老父のつぶやき

2022/07/19(火)21:26

加齢臭

視・紙・誌面から(1793)

自分の体臭なんてほとんど意識することはない。女房や娘には標的のように言われるのが、「何とも言えず臭い」言えないのなら言うな、と言いたいところだが、70年も人間をやってるのだから脂質の酸化によるような匂いがしても不思議ではあるまい。 実際、匂いを表現するのは難しい。「履き古した靴下のにおい」「縁の下のにおい」は何となく分かるが、「足の裏のにおい」になると少し難しい。「もわあ〜とした匂い」は伝達困難だろう。「虫歯の匂い」は文字にしにくいが、一度かいだら理解出来るはず。 化学屋と言うのはかなりいろんな匂いをかぎ分ける方だと思う。アルコールでもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールはかなり特徴的なので私でも分かる。中には「こいつはイソくさい」というのもある。磯の匂いではない。水酸基の結合構造式で側鎖にあるものだ。 加齢臭の自覚は最近のこと。たっぷりと汗を吸ったシャツを脱ぐ時に感じるようになった。確かに表現しろと言われると困る匂いだ。ちょっとつんと来るアミンと、脂肪酸の混じったにおい、と言うのが近いだろうか。加齢臭はノネナールだという。名前からすれば炭素が9つくっついてうち一つがアルデヒド基になっているのだろう。分子量からしてあまり揮発性はないと思われる。マクラカバーが臭いと言われるのもそのせいかも知れない。 もう少し分子量の小さいヘキサナ−ルは大豆をしぼった時の青臭い匂いだ。カメムシの匂いも似ている。だいたいアルデヒドはあまり快適な匂いとは言えない。ホルムアルデヒドは生体標本の浸漬液、アセトアルデヒドは二日酔いの匂いだ。ついでながら毒性もある。 そりゃあ臭いことだろう。せいぜい風呂で洗い流す習慣を付けることだ。思えば具体的には忘れてしまったが、確かに祖父母の部屋は他の部屋にない匂いがあった。その域に近づいてきたのだから仕方がないが、生活と戦いの歴史でもある。 明日から夏休み。孫どもが集結する日もあるだろう。「じいちゃん、臭い」と言われたらなんと返してやろうか。

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