最近のテレビドラマ画質事情
最近、一部のドラマで映画っぽい画質の作品が目立ってきました。最も熱心なのはNHK。3年にわたって放映された、司馬遼太郎原作のスペシャルドラマ『坂の上の雲』を皮切りに、大河ドラマは『龍馬伝』から、朝の連ドラも現在放映中の『カーネーション』からこの画質に転向しています。専門的には『プログレッシブ方式』と呼ばれるビデオシステムで撮られ、その映像を『シネライクγ(ガンマ)』というフィルタで映像加工されたもの、ということです。従来のビデオシステムは『インターレース方式』。専門的な技術論は省きますが、要は『インターレース方式』よりも『プログレッシブ方式』の方が画質が圧倒的に向上し、しかも画面上での応答性も格段に良くなっている。デジタル放送時代にうってつけのビデオ方式なんだそうです。ただ、この画質を見た僕の第一印象は、「何? 画像品質が一歩後退した!?」という思いが正直なところ。1970年代後半頃まで、テレビドラマと言えばフィルム映像が主流でした。『仮面ライダー』や『ウルトラマン』等の子ども向けアクション実写ドラマや、『太陽に吠えろ』『Gメン75』『西部警察』等の刑事ドラマ、『水戸黄門』『遠山の金さん』等の時代劇、どれをとってもフィルム映像。ビデオ関連の機材が高価で発展途上の時代ですから、おいそれとビデオ録画というわけにはいかなかったんでしょうね。当時、ニュース番組で流される映像もフィルム映像が定番でしたから。で、1970年代後半頃から現在のビデオ映像によるドラマが一般的になり、生放送と見まごうほどのきれいな画質であることから当時は隔世の感を抱いたものでした。それから40年近く、この画質に見慣れてきたため、今どきの『プログレッシブ方式』映像に接すると「一歩後退」感が否めないのです。本来のプログレッシブ方式で撮られた映像は、インターレース方式よりももっとリアルできめ細かいんだそうです。ところがそれをそのまま放映すると、視聴者にとっては「目が疲れやすくなる」、制作側にとっては「映って欲しくない映像もリアルに映し出される」(たとえば時代劇などで、遠景に電線がしっかり映り込んでしまう)といったようなデメリットがおそらく生じるため、わざと『シネライクγ』フィルタを通して、ややぼかし気味に和らいだ雰囲気の映像に加工しているわけです。最近は民放ドラマでも採用例が2~3出てきており、僕の印象はどうあれ、今後、ドラマ映像の標準画質になっていくんでしょうね。考えてみれば、『24』に代表される米国の人気テレビドラマも、同じような映画チックな映像ですもんね。最近はホームユースのビデオカメラにもプログレッシブ方式がサポートされているようです。SONY HDR-CX560VBデジタルビデオカメラ[Handycam(ハンディカム)] CX560V(ブラック)価格:67,700円(税込、送料込)