美味しいワインと出会う旅

2007/07/08(日)00:38

世界のワインのベールを取った男

ワインについて(92)

パーカーさんもまだあまり有名で無い頃2度お会いした事があります。本人も今の様なゴットに成るとは全く思っていない、研究熱心な変ったアメリカ人と言った感じでした。その当時は、今まで秘密だったクロ・ド・ヴージョの全90区画を暴く人がいたり、ボルドーのシャトーの全区画を載せた本が出版されたり、70年代~80年代はフランスワインのベールが開く時代でもあったのです。私も興奮してその手の地図のコピーを手に入れました。 いつの間にかパーカーさんは世界のワインの価格を動かす神と呼ばれる人になります。1982年の予測が当って有名になった後の1985年位からでしょう。その後はフランス以外にも評論を広め、95点以上のワインの値上がり、99や100点を付けたワインは確実に3万をフランス物なら10万を越える様になって行きます。試飲スタッフも7名に増えました。パーカーの評価は凄いと時々思います。彼の95点以上のワインは本当に複雑で深遠な世界に浸れるワインです。当然熟成期間も長く、それでいて比較的早く飲んでも美味しいワインを選んでいます。そして誰も知らないワインにでも95点以上を付ける勇気がまた凄いです。たとえ値段が安くとも、無名の作者でも気に入れば高得点を付ける、これは余程の自信が無いと出来ない事です。日本人には特に苦手な事です。グローバルで一切の広告を取らずに、自分の舌一本で評価者としての地位を此処まで築き上げるとは思いませんでした。非凡な天才だと思います。   パーカーは個性をオリジナリティーを認めようとしています。これは大事な事で世界中でボルドー、ブルゴーニュ、を代表とするフランスワインの真似をしても世界が広がりません。ワインと言う世界が狭い物になってしまう。この事を彼は直感的に恐れているのだと思います。世界中でボルドーブレンドを作ってブラインドで世界一を競い、フランス、イタリア、カリフォルニア、オージーでその頂点を競っても意味が無いという事を彼は知っていると思います。一頃実際にそう言う流れがあったのです。オージーにはオージーのテロワールを生かした、オージーらしいワインを作って食文化を広げたいと言うのがパーカーの考えだと思います。   ワインの味のバラエティーが広がると言う事は、料理の味の世界を広げる事にもなります。ワインはガストロノミーの中心ではなく脇役ですが、重要な地位をしめています。酒が先が料理が先か、鶏と卵の様な関係にあるのです。  ワイン産業の相場師として無くてはならない存在です。   何故こうなったかは彼の哲学による物だと思います。彼の哲学がグローバルに認められ、必要とされていたからに他ならないと思うのです。   多くの評価本が出ていますが、世界中のワインを同一基準でポイント付けているのは唯一パーカーのみです。例えそれが多少片寄った意見であっても何時も一定の片寄りなので使う方にとっては問題ないし便利です。  パーカーのポイントと評価で全く知らない土地のワインを買う事が出来ます。知らない土地の高いワインは怖くて買えませんが、買えるようになったのです。チリや南アのワインでもパーカーのポイントがあるので1万円や2万円のワイン買ってみようと思う人が出てきます。情報が無かったら絶対に南半球の1万円以上のワインは国際社会で買う人は出てきません。 5000円でも買わないでしょう。これは凄い事です。   世界のワインのベールを取った男、それがパーカーなのだと思います。  

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