産経新聞・東海新報社・・・陸自撤退に「良く頑張った、政府はこの頑張りを無駄にするな」、朝日新聞「結果オーライとはいかん」
6/21付産経新聞主張■【主張】イラク陸自撤収 治安任務が今後の課題だ 小泉純一郎首相が記者会見で、イラク・サマワに派遣されていた陸上自衛隊部隊の撤収を発表した。サマワのあるムサンナ県の治安権限が多国籍軍からイラク政府に移譲されたことなどを踏まえ、首相は「陸自の活動は一定の役割を果たした」と説明した。「一定の役割」どころか、イラク復興に多大の貢献をしたと評価したい。 イラク特別措置法は「(首相などが)自衛隊の安全確保に配慮しなければならない」(9条)とうたっている。治安維持を他国に委ねるしかない現状では撤収はやむを得ない。 自衛隊は友軍がテロリストに攻撃されても排除するための実力行使は許されていない。政府の憲法解釈は、武力行使と一体化するとみなされる行為は許されない、としているからだ。 だが、こうした制約は国際社会の共同行動の足を引っ張りかねない。そもそも任務遂行を妨害する行為を排除するための武器使用は国連の基準であり、憲法が禁じる武力行使ではないのだ。日本が国際社会の責任ある一員であろうとするなら、治安維持の任務を他国に押し付けることはできない。 小泉首相は、自衛隊の活動を国際レベルに近づけるなどとする「恒久法」制定は次期政権の課題と語ったが、任期中に道筋をつける努力を払うことこそ、「小泉流」ではなかったか。 一方で普通の国の軍隊の権限が与えられていない陸自の2年半の活動は称賛に値する。1人の死傷者も出していない。精強さ、勤勉さに加え、現地の人たちと同じ目線に立つなどして信頼を勝ち取ったためである。 サマワの新生児死亡率はこの2年間で3分の1に減った。陸自が汚れたユーフラテス川の水を浄水・給水し、医療支援を行ったのが一因だ。こうした成果は日本の誇りといっていい。 ただ、撤収は攻撃対象になりやすい。住民の中には陸自部隊に過大な期待を抱いている人が少なくなく、不満が向かうことも予想されるからだ。 政府はサマワに火力発電所(約127億円)を建設するなど政府開発援助(ODA)活用に腐心しているが、撤収後も復興支援は変わらないことをイラク側に具体的に示さなくてはなるまい。無事の帰国のためにもこれからの支援、協力が重要である。東海新報社世迷言☆★☆★2006年06月21日付 イラクのサマワに派遣されていた陸上自衛隊の撤退が決まった。まずはご苦労さまでしたと敬意を表したい。派遣から二年半。交代はあったからといって、隊員たちの苦労は想像を絶するものがあったろう。その重大任務から開放されて、ようやく故国の土を踏むことができる▼派遣時にそれこそ賛否両論が渦巻いたのは、危険地域であること、最小限の武器しか持ち込めないことなど、平和になれたわが国ならではの戸惑いがあまりにも強かったためだ。戦争を経験したことのない軍隊(ここでは自衛隊のことだが)が、はたして死傷者も出さずに無事任務を完遂できるかどうか、という疑問は反対派ならずもまずは抱く▼しかし多くの自衛官は武人の本務として潔く任地に赴いた。派遣反対の論調を掲げるメディアの中には、本人や家族から「行きたくない、行かせたくない」という本音を引き出そうとしたが、徒労に終わった。自衛隊とは、国を守るという崇高な使命を帯びた集団であり、ノブレス・オブリージュ(犠牲的使命感)という意識がなければ務まらない職務である▼鉛筆一本でおまんまを食える人間とははなから覚悟が違うのだから、「こわい、行きたくない」などという答えを期待する方が無理なのである。武士道は健在であった。サマワでは、彼らに対する信頼が大変厚いことを派遣隊長の一人のインタビューで知ったが、さもありなんと思った▼復興支援に危険も省みず来てくれて、インフラ整備や給水活動にあたり、しかも規律正しく、礼儀正しい彼らが「嫁を世話するから残ってくれ」というもてようだったのはその証拠だろう。帰国するまではまだ安心できないが、隊員たちが汗を流した重みがいつか必ず結実する日が来る。 6/21付朝日新聞社説自衛隊撤退 結果オーライとはいかぬ いつテロ攻撃を受けるかわからない緊張の日々。炎暑と砂嵐。イラクのそんな厳しい環境に耐えてきた陸上自衛隊に、ようやく撤収命令が下った。 米政府高官の「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊の派遣を)という要請で始まった初の戦闘地域への陸自派遣は、2年半の仕事を終えることになる。航空自衛隊は残って、引き続き輸送業務などにあたる。 これまで自衛隊には1人の犠牲者もなく、銃撃戦もなかった。そのことにほっと胸をなで下ろす人も多いだろう。撤収には別の危険も伴う。最後まで気を抜かず、安全に万全を尽くしてもらいたい。 武力攻撃を避けられたのは、現地部隊の細心の努力があったからだ。駐留したムサンナ州の治安の良さも大きい。それでも宿営地に迫撃弾を撃ち込まれたり、自衛隊車両が通る道路で爆弾が破裂したりしたこともあった。死傷者が出なかったのは幸運だった。 イラクの全体状況はといえば、治安はいっこうに良くならず、宗派対立は厳しさを増すばかりだ。それでも、曲がりなりにも新政府の発足にこぎつけた。日本の自衛隊派遣と復興支援がそうした再建に貢献したという見方もできる。小泉首相が「一定の役割を果たした」と胸を張る理由もそこにあるのだろう。 だが、その実態は要塞(ようさい)のように守りを固めた宿営地の中で給水活動をしたり、現地の人々を雇用して、学校施設などを復旧したりすることが中心だった。隊員の安全を最優先したからだ。 そこまでして駐留にこだわったのは、国際社会で批判を浴びている米国を支える「同盟の証し」を示すためだった。 米ブッシュ政権が評価するのは当然だ。しかし、開戦理由とされた大量破壊兵器は存在せず、戦争の大義は大きく揺らいだ。そんな戦争を支持し、占領の一端を担ったことで、アラブ世界では日本への失望を招いた面も忘れてはならぬ。 何よりも根本にある問題は、海外で武力行使はしないという憲法の原則のもとにある自衛隊を、戦闘状態が終わらないイラクに派遣したことだ。 「非戦闘地域」という、針の穴にラクダを通すようなきわどい法解釈で自衛隊を送った。戦闘状態に巻き込まれれば、すぐに崩壊しかねない法的根拠である。 そうした事態が今までなかったのは幸いだが、もしもの場合にどうなっていたか。既成事実の後追いで憲法を考えることがあってはならないはずだ。 新たな業務として首都バグダッドやイラク北部への空輸を行う航空自衛隊は、引き続きその危険にさらされる。陸自がいなくなれば、多国籍軍への支援という側面がいっそう前面に出ることになる。陸自とともに撤退させるべきだ。 米戦略とますます一体化するという自衛隊が、第2のイラクに安易に派遣されることがあってはならない。陸自の派遣が終了することで「結果オーライ」と安堵(あんど)するわけにはいかないのである。私も派遣当初は反対でした。しかし、国民世論はそれを止めず(止めれなかっただけかもしれないけど)国民が選んだ政治家が「国益になる」と判断して送り出したのだ。少なくとも自衛隊隊員に関係する人たちは、そうだと信じて送り出したはずである。確かに朝日の言うとおり、法の解釈に関してはかなり無理がある。それでも、何より先に「ご苦労様でした。」といってやることが、日本人にとって最低限の礼儀だと思う。それとも朝日新聞記者は日本人では無いのかも知れないね。内に厳しく、外に優しい人ばかりだしね。ジャーナリスト宣言とは恐れ入ります。