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2017.07.11
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テーマ:時代劇!(57)
カテゴリ:私のシナリオ
シナリオセンター研修科の最後の課題は「時代劇」でした。
アクションで沖田総司を書いた時に労咳に蝕まれた体で幕末に新選組の隊員として、隊の命令に従って、暴徒たちを剣で取り締まった沖田総司。ひたすら、純粋に剣を使って職務を果たし、剣の名手としておそれられながら25歳で労咳で亡くなった沖田総司。そんな総司にも青春らしき出会いがあったと書いてみたくて創作しました。

「幕末・剣士と女医」

 

登場人物

 

和田梓(22)女医

和田道庵(48)梓の父、医者

沖田総司(22)新選組 一番組隊長副長助勤 

山崎進(30)新選組 副長助勤

侍A(22)長州藩士

侍B・C・D  

 

 

〇(物語の舞台)京都の大通り

N(ナレーション)文久4年・池田屋事件の10日後、長州屋敷に幕臣派が放火した火が京都の町を広く焼き尽くした。

大火から5日後も四条通り脇はまだくすぶりつづけている」

通りを歩く梓(22)は速足になる。

路地を曲がると焼け残った土塀がある。

土塀の中に入ると粗末な小屋がある。

小屋の外には大勢の人が並んでいる。

 

〇和田道庵の診療用仮小屋・中

   和田道庵(48)が十人ほどのけが人を手当している。

   そこに梓が中にはいってくる。

梓「お父様、ただいま長崎から戻りました」

和田「おう、梓か!いいとこに戻ってくれた。さっそく手伝ってくれ」

梓「わかりました」

   和田が怪我人の手当てを続ける。

   梓がいったん奥に行ったあと割烹着をきて戻ってきて和田を手伝う。

 

〇道庵の診療所の仮小屋・中

   梓が白い割烹着姿で大勢のけが人の手当てをしている。

   沖田総司(22)が小屋に入ってくる。

沖田「道庵先生はいらっしゃいますか」

   梓が沖田をいちべつする。

梓「父は出かけておりますが、ちょうど人手が必要でした、手伝っていだだけますか」

   梓がきびきびと言う。

沖田「何をすればよいのですか」

   梓の前で戸板に乗った男がうめき声をあげている。

梓「この方の足をひっぱってください」   

沖田「足を引っ張るのですか」

梓「火事の時に屋根から落ちて股関節脱臼しているのです。思いっきり引っ張ってください」

   梓が肩を押さえて沖田が足をつかむと男は悲鳴を上げる。

梓「もっと強くまっすぐに引っ張るのです」

   沖田が力を込めて男の足をひっぱる。カチッと言う音

梓「もう大丈夫、しばらくは歩かないほうがいいですよ」

   梓は男に言い次の患者のところにいく。   

梓「たらいの水で傷を洗って下さい」

   梓が沖田に向かって指示する。

   男の傷口が深くえぐられて骨が見える。

   歯を食いしばってうめき声をあげる男。

洗いながら沖田は貧血で倒れかかる。

   真っ青な顔で卒倒しそうな沖田を梓が見る。

梓「どうされました」

沖田「傷が深くて私の手に負えません」

梓「洗うだけなのに!男のくせにしっかりしてください」

   山崎進(30)が2人の前に現れる。

山崎「沖田さん大丈夫ですか。私がお手伝いしますから休んでいてください」

沖田「山崎さん、どうしてここへ」

山崎「沖田さんの護衛を土方さんにたのまれて後を追いかけてきました」

   梓は山崎にテキパキと指示して次々に

患者の手当てをしている。

 ×   ×   ×(同場面で時間が経過)

   和田道庵が入ってくる。

   梓が手をとめて和田を見る。  

梓「四条河原の避難所はもういいのですか」

和田「切り上げてきた。ここが梓一人で大変だろうと思ってね」

梓「お手伝いの人をよこして下さったからなんとかなりました」

和田「手伝い?どこも手一杯でどこも出せないと断られたよ」

梓「あらっ、そこにいるお2人は?」

   沖田が和田の方に歩み寄る

沖田「先生ご無事でなによりです。来るのが遅くなって申し訳ありません」

和田「沖田さんじゃないか。具合はどうだい。この騒ぎで無理したんじゃないか」

   梓が驚いた顔で沖田をみる。

梓「この方とあちらの方がお父様が手配してくださった医者の見習いの方と思って手伝っていただいてました」

和田「この方は患者だよ」

梓「患者さんとも知らずに申し訳ありませんでした。ちょっと待っていてください」

   梓が奥に入っていく。

和田「今日はこんなありさまだから、薬は後日とりにいらっしゃい」

沖田「そうさせていただきます」

   梓が湯のみを持ってくる。

梓「私の勘違いで疲れさせてしまいましたね。元気のでる妙薬ですので召し上がって」

   沖田が湯のみを覗きにおいを嗅ぐ。

沖田「お酒ですか」

梓「葡萄の酒です。気付け薬にもなります」

   沖田が湯のみの液体を一気に飲む。

   青白かった沖田の顔に赤みがさす。

和田「葡萄酒も酒の弱い人だとかえって目が回る。大丈夫ですか沖田さん」

   山崎が沖田の傍に来る。

山崎「沖田さん大丈夫ですか」

沖田「強い酒ですね。でも、体がジャンとしました。では、先生、薬は後日いただきにまいります」

和田「明日の晩までには用意しておくよ」

山崎「沖田さんの薬は私が取りにきます」

和田「では、そうしてください。沖田さんが京の町を歩くのは危険ですからね」

   梓が沖田と山崎を不思議そうな表情でみている。

梓「山崎さんは医学の心得があるようですね」

山崎「父が漢方医なので多少はあります」

梓「道理で手際がよくて助かりました」

山崎「明日も早めに来てお手伝いいたします」

梓「そうしていただくと助かります」

和田「梓、このお2人は新選組の方たちだよ」

梓「新選組?患者さんの沖田さんと医学の心得がある山崎さんでいいじゃないですか」

   和田と梓が患者の治療に取り掛かる。

   沖田と山崎は仮小屋を出て行く。

(つづく)

   






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Last updated  2017.07.16 21:06:01
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