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カテゴリ:思想
アクエリアスの時代と呼ばれ、ニューエイジムーブメントと名づけられた新しい考え方が受け入れられた80年代。「わくわくすることを選びましょう」「感じることを大切にしましょう」「愛しましょう」「地球はひとつです」というメッセージが、宇宙生命体から送られてきたとされた。「スピリチュアルな世界に身をおきましょう」という、たましいの充足を促すメッセージで溢れかえっていた。
バブル以前から勢いを見せていたファストフードが日常食となり、迅速に効率よく顧客に商品が手渡されるようにマニュアルが出来た。マニュアルの導入により、従業員の質も、低賃金で一定に保たれるようになった。 ご他聞にもれず私もニューエイジムーブメントの洗礼を受けた一人だ。20代前半はアメリカの西海岸(オレゴン州)で学生をしていたが、時はフラワーチルドレンのチルドレンブームで、東洋思想や宇宙からの啓示に興味を示す西洋人に囲まれていた。東洋的な神を唄うミュージシャンたちや「nirvana」というバンドが出てきた時代でもある。マイノリティは熱心に自分のルーツを主張しはじめ、モスリム教へと改心するアフリカン・アメリカンが多く見られた。白人たちは、インディアンの混血であることをカミングアウトすることで現住民族に対する敬意を払っていたが、この裏にはある種の罪滅ぼしの気持ちが存在していたように思う。 時は流れ、2000年も半ばを過ぎた。ニューエイジムーブメントを、「わくわく」や「正直」や「自分の感覚」を大切にして精一杯生きてきた人たちの本音は「スピリテュアルな世界なんてない」だろうと思う。私たちが生きているのは「普通の日常」の世界で、スピリチュアルな世界など、存在しない。人それぞれの世界があるだけだ。あちらに行っても、こちらに行っても、スピリチュアルな世界は存在しないし、本当の自分なんて見つからない。ここにいて、迷っているのが本当の自分だ。オーラが見えたって、遠くに離れている人のエネルギーをキャッチできたって、日常に生きていることに変わりは無い(私自身のことだ)。たましいを美しくというのは、何を意味するのか?今の自分を、地道に正直に生きることにつきるだろう。折しも某ソーシャルネットワーキングシステムで「自分探しに疲れ、現実を見ていこうと生きています」というプロフィールを拝見して、ああ、同胞がいるのだと共感を覚えた。 そういう意味で私たちが学んだのは「他者のメッセージ~それがどんなに心地よく響いたとしても~を他者のものと知り、検証しなさい」だったと思う。心地よさに踊らされて、結果地に足が着かない状態で今を生きている人々が多く居る。ボディワークはこれまで自分探しのツールとされてきたが、むしろ自己と現実の再確認のワークだと私は捉えている。 メッセージをマニュアルのように捕えて生きてきた結果、自分探しを永遠と続ける人になるのは悲しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.03.28 13:45:35
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