石川県金沢市に拠点を置く北陸製菓が手掛ける米菓「ビーバー」。
その名を聞いたことがある方も多いでしょう。
「ビーバー」とは、北陸3県で根強い人気を誇る揚げあられで、1970年に誕生しました。
しかし、そんな「ビーバー」も一時期、事業停止に追い込まれ、ブランドの未来が危ぶまれていました。
そんな中、2018年に26歳という若さで社長に就任した髙﨑憲親氏が、見事にブランドを蘇らせ、今では北陸のソウルフードとしての地位を確立しました。
今回は、髙﨑社長がどのように「ビーバー」を復活させたのか、そして、ブランドを全国、さらには世界へと広げていくための戦略について詳しく見ていきます。
破産したブランドの復活:髙﨑憲親社長の奮闘
髙﨑憲親社長が北陸製菓のトップに立ったのは、2018年のこと。
彼が就任した当時、北陸製菓の主力商品はビスケットやカンパンでした。
「ビーバー」は、地元で一部の熱心なファンに支えられていたものの、かつてのような広い人気を持っていませんでした。
しかし、髙﨑社長は「ビーバー」こそが北陸製菓のアイデンティティを支える商品だと確信。
そして、彼は大胆な決断を下します。
経営資源の約8割を「ビーバー」再生に集中させることを決めたのです。
ビーバー誕生の背景とブランド承継の歴史
「ビーバー」が初めて世に出たのは1970年のこと。
大阪万博のカナダ館に展示されていたビーバーの人形に着想を得て、その名前が付けられました。
元々は福富屋製菓が開発した商品でしたが、その後、福屋製菓に引き継がれました。
しかし、福屋製菓は2005年に「ビーバーカレー味」を発売するも、2013年に事業を停止。
「ビーバー」は一時、完全に市場から姿を消しました。
その後、北陸製菓が2014年に「ビーバー」を承継し、復活への一歩を踏み出します。
若きリーダー髙﨑社長が描いたビジョン
髙﨑社長は、26歳で社長に就任した時、「ビーバー」に全力を注ぐと決意しました。
彼が目指したのは、「ビーバー」を北陸だけでなく全国、そして世界に通じるブランドへと成長させることでした。
彼は、まず北陸で圧倒的なブランドに育て上げ、その後全国へと拡大する戦略を描きました。
「地元で愛されている商品を、まずは北陸で圧倒的な存在にすることが、全国展開の第一歩だ」と髙﨑社長は語ります。
その一環として、「白えびビーバー」を北陸3県限定商品として開発し、北陸の味を前面に押し出す戦略を取りました。
NBA八村塁選手の影響で全国的なブームに
そんな「ビーバー」が全国的に注目を浴びたのは、2019年。
NBAで活躍する八村塁選手がチームメートに「白えびビーバー」を紹介する動画がSNSで拡散されたことで、瞬く間にブームが巻き起こりました。
北陸3県のスーパーや直営店では、入荷待ちの状態が続くほどの人気となり、一時期は供給が追い付かないほどでした。
「SNSでの反響は想像以上でした。『ビーバー』がこれほどまでに全国の注目を集めるとは思ってもみませんでした」と髙﨑社長は当時の興奮を振り返ります。
こだわりの地域限定戦略
「八村選手のおかげで、『ビーバー』は一気に全国に広がるチャンスを得ましたが、私たちはあえて北陸3県に集中しました。
地元で一番になってこそ、全国展開が意味を持つと考えたからです」
髙﨑社長の判断は的中しました。
北陸限定の商品としての価値が消費者の心をつかみ、「白えびビーバー」は北陸のシンボル的存在となりました。
「地元の味を大切にしながらも、そこにこだわり過ぎず、次のステップを見据える必要がありました」と彼は言います。
SNS戦略と「ビーバー」のキャラクター
「ビーバー」の人気をさらに支える要素の一つが、パッケージに描かれたビーバーのキャラクターです。
この可愛らしいキャラクターは、小さな子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層に愛されています。
「キャラクターは、言語を超えた共通のコミュニケーション手段として、世界進出の際にも大きな強みになる」と髙﨑社長は語ります。
SNSを活用した発信や、売り場でのプロモーション活動も効果を上げました。
ぬいぐるみやお面を配るなどして、ブランドの存在感を高める施策を展開。
結果として、「ビーバー」は単なる商品を超えたブランドへと成長しました。
世界展開への挑戦
髙﨑社長は「ビーバー」を日本国内だけでなく、世界へも展開したいと考えています。
「既に『米蜜ビスケット』はアジア10か国に輸出しており、その経験を活かしながら、八村選手の影響も追い風に、アメリカ市場にも挑戦したいです」と語る彼は、ビーバーをグローバルブランドに育てるという大きな夢を抱いています。
今後の展望と生産体制の強化
髙﨑社長はまた、生産体制の強化にも力を入れています。
「老朽化が進んだ工場の移転や設備の更新を進め、新たな生産体制を整えることで、今後の需要増加に対応できる準備を進めています」と述べ、さらなる拡大への準備を着実に進めています。
まとめ
「ビーバー」は、北陸3県で愛され続けた地元の味から、全国、そして世界へと羽ばたこうとしています。
若きリーダー髙﨑憲親社長のリーダーシップのもと、ブランドは再び息を吹き返し、地元に根ざしながらも、グローバルに成長しようとしています。
「ビーバー」という名前は、今後ますます多くの人々に愛され、世界中に笑顔を届ける存在になるでしょう。
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