ROSEMARY GARDEN

2005/09/17(土)16:05

『トーマの心臓』における愛と死の理論

コミック的生活(30)

『トーマの心臓』 萩尾望都  ぼくは ほぼ半年のあいだずっと考え続けていた  ぼくの生と死と それからひとりの友人について  (中略)  今 彼は死んでいるも同然だ  そして彼を生かすために  ぼくはぼくのからだが打ちくずれるのなんか なんとも思わない  人は二度死ぬという まず自己の死 そしてのち 友人に忘れ去られることの死  それなら永遠に  ぼくには二度めの死はないのだ(彼は死んでもぼくを忘れまい)  そうして  ぼくはずっと生きている  彼の目の上に 雪の降る、春まだ浅い早朝、トーマは陸橋から線路に飛び降りて自殺します。 愛する友人、ユリスモールのために。 ユーリは心に深い傷を負って、自分で自分を暗い闇に追い込んでいました。 『僕には(天国に行く為の)翼がない』 その傷は深く、致命的で、すべての光や愛情を寄せ付けないほど。 彼の心を闇から救う為に、トーマは自分の命を犠牲にしたわけです。 それを知りながら、なお心を開けないユーリを救ったのは、 トーマとうり二つの少年、エーリクでした・・・。 あまりにも有名な萩尾望都先生の『トーマの心臓』。 重いテーマなのに、エーリクの屈託ない明るさのおかげで、わりとすんなり溶け込めます。 トーマが日記に記した上記の一節、当時はそらで暗記するほどお気に入りでした。 トーマの死をかけた愛と、エーリクのまっすぐな愛情、二つを受けいれて ユーリは生きる意味をもう一度見出して、神の元に戻ります。 トーマの愛が成就した、と言うことでしょうか? このお話と連動して思い出すのが名香智子先生の『ヒュアキントスを殺したのは誰?』 ルイは、大富豪の子息で美貌も才知も兼ね備えたアンリに恋をしています。 でもやがてアンリは華やかな世界へと帰り、自分の事など忘れてしまう。 その事に耐えられない彼は、永遠に彼の記憶に残る為だけに、高い窓から 身を投げて死んでしまいます。彼の行動は確かに愚かしいけれど、 恋する者の心理なんて、こういうものなんでしょうね。 愛は死よりも強し・・・ということでしょうか?

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