2017/05/08(月)19:02
南仏のどろぼう猫
痩せた三毛猫が暑い太陽の下をよろよろとやってくる。
うちにはすでに飼い猫と手当て中の野良猫がいて、
主人は手当て中の猫も飼う気などない、と言う。
腹をすかせた三毛猫が台所のドアの前で入ろうと
しているのを見て主人が「どろぼう猫」と追い返す。
そんな主人だが、うちの飼い猫が町で迷子になった時は
我慢強く探して私より先に見つけたことがある。
テーブルの上にあった生ハムを狙ってきたんだ、とか
言う。にゃるほど、いい匂いがしたかも。
ああ、どろぼう猫か。でも、家なき猫で、お腹が空いていて、
毎晩どこで眠ろうか、と場所を探し、朝には涙が目に
こびりついている。もう可愛い赤ちゃん猫でもないから、
痩せこけて毛並みもぼそぼその汚そうな猫をさすろうと
する人もいない。
三毛猫はびくびくしてまた庭に入り、残り物の猫の餌を
そっと食べる。三毛猫に気がついて、そばによろうと
すると、さっと逃げようとするが、逃げなくてもいいのよ、
と言うと、言葉か雰囲気からわかるみたいで、しばらく
庭の隅で様子を見ている。
そばにより、撫でてやると、ずっとゴロゴロ言っている。
こんな猫を誰かの家で飼ってあげたら、人懐こくてとても
可愛い存在になるだろう。一度シャンプーすれば、ふかふかの
マシュマロみたいな愛らしい猫になるだろう。
うちで手当て中の白猫もさすってあげたり、あるいは
食べている間はずっとゴロゴロ言う。
わたしは苦労してきたから、優しくされるとそれがとっても
ありがたいの、と言っているみたいである。
フランスに、ある「自由な猫の団体」があり、その団体では
野良猫を見つけては、去勢避妊手術をし、野良猫たちが
これ以上増えないようにしようと取り組んでいるそうだ。
そして、手術を終えた猫達はまた自分達の縄張りに帰る。
これならば、近所にすむ誰かが定期的に猫達にえさを
やっても誰も文句は言わないだろう。
しかし、猫達はやはり、寒い時は家の中で眠る場所が
欲しいだろう、と思う。