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無尽の鎖 第8話

無尽の鎖 第8話「剣士の迷走 ―PHALAS―」
作者:J・ラコタ(PN&HN)

―7年前―
?1「仲間にならないのかい?」
?2「お、お断りだ・・・。」

ここは崖に面している雨の降る道路。
一方は不気味な笑みを浮かべ、もう1人の少年は怪我を負っている。

?2「い、いくら、自分達を差別するからと言って・・・、大勢の人間を殺していい訳が無い。」
?1「・・・本気なんだね。」
?2「あぁ。・・・本気さ!」

怪我を負っている少年は、もう一方の少年に向けて手を広げた。

?2「はぁっ!!」

すると、衝撃波が飛ぶ。
だが、呆気なく、交わされてしまった。
しかし、避けられてしまった衝撃波は、その後ろにあった岩を砕いた。

?1「・・・こんなすごい力を持っているのに・・・。」
?2「く・・・っ、」

怪我を負っている少年は逃げようとする。
しかし、そこにもう一方の少年が衝撃波を飛ばす。

?2「ぐあぁっ、」

怪我をしている少年は崖へと真っ逆さまに落ちてゆく・・・。

?1「勿体無い・・・。・・・ファラス。君はこんな大きな力を持っているのに。」

もう1人の少年は落ちてゆく少年を見つめながら言った。




―7年後―
とある森の中。

少女「・・・迷っちゃった。・・・どうしよう・・・。」

1人の少女が森の中を歩いている。
だが、どうやら道に迷っているようだ。

しかし、少女は歩き続けた。
すると、森の奥に小さな小屋が建っているのを見つけた。

少女「(こんなところに小屋が?ちょうどいいわ。・・・今日だけでも止めてもらおう・・・。)」

今は午後5時。
そろそろ日が沈む頃だ。

少女「すみません!誰かいませんかー!?」

少女はドアをドンドンッと叩く。
しかしも何も応答が無い。
どうやら、留守のようだ。

少女「(どうしよう・・・。・・・でも、ここで待っていれば、ここの家の人が来るかも・・・。)」

同じ頃、その近くに少年がいた。
女顔だが、彼は男だ。

少年の目の前にある木。
少年はその手に持っている剣を振りかざす。
すると、その木は真っ二つに切れて倒れ始める。
だが、その木にさらに剣を、目に見えないほど振りかざす。

すると、その倒れそうになっていた木は、スライス状態になっていた。
言うなれば、細切れの状態である。

少年の背中には、大きな傷がある。

少年「う・・・、」

少年のその古傷が痛み出した。
だが、それはこれが初めてだ。

少年「(何だ・・・、何故、古傷が痛む・・・?こんなこと初めてだ。・・・ん?・・・何かの気配を感じる。・・・しまった、俺の家の方向だ!)」

少年は手に持っていた剣を地面に置いた。
すると、その剣は、ただの木の枝になった。

そして、その場にあった、草で編んで作ってあるバッグを持ち出した。


少年は自分の家の前に来ていた。
すると、自分の小屋の前に、1人の少女がいるのがわかった。

少年「お前は・・・?」
少女「あ、あの・・・、」
少年「俺を追ってきたのか?プラノズの手下か?」

少年は近くにあった角材を持ち出す。
すると、その角材は、金属製の剣になった。

少女「え・・・!?」
少年「く・・・、プラノズめ、やはり俺が生きていたのを知っていたんだな?」
少女「ちょ、ちょっと待ってください!プラノズって・・・、」
少年「シラを切ろうが無駄だ!・・・ぐ・・・っ、」

しかし、少年は倒れた。

少女「ちょ、だ、大丈夫ですか!?」
少年「・・・。」

少年は意識を失っている。

少女「どうすれば・・・。」

少女は少年のベルトにつけてあった鍵に気付いた。
少女はベルトから鍵を外して、家の鍵を空けた。
そして、少年をどうにかベッドまで運んだ。

少女「(それにしても、何なの?あの力は・・・。それにプラノズって・・・?)」

今、少女の頭の中に浮かぶ物といったら、「?」マーク以外は浮かばない。

少年は目を覚ました。
しかし、それは日が出始めた頃だった。

その側で、少女が寝ている。

少年「(・・・こいつ、どうやらプラノズの手下ではなさそうだな・・・。)」

少年は階段を下る。
そして、キッチンへと行く。

それからしばらくして、少女は目を覚ました。

少女「うぅん・・・、何だかいいニオイ・・・。・・・あれ?」

少女はベッドに少年が寝ていないことに気付いた。
そして、下に下りてみた。
すると、テーブルの上には2人分のシチューが置いてあった。

少年「お。やっと起きたか。」
少女「あのぅ・・・、」
少年「昨日は悪かったよ。どうやら、俺の思い違いだったようだ。」
少女「あの、・・・あなたは?」
ファラス「俺か?俺の名前はファラス・ルノファ・ヘクタ。この森で暮らして7年近くになる。」
少女「7年?」
ファラス「あとで説明するさ。ファラスって呼んでくれ。・・・今度はこっちが質問するよ。君の名前は?」
少女「わ、私?」
ファラス「名前ぐらいあるだろ?」
セラ「・・・セラ・リーナ・ラズカーン。セラって呼んでください。」
ファラス「ここに来て、俺は7年だが、君のような来客は初めてだ。」
セラ「でも、何故7年も・・・。」

ファラス「・・・君も目の前で見たはずだ。この力を自分で知ってしまったからだ。
俺は7歳になった時に、自分の力を知った。物質を変形させる力だ。
それまではどうやら抑制されていたらしい。
俺は家族に迷惑を掛けたくなかった。だから、自分の家を飛び出したのさ。
そして、俺は何年か町を転々と渡り歩いた。剣の腕を磨きながらな。
その内に、手から衝撃波を飛ばせるようになり、自分の能力が向上しているのを知った。
これ以上能力を高めれば、もしかしたら、この土地が丸ごと吹き飛びかねない。
だから、そこで、俺は剣の腕を磨くのをやめた。
だが、その時に奴が来た・・・。」

セラ「奴って?」

ファラス「そいつはプラノズって名乗っていた。7年前の雨の日だった。
しかも、奴は世界を自分達の理想郷に作りかえるために、町や村を灰にしようとしている集団の首領で、あいつの仲間も同じように特別な能力を持っているらしい・・・。」

セラ「それからどうなったんですか?」

ファラス「俺はあいつと直接、正面から戦った。1対1でな。
だが、あいつの力は凄まじい物だった。俺なんか到底太刀打ちなんか出来なかった。
その最中に奴は俺に言った。「仲間になれ」ってな。だけど、俺はそれを跳ね除けた。
「いくら差別されていようとも、大勢の人々を殺すのは間違っている」って俺は言った。
だが、奴は聞こうとしなかった。そして、あいつには敵わないと知って、俺は逃げようとした。
だが、あいつは真空波を俺の背中に飛ばして、崖から突き落とした。
この背中の傷はその時に付いた物なのさ。
・・・俺はそのまま崖から落ちていった。だが、落ちた場所は川だった。
そして、俺はその時に思った。「あいつらを止めなければならない。」と。
それで、ずっと俺は剣の腕を磨いている。あいつらと戦うならば、本気で修行しなくてはならなかった。
しかも、不思議なことにこの森は俺の力の反応を隠してくれる。
だから俺はここに家を建てて住み着いた。」

セラ「・・・それで私が来て、そのプラノズって人の仲間だと思ったのね・・・。」
ファラス「あいつらの仲間も世界各地に散っている。だから、警戒していた。」
セラ「あの・・・、私も修行させてください!」
ファラス「何だと?ダメだ!」
セラ「でも・・・、」
ファラス「あいつらとの戦いにお前のような普通の人間を巻き込むわけには行かない。
早く自分の家へ帰るんだ。」
セラ「・・・私、家出してきたの。」
ファラス「家出?」
セラ「私は家でも学校でもいつも1人で・・・。よくイジメにもあっていた。
親からも虐待されて・・・もうそんな日常から逃げ出したかった。」
ファラス「・・・今、お前が戦う相手はあいつらじゃない。その日常だ。」
セラ「でも・・・。私の町はここから何百kmも離れていて・・・。それに、帰るにも道がわからない・・・。」
ファラス「何百kmだと?・・・仕方が無い。わかった。ここにいてもいい。」
セラ「本当に?」
ファラス「だが、俺の修行は厳しいぞ。それに、まず服と体を洗え。それからだ。いいな?」
セラ「はい!」
ファラス「修行は明日からだ。」


セラは川の水を汲みに行った。
そして、ファラスは棚にあったペットボトルの1つを取り出した。
中に入っているのは白っぽい液体である。

セラが帰ってきた。そして、桶の中に川の水を流し込む。
ファラスはその水の中にペットボトルに入っていた白っぽい液体を混ぜる。

セラ「・・・それは?」
ファラス「この森の木の幹から絞ったエキスだ。これは洗濯に最適なんだぞv」
セラ「は、はぁ・・・、(・・;」

セラは自分の洗濯物を洗う。
ファラスは森の近くにある滝に体を打たれている。

こうして、あっという間に日が沈み始める夕方の時間帯になった。

小屋の前の物干し竿に洗濯物が掛かっている。
セラは洗濯物を掛けている。
その最中にファラスが戻ってきた。
ファラスが持っているのは丸太で出来た大きな筒状の入れ物。
その入れ物中には木の実やキノコなどが入っていた。

ファラス「ご苦労さん。飯にするか?」
セラ「あ、ありがとう。」

こうして、一日が瞬く間に過ぎ、次の日の朝。

セラ「それで、最初は何を?」
ファラス「まずは、森の中を走る。この先に滝がある。そこまで行くぞ。」

ファラスは走り出した。

ファラス「ついて来い。」

セラも走る。

セラ「こ、これって何kmあるんですか?」
ファラス「そうだな・・・、ざっと5kmだ。」
セラ「5km!?」


滝に到着した。
しかし、セラはヘトヘトだった。


セラ「はぁ・・・、はぁ・・・、ま、毎日、こ、こんなに走って、い、いるなんて・・・。」
ファラス「(全く、先が思いやられる。)」

ファラスは滝に打たれているが、セラはそれを見ているだけだった。



それから数日という物、セラはファラスの厳しいトレーニングに耐えていた。

だが、ある日の事。

セラがファラス相手に剣を交えていた時・・・、

セラ「たぁぁぁっ、」
ファラス「うぉっと!」

セラの攻撃を受け流すファラス。

ファラス「やるな。」

ファラスはセラと距離を開けて、剣を降ろす。
セラも同様に剣を降ろすが、すこし呼吸が荒い。

セラ「はぁ・・・、はぁ・・・、」
ファラス「昨日よりも格段に剣の腕は上がっているな。スピードもテクニックも申し分ない。問題は防御だな。」
セラ「・・・。」
ファラス「どうした?」

セラ「・・・。」

セラの周りの地面が吹き飛んだ。

ファラス「セラ!まさか、君も・・・。」
セラ「これが・・・、特殊な力というものなの?」
ファラス「力が制御できていない・・・。下手をすればここら一体は吹き飛ぶぞ!」
セラ「どうすればいいの!?」

セラの力の暴走は止まらない。
だが、ファラスはセラの右手を握った。

ファラス「セラ、俺が君のパワーを受け止める。この右腕にパワーを集めるように念じるんだ!」
セラ「でも・・・、」
ファラス「簡単だ。やってみるんだ!」
セラ「・・・わかったわ。」

セラの体中を包んでいた光。
それが右腕に集まってゆく。
ファラスはそれを受け止める。

光が止んだ。
周り一帯はどうなったかというと・・・、なんと、草木が生い茂っていた。
家の近くにあった枯れた老木も、再び草木が生い茂っている。

セラ「これは・・・。」
ファラス「これは君の力だ。」
セラ「え?」
ファラス「俺は君の力の一部を受け止めただけだ。残りの漏れ出した力が、この近くにある木々や花に力を与えたんだ。」
セラ「それじゃぁ、私の力は・・・。」
ファラス「[リ・ジェネシス]つまり、生命力を再生する力だ。」
セラ「生命力を・・・。」
ファラス「・・・さて、困ったことになったな。」
セラ「何が?」
ファラス「修行する項目が増えてしまったということだ。君の力を制御する訓練だよ。」



ファラスたちが住む森の外。
そこにはラルドたちの町がある。

ラルドとウランはその時、森の中で誰かの力が解放されたことを知った。
そして、カインとミラルを伴って、森の奥へと向かうのであった・・・。




第9話へ続く。




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