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無尽の鎖 第3話

無尽の鎖 第3話「短い入院 ―The scrap of the memory―」
作者 倉麻るみ子(PN&HN)

・・・グサッ・・・!

その刃物は、迷う事無くラルドの腹に突き刺さった。
ラルドの口から、血が流れる。
そして、吐血する。
周りが悲鳴やら何やらで騒がしくなる。

カイン「ラルド!」

カインは、ラルドの元へ行こうとした。
だが・・・、

ラルド「来るな!カイン!」

刃物が突き刺さったまま、ラルドはカインを止める。
ラルドは、目の前に居る男を勢い良く押し退け、自分の腹に刺さった刃物を抜き取る。

ラルド「・・・こんなものを使って、・・・自分が勝った気になっているとはな・・・。
・・・貴様、・・・弱い・・な・・・。」

息の荒い呼吸をしながら、ラルドは男に向かって言う。
ラルドの腹からは、夥しい血が流れている。
そして、男に向けて片手を翳し、真空波のようなもので男を吹き飛ばす。
飛んで行った男を走って追いかけ、そしてジャンプをし、男を殴り付け地面に叩き付けた。
ラルドは、ストッと着地をし、倒れている男に近付き、胸倉を掴む。

ラルド「貴様!今度あんなことして見ろ!こんなものでは済まさんぞ!!」

男はおびえて、盗んだ財布をラルドに手渡し、そのまま走って逃げて行った。
ラルドは、一息付いてそのまま倒れる。
それを、カインが支える。

カイン「大丈夫・・・じゃねぇよな。待っていろ、今病院に連れてってやるからな・・・。」

カインは、ラルドが取り戻した財布を「これ持ち主に返しておいてくれ」と言いミラルに渡し、この商店街から一番近いと言われる病院へと走った。
ミラルも、財布を持ち主に返し、カインの後を追った。


―数分後―

ここは病室。ラルドの部屋。
ベッドでラルドが小さな寝息を立てて眠っている。
そして、ようやくラルドは目を覚ました。

ラルド「・・・ここは?」

ラルドは起き上がり、辺りを見回す。

ラルド「ぅ・・・、」

腹の傷が、多少痛むのか、ラルドはうずくまる。
と、そこに花瓶の花の水を換え終わった、カインとミラルが病室に入ってきた。
うずくまっているラルドをみて、慌ててそばによるカイン。

カイン「馬鹿!まだ寝ていろよ!!」
ラルド「・・・すまないな・・・。」

再び横になるラルド。

ラルド「お前が、私をここまで連れて来てくれたのか・・・?」
カイン「あぁ・・お前さ、身体軽いから、すぐに着いたんだ」
ラルド「・・・そうか、・・・ありがとう・・・。」
カイン「良いって事よ♪」

そして、ラルドはもう少し寝ると言い、再び眠りに着いた。
その寝顔を見つめる、カインとミラル。

ミラル「寝顔も可愛い~(≧∀≦)」
カイン「ミラルって、ホント可愛い物好きだよな。」
ミラル「な、何よ。・・・いけない?」
カイン「フフ・・・、別にww」
ミラル「もぅ・・・カインって訳わかんない・・・」

しばらく沈黙の時間が流れる。
すると、ラルドが突然目を覚ます。

ラルド「お前たち・・・家に帰らなくて良いのか?」
カイン「ぅ・・・ぅえ?」
ラルド「家の鍵、かけていかなかっただろう・・・?」
カイン「え!?・・・あ、そうだった!早く帰んないと!」
ミラル「でも、盗られる物なんてないじゃない。カインの家。」
カイン「って、もしかしたら、空き巣とかに遭っているかもしれないだろ?」
ミラル「考えすぎ。空き巣事件なんてこの辺起きてないでしょう?」
カイン「・・・確かに・・・。」

セルビアの治安が少しずつ良くなっているという印だが、カインに今のミラルの一言は少しグサリと行った。

ラルド「そういえば、カインの家の中、まだ見たことないな。」
カイン「そっか、あん時のまま、商店街に来ちまったもんな。」
ラルド「退院したら、中を見せてもらうぞ。」
ミラル「見ても、得するものはないけどね。」
カイン「あ、こら。それは言わない約束だろ!?(´□`;)」
ミラル「だって、カインの家、入ったらいろんな物が散らかっているんだもの。
この前片付けてあげたのに、その次の日になったらもう散らかっているのよ!」
ラルド「・・・。」

ラルドは、その様子を頭に浮かべる。
そして、すこしあきれた顔をする。

ミラル「ラルド君、きっとあなたの想像通りかもしれないわよ?」
ラルド「・・・少し、入りたくないような気がする・・・。(--;)」
カイン「何だよそれ!!(`Д´)」
ラルド「ははは・・・じょ、冗談だ・・・(^^;)」

冗談ではないのに、焦ってその言葉を取り消す。
すると、病室に医師が入ってきた。

カイン「あ、先生!どうなんですか?」
医師「大丈夫。あと一日休めば完治しますよ。」
カイン「そうですか・・良かったな、ラルド。」
ラルド「・・・ぁ、ああ・・・。」
カイン「どうしたんだ?」
ラルド「いや、こんな傷を受けておいて、あと一日と言うのは、少しおかしいと思って。」

医師「ぼくも驚きだよ。普通なら、あと1、2ヶ月ほどかかるんだけど、君の場合、回復力が非常に高くてね。
・・・傷を塞ぐ時には、傷が小さくなりつつあったんだ。
さすが、ドナウ川のダムを崩壊させる程の力を持っているだけの事はある。」

それを聞いたカインは、「え?何でラルドのことを!?」と、驚きつつ医師に問う。

医師「当たり前だよ。その時に僕は現場にいたんだからね。」
ラルド「カイン、1つ聞きたいんだが・・・、何故、お前は私のところへ来たのだ?」
カイン「そりゃ、最近行方不明の人がいるからさ、ホントかなぁって。」

ラルドは大きくため息をついた。

ラルド「(馬鹿馬鹿しい・・・。)」
医師「とにかく、明日一日休めさえすれば、退院は確実だよ。」

医師はそういって「それじゃ」と言って、病室を出て行った。

カイン「そんじゃ、俺らもいったん家に帰るからな。明日になったら迎えに行くからな。」
ラルド「あぁ・・・、わかった。」
ミラル「それじゃね、ラルド君(^o^)」

二人も、病室から出て行った。

ラルド「・・・はぁ、・・・また一人か・・・。・・・ん?そこに居るのは誰だ?」

ラルドは、ある気配に気づく。

???「ラルド・・・、せっかく封印が解かれたんだ・・・。また僕らと一緒に行こうよ。」
ラルド「断る。私は、世界など壊そうとは思わない。・・・というか、そこに居るのはわかっているんだ。隠れてないで出て来い。」
???「それはお断りしとくよ・・・、どうせ出て行ってもボクの事は覚えてないだろうしね。」
ラルド「・・・?」
???「まぁいいや、とにかくまたどこかで会おうよ。じゃぁねぇ~。」

その気配は、消えていった。

ラルド「一体・・・・あいつは、何者なんだ・・・?」

ラルドは一人ポツリと、呟いた。

第4話に続く




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