変動し進化する地球に我々生命は生きてきた
「あたしが此のまま海に沈んでも 何一つ汚されることはありませぬ」という椎名林檎の依存症という唄の歌詞が頭の中でループしているので何でかなと自分の思考を探ってみたら面白いキーワードつながりになっていた。現象学の本では「世界を認識する自分が居なくなれば世界は存在しなくなる」とするが、まるで禅問答の「切り倒した木の音を聞く人がいなければ、そこに音は存在しない」という考えと似てはいないか。私がこのまま海に沈んでも、世界は何事もなく動き続ける。私にとっての世界は消えるが他者にとっての世界は行き続けるからだ。椎名林檎は現在「東京事変」というバンドのボーカルとして活躍しているが、先日初めて聞いた専門用語「海洋無酸素事変」がキーワードとなり一連の連想を生み、その結果が「あたしが此のまま海に沈んでも 何一つ汚されることはありませぬ」だったらしい。私はなんて単純なんだろう。この曲は、もう長い間聞いていなかったのに、引き出しが空いた途端に私の頭の中にどっかりと座り込みだ。さて、「海洋無酸素事変」という言葉を説明しろと言われると困る。第3回ボディワーク講習会で生まれて初めて聞いた言葉だ。先日は、「変動し進化する地球に我々生命は生きてきた」というテーマで、外部講師の方を招いて講義していただいた。「海洋無酸素事変」2億5千年前に地球に起こった大量絶滅の原因とされる出来事に関連している。スノーボールアースという、地球全体が氷に覆われるイベントにより、地球の温度が大きく変動し、その結果海流に変化がおき、生命の爆発的な進化が進んだ。そして、光合成生物により、それまで二酸化炭素のみだった大気の組成が変えられてしまった。それが「海洋無酸素事変」だ。海面の低下により、有機物が海上に露出することになる。露出した有機物は酸素がどんどん利用したため、地上は無酸素になり、海洋生物種の90パーセントが絶滅したという。大量絶滅については、「プルームの冬」と呼ばれる2億5千年に一度の割合で起こる大規模なマグマの爆発説もあるらしい。今、懸念されている温暖化についてはとても興味深い研究結果がでている。デイジー(ひなぎく)が増加する割合と温度の統計だ。ひなぎくを、温度を変えて栽培すると、ある一定の温度でひなぎくの密度が安定する。温度を上げていくと、段々密度は増えていく。密度が飽和状態まで来ると、ひなぎくは淘汰され、数が一気に減る。淘汰の後でデイジーの密度が安定するのは、最初に安定を示した温度よりもずっと低い地点となる(この研究にはアルベルトと呼ばれる太陽の反射率も影響するが、ここではその説明は省く)。淘汰の後に来る、安定。新ドライアス期(13000年前)には、温暖化の最中に急激な寒の戻りがあり、北米の氷床解凍によって海洋大循環が起こったことが原因で、絶滅が起きた。だが、現在私たちは生物は、地球上で生を営んでいる。種の絶滅のスピードは、非常に早いといわれている。そして、それは人間の活動によって引き起こされている。人間が絶滅する運命にあるのかどうか、それはわからないが、人間が絶滅しても、他の種が増える。「地球の長い歴史を考えると、人間は地球の主役ではないようだ」という講師の言葉がとても印象的だった。地球の歴史から見れば、人間の歴史は365日分の1秒。私たちの後ろには46億年という時間が存在し、この先も創造を絶する長いときが生物を待っているのかも知れない。地球科学という分野はほとんど未知の分野だったので、正直難しかった。でも、そのくらいが丁度いいと思う。知っていることを講義してもらっても知識にはならないし、自分が関わる分野や、それ以外の簡単な知識なら、ちょっと本を読んだりテレビを見たりすれば手に入る。でも今回は、研究のテーマや海外で調査中の写真などの貴重な資料と、講師のプロフィールなど楽しめる部分を盛り込んだスライドで見せていただいた。面白難しい講義だった!講師は東京大学で「地球惑星科学」の研究をされているHang dogさん。「変動し進化する地球に我々生命は生きてきた」というタイトルで講演してくださった。ありがとうございます!