2005/09/30(金)04:39
貧乏三昧
あたしはかつてマクロビオティックをしていた
今は書店でも関連書籍が並ぶようになり
かなりメジャー化したなぁ と 嬉しく思うのだが
あたしが実践をはじめた今から8年程前には
今ほど一般的でなく
オーガニック関連のお店の掲示板に貼ってあった
望診会のお知らせを見て 参加して
直接知識を得ていたものだった
当時あたしは新婚で
片田舎に引っ越し
2K庭つきで家賃5700円という破格な安さの平家に住んでいた
さすがにその安さなだけのことはあり
物件は築3?年の5軒長屋で
台所は1帖しかなくトイレは汲み取り
お風呂は風呂を設置するためのコンクリート剥き出しの寒々しい空間が
ぽっかり空いているだけで脱衣所は台所が兼用だった
1帖しかない台所は人独りたつのが精一杯で
7ヶ月の身重のあたしは脱ぎ着が大変だった事を覚えている
あたしは自分でかべのコンクリートに白いペンキを塗り
ブロックを買ってそこへ並べ
湯舟を買いその上に運んでもらい
プロパンガスを引いた後にやっと入れるようになったのだった
ところが初めて入浴した夜
轟音とともにネコのプリンごと風呂場の天井が抜け落ちてきた
どうやらプリンは押し入れから天井裏に侵入したらしかった
築年数の古さだけではなく
作りが雑な物件だったのだ
なにしろ隣の家の咳する音が同じ部屋の中にいるかのごとく
聞こえてくるのだ
壁が薄いなんてものではなく
正直いって すべて丸ごと筒抜けである
あたしはぐったりしながら裸のまま
天井を釘でなんとか打ち付けた
独身時代の主人の借金を返済する為
とてつもなく貧乏な生活を強いられていた
あたしが貯金した出産費用すら主人が
ギャンブルに使ってしまった我が家では
もちろんテレビすらなく
娯楽は拾ったラジオから聞く情報と
図書館で借りてくる図書しかなかった
当然ネットなんてものはできるはずもなかった
そんなあたしがマクロを始めた一番の理由は簡単だ
貧乏だったから である
地産地消に似た考えのマクロにおいて
当時のあたしの生活は限り無く似通っていたのだった
食費を浮かすために
庭とは名ばかりの石ころだらけの元駐車場を
石を拾い 草を抜き 少しづつ耕して
そこに小さな畑を作り
食卓に並ぶ殆どの野菜はそこでとれたものでまかなった
なにしろ
食費は月に12000円使えればいいほうだったので
死にものぐるいの節約生活だ
米は実家が兼業農家で無農薬米を作っていたので
それを玄米でひたすら食べた
パンなどという贅沢品はもったいなくて
何年も口にする事はできなかった
肉やタマゴは極稀に実家からわけてもらった時にしか
食べる事はなく ましてそれは全て主人の胃袋へ収まるのだった
最初の冬はまだ庭の作物も採れなかったので
実家でもらった白菜と大根のみで1ヶ月乗り切ったのも
今ではいい思い出だ
時々立ち寄る本屋で
マクロの本や雑誌を見つけるたびに
嵐のような結婚生活を思い出す
あんな生活ができたのは
ただひたすらに
主人がいつか まともになると
普通の家庭を築けると
愚かにも信じていたからだ
貧乏なのはつらくはなかった
つらいのは
四六時中続く
裏切りだった
それももう済んでしまった事なのだ
それでも今夜も夢に見る
うなされるあたしを ゆーきが 今夜も起こしてくれる
「るるちゃん 怖い夢みてたんだね…」