) で入手できたのは後の2つ、彼女のデビュー音盤でもあるジャケ・ド・ラ・ゲールのCDは英国の通販ショップで見つけたもの。
セラシのCDはHMVのサイトでも大抵がリストに載っていますが、最新のF.クープラン以外は「取り寄せ」となっているものばかりで、いざ注文してみるとメーカー品切れで入手不可となってしまいます。その点、セラシの地元(?)である英国のショップはストックを持っているらしく、比較的簡単に手に入りました。(同じことが、例えばT.ピノックの音盤についても言えます。) これらの中でまず気になるのがF.クープランで、早速10枚組の最初の1枚を一聴。音響的な面も含め、亭主が持っているO.ボーモンの演奏よりも遥かにイケている感じですが、これを聴くと今度はスカルラッティのCDが大いに気になり始めます。そこで、クープランは一旦中断することにして、この週末はスカルラッティの音盤をじっくり鑑賞することに。 CDは1枚のみで、そこに収められている曲は、演奏順に K. 213 ニ短調 アンダンテ(III-8) K. 516 ニ短調 アレグレット(XIII-3) K. 517 ニ短調 プレスティッシモ(XIII-4) K. 87 ロ短調 (XIV-52) K. 247 嬰ハ短調 アレグロ(IV-12) K. 25 嬰へ短調 アレグロ(Esser.-25) K. 474 変ホ長調 アンダンテ・エ・カンタービレ(XI-21) K. 84 ハ短調 (XIV-49) K. 115 ハ短調 アレグロ(XV-18) K. 8 ト短調 アレグロ(Esser.-8) K. 30 ト短調 フーガ・モデラート(Esser.-30) K. 429 イ長調 アレグロ(X-12) K. 217 イ短調 アンダンテ(III-12) K. 175 イ短調 アレグロ(I-28) K. 113 イ長調 アレグロ(XV-16) という15曲です。(カッコ内のローマ数字はヴェネチア手稿の巻号、Esser.は練習曲集) 開封するなり即音盤をセットして再生ボタンを押すと、流れてきたのが何とあの物悲しいK.213のソナタ。意表を突かれてライナーノートの曲目を改めて眺めると、15曲のうち12曲までが短調のソナタで、まずそこにセラシの意図(例えば、「スカルラッティ=陽気な気まぐれ」といった先入観を打ち砕く?)を感じます。これは、スカルラッティのソナタ中ではそれほど多くはない緩徐なソナタ(アンダンテ、カンタービレといった速度記号がある)が3曲も入っていることとも符合します。 これらの演奏を聴いていてまず唸らされるのが実に鋭く的確な装飾音で、まさにフランス・クラヴサン音楽で鍛え抜かれたテクニックというところでしょうか。随所に繰り出される高速トリルなど、亭主には絶対に真似できない名人技です。 さらに、自在なテンポの揺れによるアーティキュレーションも素晴らしく、これまで何度も聴いたはずのソナタ群が新鮮に響きます。特に驚いたのがK.84で、彼女の演奏を聴くまでこのソナタがこれほどの「名曲」だとは夢にも思っていませんでした。(後ほどスコット・ロスやベルダーの演奏を聴いてみましたが、これらとは雲泥の差です。) テンポの取り方であっと驚いたのはK.30で、この「猫フーガ」として有名な曲を普通の演奏の1.5倍ぐらいの高速で弾いて見せます。ところが、このスピードで聴くと、これまで重なってこなかったフレーズの残像が次々に繋がり、以前とは大きく印象が変化することに。 特に最後の方で左手の並行8度のスケールが連続して盛り上がる部分は、最近亭主が「練習」しているセバスチャン・アルベロの「レセルカータ・フーガとソナタ」第1番(ニ短調)のフーガとまさに同じ構造であることに気づかされました。今更ながら、アルベロがこの猫フーガをかなり意識していただろうというアンドレアス・シュタイアーの言葉に納得。 というわけで、セラシの音盤、亭主のように「擦れた」スカルラッティ・ファンにもお勧めの1枚です。 【送料無料】 Scarlatti Domenico スカルラッティドメニコ / Keyboard Sonatas: Cerasi(Cemb) 輸入盤 【CD】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 12, 2020 09:19:25 PM
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