■2002/11/15 (金) ベルリン……
■2002/11/15 (金) ベルリン国立歌劇場 ~ バレンボイムとブラームス!ズービンメータ(Con) ダニエルバレンボイム(p)ベルリン国立歌劇場管弦楽団 Brahms Piano Concert 1&2今年2回めのブラームスのピアノコンチェルト。やっとやっとやっとロマンチックかつ壮大なこの曲の醍醐味を目の当たりにできた。なんと幸せなんだろう。高校生の時に論文の練習をしていたときに「一期一会」をテーマとした論文を書かねばならず、このピアコンと会った瞬間に恋に落ちてしまったときのことを(多少のこじつけを交えつつ)書いて珍しく誉めてもらったことを覚えている。このベルリンの夜、一生のうちたった一度たった2時間の至福のときとめぐり合うことができた。しかしダニエルバレンボイムには本当に舌を巻く。ベルフィルの首席指揮者をラトルと争うほどの実力指揮者。指揮者としての活動、ピアニストとしての活動、双方の練習時間をどうやりくりしているのだろう。まさしく脂が乗り切った時期(60歳)の演奏とはいえ、この難曲大曲2曲をいちどきに完璧なまでに圧倒的なまでに弾きこなすとは。正直言って夏に聴いたキーシンの演奏とはスケールの点で叙情性の点で比べ物にならなかった。もともと自身が音楽監督を務めている楽団との競演であり、かつ大親友(かのジャクリーヌデュプレも交えた時代から)メータ指揮ということで、この上ないメンバーとの演奏であるとはいえ、「ピアノが入った交響曲」とまで言われるほど、重厚なオケの演奏にピアノを引き立たせるのは難しい曲。その曲をキーシンは「オケとの戦い」という様子で弾いていたのに、このバレンボイムはコンチェルトの所以たる「オケとの協奏」で余裕たっぷり弾ききったのだ。CDでは聴こえてこなかった魅力的な管楽器とのかけあいがこんなにいっぱい入った曲だったのかと目を開かせられる部分がたくさんあった。高校生から聞き始めておそらく100回以上は聴いているこの曲の美しさを改めて見つけることができた。各楽章詳しく書きたいと思うのだが、興奮の一夜だったためこうして紙にむかうと何も書けない。この前プロムスでキーシンの演奏を聞いたとき、「30代そこらで大好きなこの曲の一等級の演奏を楽しんでしまってはあとの楽しみがない」と書いたが、どうやら今宵楽しんでしまったようだ。でも、素晴らしき一期一会を楽しんだ後も、次の「一期一会」がきっと待っている。ブラボー BERLIN!!16日 朝からWalking Tourに参加しようと思ったのだけれど、朝食Buffetを食べすぎて少し重かったので翌日にそれはまわす。そしてショッピングに。Zoo駅のほうにかけてショッピングストリートがあるのでそこを散策。デパートではクリスマスまっさかりで、オーナメントを年末帰りのおみやげに大量購入。駅前の広場でもどこでもそこかしこに、まだオープンしていないもののクリスマスショップが丸太で組まれていて、妙にリアルなサンタさんがあちこちに立っている。ドイツのクリスマス飾りはとっても素朴でいいなあ。2年前の冬 ハンブルグにいったときにも思ったけれど。安売り酒店でワインも2本購入。最近大陸に旅にいくたびにワインを2本買ってくるのに、それなのにうちのワインラックはいつもがらがらだ。ああ、ワインをあと余計に3本買えるように荷物モチの彼がいればいいのに・・一旦荷物を置いてから、ユダヤ人博物館に行く。ここはどうしてもいってみたかった。というのも建築に詳しい友人が、「リーベスキントの最高傑作。建物構成自体が展示物」といっていたため。なるほどみるからに斬新だ。斬新な建物の多いベルリンの中でも際立って斬新だ。中に入るとまず「亡命の軸」「ホロコーストの軸」などの「3つの軸」が交錯した空間が開ける。戦争が本格化する前に国外に留学し命拾いしたユダヤ人学生の母親からもらった刺繍の入ったタオルが真新しく展示してあったり(もちろんこの母親は収容所で亡くなったのだけれど)、一つ一つの写真や思い出の品とともにそれぞれの家族のエピソードが淡々と書いてある。ホロコースト現場の写真よりも胸に応える。ホロコースト軸の末端にはドアでさえぎられた空間があり、ドアを開けると、5メートル以上もある壁に囲まれた暗い空間。空が見えるものの、到底よじのぼって超えられる高さではなく、外気に剥き出し。リーベスキントはこの空間を通して、捉えられたユダヤ人の「外界と通じていながら、外界に出られない」苦悩を表現したかったそうだ。このほかにも銅版でつくった単純化した人の顔が枯葉のようにしき詰められている空間も、モノと扱われ無造作に積み上げられた死体を想像させ、おそろしい。この3つの軸の空間の展示資料を丹念に見て、2階3階のユダヤの歴史を年代ごとに展示したコーナーに移ったのだが、ここで大間違い。手順としては3階でユダヤ太古の歴史からずっと年代を遡り、2階でホロコースト後そして現在のコーナーに行き着くのだけれど、それに気付かず、いきなり2階から入ってしまった。1930年代くらいから始まり、暗黒の時代の暗い展示をじっくりと見て気分が暗くなり、現代に至り「見学終了」と思ったところで、廊下の→が私の進行方向と逆を向いたものがあることに気付いた。それを辿ってみると、あらら1930年からどころか、もっと前の展示があるじゃないですか。がっくり・・・ 次のコンサートの予定がつまっていたこともあり、「ユダヤ太古の歴史から遡るの巻」は次回のベルリン旅行に取っておこう。感動のベルフィルコンサート(これもまた「音楽」のページ参照)後、今回のベルリン訪問のもう一つの動機である、「屋台ラーメン」に向かう。「ベルリン通信」というメールマガジンは様々な角度からベルリンを紹介している優れたマガジンなのだが、そこに「ココロ ラーメン 週末の夜 突如としてベルリン内カフェに出現。本格的屋台ラーメン」の情報が出ていたのだ。ロンドンに来て以来ラーメン屋は網羅したが、いまひとつどころかいま5くらい。直近でおいしいラーメンを食べたのは昨年末。猛烈においしいラーメンに飢えていた。週末の夜限定 場所も神出鬼没 日本で10年修行。いかにもおいしいそうじゃありませんか!!で、これを食べにベルリンミッテへ。駅を降りると何にもなくって、開店の8時までまだ2時間もあるのにどうしよう、と思ったけれどでたらめに歩いてみると、あるある面白そうな場所が。この地域は最近流行りの場所らしいけれど、何てことは無いフラットの中庭の奇妙なオブジェが電灯に照らされてなんともいえぬ雰囲気を出していたり、カフェや料理屋もいい味を出している(ああ、おなかが二つあればいいのに)。大きなアパートの1階2階にセレクトショップが建ち並ぶところとか見歩いているうちに、あっという間に8時。通りを曲がったところから、匂いが立ち上る・・・ロンドンではこうした匂いの立ち上るラーメン屋が皆無。赤や紫のネオンがきらめくカフェバーの中に見えた赤いのれんとちょうちんが。「お席はどこでもどうぞ」と言われ、屋台カウンターではなくカフェバー内のソファーに陣取る。塩がなかったのが残念だけれど味噌を注文。ほどなくしてやってきたラーメンは麺が4点、スープが8点、具が10点(味付き卵の半熟さ加減などすばらしい)といったところ。でも間違えなく日本以外で食べたラーメンとしては一番だ!食べているうちに、ベルリンなんていう欧州の街でちょっとアングラ風のカフェでラーメンをすすっているということに、とても違和感というか、「世の中どんな取り合わせもありだな」といった感慨をもってしまった。■2002/11/16 (土) ベルリンフィルホールBernard Haitink (Con)Renaud Capuçon (Vi)Webern Passacaglia op. 1Korngold Violin Concerto in D Major op. 35Brahms Symphony No. 1 in C Minor op. 68今年2度目のベルリンフィル。たった2ヶ月でこの世界最高の楽団の音楽が2度も楽しめる幸せ!そして曲目はブラームス1番(先月もライプチッヒ ゲバントハウス の同曲を堪能したばかり)。初めて訪れたベルリンフィルのホールは、この黄色のカラーはいかがなものかと思うけれど、全体としてお星様のような形。ステージの裏、側面にも上まで多くの席が設けられている。ストールは平面的だが、2階、3階は小さい区画に壁で刻んであって、それぞれの区画の音響を高めるよう構成されている。音響に疎い私にはあの素晴らしい圧倒的な音量がオケの技術によるものか、ホールの音響も一役買っているのかは厳密にわからないけれど、ソロの音の引き立ち方がしょぼいロンドンのホールとは全く違う。管楽器のソロとしての圧倒的な表現技術力を持っているベルフィルを一段と楽しめるホールであることは間違いないだろう。本日は3曲。はじめの曲は印象が薄かったものの、2曲目のKorngoldのバイオリンコンチェルトは初めて聴いたけれど、面白く美しい曲だった。多少安っぽく聞こえるメロディーが含まれているのが気になるが、若々しいバイオリニストの情熱でカバー(Korngoldはドイツ出身の19世紀後半~20世紀の音楽家。後にハリウッドに渡ったと書いてあったので、そこらへんが出てるのかな)。そして、ああ4楽章にまたしても泣いたブラ1!この前のライプチッヒも素晴らしくドイツ的だったが、本日のベルフィルもまさしく。ソロのパートはやはりベルフィルの方が聞かせるけれども、あの4楽章の全体演奏のところはもう彼らドイツのオケにしか彫れない深みだろう。ハインティンクはロンドンで結構見る機会が多いため、印象がいつも薄まってしまうのだけれど、ブラームスに本領発揮。ブラームスの4つの交響曲はどれも素晴らしく、聞かせどころ泣かせどころが多く、構成も練りに練ってある。特に彼のチェロの持って来かたは非常に上手い。ベートーベンの7番もマーラーの交響曲も好きだけれど、私はやっぱり「人間」ブラームスが好き。