2037202 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

NOVELS ROOM

第13話 Blue and Moe .

第13話 Blue and Moe .

「行ってきます、ゼロさん。」

ブルーはそういって、ハルピュイアと共に簡易転送装置でネオ・アルカディアへ向かった。

ネオ・アルカディアに着くと、すぐに行動を始めるブルー。それをとめるハルピュイア。

「ブルー、お前の妹はそっちじゃないぞ。」
「あ、す、すみません・・・。」
「落ち着け。お前の妹の病状が悪化したといっても、命に別状は・・・。」
「落ち着いてなんかいられませんよ!放っておけば、死に至るかもしれないんですよ!?」
「そんな事はわかっている。だが、少し落ち着かなければ、妹の症状をまた悪化させてしまうことになるんだぞ?」
「・・・・・・。」

とにかく少し落ち着いて、ブルーの妹―萌がいるところへとむかう。
扉を開け、中に入ると数名の医者とベッドで苦しそうに息をしている萌の姿があった。ブルーは、萌の近くにより、状況を確認する。そして、医者たちに問う。

「どうして悪化したんですか!?」
「あ、あの・・・その・・・。」

その医者によると、原因が判らないという。だが、それでは対処の仕様がない。ブルーは、いろいろ周りを見てみた。ふと、点滴の袋を見る。そして、「これは何が入っているんですか?」と問う。だが、医者たちは答えようとはしなかった。下を向いて俯いてしまった。そして気付く、これが原因なんだと。
ブルーは自分の作った薬を点滴にいれ、今まで付けていたものと変えた。少し、正常にっ戻ったが、萌はまだ苦しそうにしていた。
ブルーは作業をしながら、医者たちにこういう。

「他にどんなことしたんです・・・?」

そんな質問にも、医者たちは答えなかった。やはり、さっきと同じであった。

----------------------------------------------------------------------

今から、5年も前のことだ。
ブルーが働いている病院で、いつものように患者たちの面倒を見ているときに、婦長に呼ばれた。それは、ネオ・アルカディア中央の看護施設にいる女の子を見てきて欲しいと言う頼みだった。

「その子はとても特別でね、どんな薬を使っても体が拒否しちゃって、治りそうもない子なの。でも、あなたなら出来るかも知れないって、本部から連絡がきたから行ってほしいの。」
「そうなのですか、判りました。」

このときブルーは、ここの病院ではとても優秀な技術を持っていた。オペ担当ではないので、さすがにそれはしたことはないのだが、ブルーの作る薬は、どんなに病弱なものでも数日で直せてしまうほどの効果を持っていたのだ。
政府はそれを知り、ブルーのいる病院に連絡をいれたのである。

ブルーは、転送装置でネオ・アルカディア中央へ行き、そこの看護施設へと足を運んだ。


―ネオ・アルカディア中央 前―

「いつもは遠くで見てますけど・・・近くで見ると、ほんとに高い塔だなぁ・・・。」

そんな事をつぶやきながら、薬や薬を作るための道具などが入ったリュックを背負って、塔のようにそびえたつビルを眺めていた。
すると・・・

「お前がブルーか・・・。」

緑色(と断定できわけではないが)の風と共に、イメージカラーが黄緑のレプリロイドが現れた。
顔立ちは女性のようだが、断じて女ではない。
キリッとした顔立ちが特徴である。
そう、彼は・・・

「四天王・・・ハルピュイア様・・・。」

そう、誰もが恐れる四天王のひとり、賢将ハルピュイアである。
彼のほかにも、闘将ファーブニル、妖将レヴィアタン、陰将ファントムがいるが、何故か今いるのはハルピュイアだけだ。

「何を恐れているんだ。別に俺は、お前を取って食ったりなどせんぞ。」
「あ、いえ、そうじゃないんです・・・ただ、こういう案内はそれに該当したレプリロイドがしてくれると思っていたので・・・。」
「そうか。」
「それで、どこなんです、その女の子とは?」
「こっちだ、ついてこい。」

ハルピュイアに言われ、ブルーは後についていく。中に入り、すぐ近くのエレベーターに入り、ボタンを押す。そのボタンには何階か表す数字が何もなかった。

「あの、これは何階に行くのでしょうか?」
「最上階だ。そこに特別看護施設がある。ちなみにこれは直通でな。どこの階にも止まらないようになっている。」

そうか、だからほかのボタンがないのか・・・とブルーは思った。

―ネオ・アルカディア中央 特別看護施設―

「ここだ。」

その場所は、広くもなければ、狭くもない一件変わった様子もない普通の部屋だった。しかし、普通といえど、設置しているものはかなり、特別なものであった。
目の前にあるベッドは、普通のベッドといえるものではなく、レプリロイドが仮眠をとるカプセル型のようなものであった。しかし、ちゃんとその中には、布団がしかれその中で少女が眠っていた。腕は点滴につながれて、口には酸素ボンベが取り付けられている。
しかし、少女は苦しそうな表情であった。点滴に入っている薬が効いていないのだろうか・・・?
その横には、少女の体調を調べるための機械があったり、心拍数を調べるものなど、正直、少女の周りは機械だらけだ。

「あ、あの・・・これじゃ、この女の子がかわいそうなんですけど・・・。」
「・・・仕方がない・・・対処の仕方がまるでわからないのだからな、この少女は・・・。」

とにかく、ブルーは少女に近付き、様態を調べるためにパソコンのキーボード・・・ではなく、頭についている2枚の薄い透明の紙のようなものを伸ばし、パソコンの画面にそれを当てて、目を塞いだ。これはブルーの特殊能力で、こうして透明な紙のようなもので機械などに触れれば、頭脳回路の中でデータ解析が出来るのだ。

「確かに、この女の子は原因不明の病気を患っているようですね・・・。」

そういいながら、透明の紙のようなものを元の長さに縮め、自分が持ってきたリュックの中をあさる。これでもないこれでもないと、出してはしまい、出してはしまいの繰り返し。キリがない。
そんなブルーにハルピュイアは、「一度全部出せ。」といわれてしまう。まぁ、それもそうだ。

「あ、すみません・・・僕、たまにこうなる人(?)で・・・。」

そして、リュックをひっくり返して、道具やら薬やらがたくさん出てきた。大きくも小さくもないリュックに、よくもそれだけの道具が入るものだ。どこかの猫型ロボットのポケットのようだ。
道具などを綺麗に並べ、これといったものを選び、この部屋にちょうどあった資料だらけの机の前に立ち、その資料を綺麗にまとめ邪魔にならないところにおき、薬とその道具を置いた。そして、その薬たちを上手く調合し、短時間で1つの薬を作り上げた。

「それは・・・?」
「まぁ、見ていてください。」

その部屋にある棚の中から、新しい点滴を見つけ、その中に先ほどの薬を入れる。その点滴を、最初からつけてあった点滴と交換して、回収したほうの薬の解析をしてみる。
ぶつぶつ言いながら、その薬を小さなビンに入れ、リュックにしまう。
そんなことをしている間に、少女がすこしうめき声を上げて、目を開けゆっくりと起き上がった。

「あ、目が覚めたのですね。おはようございます。」
「・・・おはよぅ・・・。」

少女は周りをキョロキョロと見回している。どうやら彼女は、ここに来ていることを知らなかったようだ。
明らかに、「ここはどこ?」と言っている様な感じである。

「安心してください。ここは、とても安全な場所です。」
「・・・あなたは・・・?」
「あ、申し遅れました。僕の名前は、看護レプリロイドのブルーと申します。」
「あたしは・・・もえ・・・もえっていうの。」
「萌さんですか。とても可愛らしい名前ですね。」
「ありがとう。」

そんな会話をしていると、ハルピュイアが話しかけてきた。

「流石だな・・・どんな医師でも少女の状態がよくならなかったのだが・・・。」
「・・・最初は、原因不明かと思いました。でも、彼女はとあるショックを受けているみたいなのです。」
「ショック・・・だと?」

ブルーは言う。今まで、萌と名乗った少女を見てきた医師は、少女の状態ばかりを見ていたようで、特に深くデータを見ていなかったと。それが本当かどうかは、定かではないが。
萌にしばらく待っていてといい、ハルピュイアと外に出る。
そして、萌のデータを話し出した。

数年前、萌は家族と遊園地に遊びに来ていた。萌の両親は毎日忙しく、遊びに行くという機会があまりなかったのだが、萌を寂しくさせないために、萌を連れて行って仕事をしていた。
そして今回は、珍しく休暇を取れたので、萌と遊園地に行こうと出向いたのだ。
しかし、楽しいはずの家族とのふれあいは、瞬時に消え去ってしまった。そう、イレギュラーによって・・・。
突然現れたイレギュラーは、遊園地にいた人々を襲いだし、傷付けていった。そして、そのイレギュラーは萌の家族にも及んだ。両親は萌を守ろうとして、2人で萌を抱きかかえた。しかし、それだけではきっ身が持ちそうにないと感じ、萌をつれて走り出したのだが、両親は背中にイレギュラーの攻撃を受け、倒れてしまったのだ。「逃げろ。」と萌に告げようとしたが、萌の見ている目の前で止めを刺され、両親は絶命してしまった。
萌はイレギュラーハンターに助けられ、その後、状態があのようになってしまった・・・・・・。

「・・・萌さんは心に大きな傷を作ってしまったのです。一生直らないほどの大きな傷を・・・。それが、第一の原因。もう1つは・・・。」

そう言って、ブルーは言葉を止める。

「・・・僕でもわかりません。でも、何となくですが、萌さんは自分で病気を持っていると思い込んでいるのかもしれません。それで、本当に病気を持ってしまった。プロの医師も、治せないはずです。病名が判らないのですから・・・。」
「ならば、お前も治せないと・・・?」
「・・・『治せない』と断定はしません。僕は『萌さんの病気を治して見せる。』と、そう断定しますよ。僕に治せない病気はありません。」

そう言って、萌の部屋に戻った。
目覚めた萌と話すブルーを見るハルピュイアは、あの2人が本当の兄妹に見えた。しかし、萌は人間、ブルーはレプリロイド。一生血のつながらない、赤の他人だ。だが、血はつながらなくとも、彼らはいい兄妹になるんじゃないかと思っていた。

―数日後・・・

「ねぇ、かんごしさん。」
「何ですか、萌さん。」
「かんごしさん、あの・・・その・・・『お兄ちゃん』ってよんでいい?」

突然だった。そんなことを言われて、ブルーはしばらく硬直した。それもそうだ。ブルーには『兄妹』がいないのだから。それが嬉しくて、固まってしまったのだろう。

「だ、だめ?」
「い、いえ、宜しいですよ。そう言ってください。」
「じゃ、かんごしさん・・・じゃなかった・・・お兄ちゃんは、あたしのこと『萌』ってよんで♪」
「はい、解りました。」
「あと、あたしのまえでは、そういうしゃべりかたはやめて?お兄ちゃんとほんとうの兄妹になりたいの・・・♪」

嬉しかった。本当に嬉しかった。
萌の口から「本当の兄妹になりたい」という言葉が出たときは。

「じゃ、僕はこういう喋り方で、萌に話すね。」
「うん♪」

その後、何故かハルピュイア以外の四天王たちも来るようになり、萌は彼らに可愛がってもらった。何故か、ブルーまでもが・・・。
しかし、そんな幸せな日々は、数ヵ月後に途絶えてしまった。

そう、ブルーがいつも仕事をしている病院にイレギュラーが出たのだ。
最悪にも、そこの病院の人々を守ることが出来ず、ブルーは人々の罵声を浴びた。そのせいで、ブルーの頭脳回路に異常が現れ、尽きることない幻聴が聞こえるようになってしまった。その幻聴が怖くて、ブルーはその病院を後にした。
だが、完全に去る前に、萌だけには会っておこうと、本部に立ち寄った。
エレベーターに乗り、最上階の特別看護施設に入った。

「お兄ちゃん、どうしたの?かおいろ、わるいよ?」

ブルーは、萌を見たとたん、激しく怯え始めた。しかし、その表情は見せまいと、必死にこらえていた。

「・・・ごめん・・・萌・・・はぁ・・・はぁ・・・僕は・・・もう・・・ここには・・・いられないんだ・・・。」

ブルーは、片手で頭を抑えながらそういった。ブルーはすでに、人間を見るだけで、恐怖を覚えてしまうほどまでに陥っていたのだ。そう、それが血のつながらない妹――萌でさえも・・・。

「どうして?」
「・・・どうしても・・・なんだ・・・ごめんね・・・。」

ブルーは体を震わせながらも、萌に与えるための薬を取り出し、机においていった。
最後にメモを置き、萌を見て無理な笑顔をつくり、その場を逃げるようにして、走り去っていった。「お兄ちゃん!」と叫ぶ、萌の声を無視して・・・。

----------------------------------------------------------------------

数分後、ようやく萌は落ち着いた。

「彼女は、僕の薬じゃないと受け付けてくれないんです。ましてや、他の薬を投与したなんてもってのほか。悪化する一方です。それなのに・・・。」

ブルーはそこで言葉を止め、医者たちに向く。
しかし、ブルーの様子が少しだけおかしい。だんだん、身体が震え始めている。
机を勢いよく叩き、こう叫ぶ。

「どうして、他の薬を投与し続けたんですか!!萌には、『僕の作った薬を投与し続けてください。』とメモに書いて残したはずです!!見ていなかったんですか!!?」

そう医者たちに怒鳴りつけた。その声に、萌が目を覚ました。
ブルーの身体の震えは、いっそう高まってくる。

「・・・お兄ちゃん・・・?」
「・・・萌・・・。」
「だいじょうぶ?」

ブルーの震えに逸早く気付いたのは、今目覚めた萌だ。
目覚めた萌を見たブルーは、途端に様子が豹変した。

「ぐ・・・う・・・うぅ・・・。」

頭を両手で押さえて、その場でうずくまってしまう。
医療班もハルピュイアも、その様子に驚く。

「お兄ちゃん!?」
「だ、大丈夫・・・気にしないで・・・。」

そう言って、ブルーは部屋を出て行った。
その後を、ハルピュイアが追う。

「大丈夫か?」
「はい・・・お見苦しいところを見せてしまってすみません・・・。」
「今のは、何だったんだ?」



「僕は・・・人間が怖いんです。」

そう言ってから、その真相をハルピュイアに話し出した。
病院にイレギュラーが現れ、そこの病院の人々を守れなかったこと。そのせいで人間たちから罵声を浴び、頭脳回路に異常が出て幻聴が聞こえるようになったこと。そして、さらには人間を見るだけで身体が震えだしてしまうこと・・・。
そう、すべてを話した。
しかし、それを治そうとしたのだが、全く治らないのである。人間で言う、「トラウマ」というものになっているのだ。
本当は、レジスタンスベースにいるシエルでさえも怖いと感じてしまった。しかし、そこは我慢していた。体の震えを全く見せず、何でもないように見せていた。
もちろん、そんな様子はゼロにも見せてはいない。

「お前は、さっきからずっと我慢していたんだな?」
「当たり前ですよ。誰にも、この症状は見せたくなかったんですから。」

そう言って、廊下のガラス窓から見える風景を見つめる。至って天気は晴れ晴れとして、雲ひとつ見えていない。白い鳩や小さな小鳥たちが優雅に飛んでいる。街の風景も、今のところは平和である。

「さて、気分がよくなったので、最後に萌に伝えて僕は帰るとします。」
「そうだな。」

2人は部屋に入り、萌を見つめる。
萌も医療班もブルーを見て心配そうに見つめるが、「全然たいしたことはないです。」と笑顔で伝えた。本当は、見ているだけでも辛いだろうに・・・。

「いいかい、萌、よく聞くんだ。」
「なぁに、お兄ちゃん?」
「僕は、ここにはいられないんだ。」
「やだ!あたし、お兄ちゃんとずっといっしょにいる!!また、ずっとさびしくなるなんて、やだ!!」
「我が侭言うな!!」

ブルーは萌を叱る様に怒鳴った。しかし、怯えた萌を見て、すぐに抱いて「ごめんね。」と謝る。

「萌、僕はね、ここにいると皆に迷惑をかけてしまうんだ。だから、これいじょう迷惑をかけたくないんだよ・・・。」
「でも、でもぉ・・・。」
「大丈夫・・・僕は、萌の事絶対に忘れないから・・・。」
「・・・・・・・。」

そして、ブルーは「そうだ。」と何かを思い出したかのように呟き、ポケットから小さなペンダントを取り出した。その形は、ブルーのライトブレードに似ていた。
ブルーはそのペンダントを萌につけてあげた。

「これは・・・?」
「ライトブレードのペンダント。カプセル型になってるんだ。開けてごらん・・・。」

萌は、言われたとおり、カプセルを開けてみた。すると、小さな光があふれ出した。そして、その光からサイバーエルフが現れた。だが、通常のサイバーエルフより一回りも二回りも小さかった。
見た目も外見もブルーによく似ていて、本当に代わりになりそうなぐらい似ていた。
そのサイバーエルフは、閉じていた目をゆっくりと開け、萌の目を見つめる。そして、何か珍しいものを見るかのように、萌の周りをうろうろと飛び回った。

「まだ生まれたばかり。だから萌、このサイバーエルフを育ててあげて。これなら寂しくないはずだよ。」
「うん・・・。でも、またきてくれる?」
「出来たら。」
「やくそくだよ。」
「うん、約束。」

そう言って、別れを告げ部屋を出る。
扉が完全に閉まり、ブルーは歩き出す。そして、行ったところで足を止め、ブルーは振り向きポケットから何かのデータを取り出した。
そのデータは、萌の記憶のデータのほとんどが入ったディスクだった。そのディスクの中には、レプリロイドの設計のデータも入っているのだという。

「もしもの事があったら、萌の魂をデータに変換して、このディスクに入っているデータをもとに、萌の身体を作ってください。この記憶のデータは99.99%までコピーは完了したのですが、0.01%はコピーは出来ませんでした。しかし、魂をデータに変換すれば、0.01%は埋まり、完全なものとなります。あ、萌の身体はコールドスリープにさせてくださいね。」

そういいながら、ハルピュイアにデータディスクを渡す。そんなブルーの表情は、少し悲しみの混じった笑顔だった。

―あいつ、本当はこんな事したくはないけれど、こうなることを予測して・・・。―

ハルピュイアは、そんなことを思いながらも、ブルーの表情を見つめていた。
廊下の窓から差し込む太陽の光で、ブルーの表情がいっそう悲しい表情になっていたのは、気のせいなのだろうか?
ブルーはその表情を見せて、ハルピュイアに背中を見せて歩き出す。

「・・・あ、そうだ。」

と、ブルーは振り返り、こう言った。

「・・・僕が本当に壊れて暴走してしまったら、迷うことなく、壊してください。」

と・・・しかし、

「・・・そんな事、ゼロにでも頼めばいいじゃないのか?」
「あ・・・。」

そういえばそうだったという顔をしたが、すぐに表情を変え、「でも、ゼロさんにはこの事は内緒にしているので言えません。」と言った。言えたとしても、多分技術者のセルヴォぐらいだろう。だが、そんなゼルヴォにも話していないとなると、心の準備が整っていないのだろう。それに、ベースの人たちに心配をかけるわけにはいかないと思っている。その辺が、原因になっているのかもしれない。

ブルーとハルピュイアは転送室へ向かい、座標をレジスタンスベースに向けた。
しかし、この座標データは残してはいけない。ネオ・アルカディア側にとって、好都合になるからだ。

「本当に、座標データは残しちゃいけませんよ?」
「解っている。今回は見逃す・・・といっても、エックス様も許しているし、もともとお前はイレギュラー認定されていない訳だし、『見逃す』というのはおかしいのだがな。」
「ま、レジスタンスベースにいる限り、イレギュラー認定されていなくても、イレギュラー当然の身ですよ。」
「おいおい、そんな事、やつらにでも知られたら大変だぞ?」
「ははは、そうですね・・・。」

「では、失礼します。」といい、ブルーはレジスタンスベースへと戻っていった。

「・・・・・・。」

ハルピュイアはただ、そこにいなくなったブルーを見つめ、転送装置に入っている座標データを消した・・・つもりだった。
その座標データをディスクに保存し、その場を立ち去った・・・。


第14話へ続く。


© Rakuten Group, Inc.