2 タコスの味の巻

ロスに着き3日程経った後、俺たちはサンディエゴまで電車を使い、サンディエゴから国境の町、ティファナへバスで向かった。
これがとてつもなくボロっちぃーバスだった。
車内は落書きだらけであり、窓ガラスも所々割れている。
しかし、ラジオからエアロスミスの『Sweet Emotion』が流れ出した時は、そんなバスに乗ってることでもなんかカッコよく思えた。
ティファナは独特の空気が流れていた。
六感的に危険を感じた。空気が重い。
この町は実際、メキシコからアメリカへ不法入国する人が数多くいて事件も多いらしい。何年か前に日本のある電気メーカーの社員が殺されたのも、このティファナである。
と突然「ナカソネー」「カラテカー」「アメヨコヨリヤスイネー」などと言ったチョー片言の日本語が俺たちに浴びせかけられた。宝石店や雑貨屋なんかの客引きである。
誰だよ!こんな日本語教えてるのは!とも思ったが、こんなの序の口だった。
中には俺たちが通りを立ち去るまで永遠と「ロッポンギー!ロッポンギー!ロッポンギー!」と一人吠えまくってるおじさんもいた。「ちょっと買ってってくれよー」とでも言ってるつもりだったのだろうか訳が分からなかった。間違って喋ってるインコでも見ているかのようだった。
俺たちがサンディエゴからいよいよ本格的に南下し、ロスモチス行きのバスをバスセンターで待っていると、タコスの屋台が目に飛び込んできた。
「いよいよタコスデビューだぜ!」と二人ではしゃぎ、さっそく買って食べてみた。
辛い!辛いものが好きな俺でもそう思うぐらいだった。ビックリ人間でも食べないんじゃないかと思うぐらい本当にメチャクチャな辛さだった。(ただしメキシコのタコスが全部辛いわけではない)
しかし本当は辛いものが大の苦手であるはずの友人が隣で「うめーよ。これ」とか言って食いやがっていた。何が彼にそう言わせたのかは今もって謎なのだが、俺はうっすら涙を浮かべていた奴の顔を見逃さなかったし、今でも覚えている。
ということで、今日はこのへんで寝ることにする。


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