龍伝説3 陰陽の龍
月の魔法ブログよりそれは確かに、そこにありました。香取神宮の駐車場に着き両脇の商店から呼びかける誘惑の声を退けながら、ゆっくりと参道を進むと・・・献灯籠の薙ぎ倒された跡が。それは単なる災害の跡と言うよりも、何者かが駆け抜けたような凄まじさがありました。一定の法則に従って倒されている、まるで一陣の強いうねりが這い回って行った跡のように。 まずは何を置いても本殿へご挨拶に向かうのが順当というものです。その驚くほど瀟洒な風格に暫し見とれ、一通りの参拝を済ませて踵を返すと同行者からの声が聞こえてきました。 『 きゃぁ~! 何これ? 』『 可哀想だけど、触れない・・・ 』 玉砂利の中に蠢くものが見え、近づいていくと砂利の中に半分埋まった状態の昆虫がいました。害虫を除き大凡の生き物は平気な私は早速、掘り出して放してやろうと砂利を退かすと、そこには上半身だけになってもがくカブトムシの姿が・・・ 神社の鳥居の下に、身を半分に千切られた昆虫がもがいている。 頭に浮かんだイメージは・・・【 早く凹凸の半分を埋めなければ 】 鳥に食われたか誰かの悪戯なのか、どちらにしても砂利から解放してやる事しか術がない私は、処置も早々に奥宮が在るはずの場所を求めて来た道を戻り始めました。 参道には奥宮の所在は示されて在りませんでしたが、小さな藪の向こうにある摂社への小道を進むとそのまた奥に香取神宮の要石が見えてきました。 私にとって夏に神社などに出向き悲惨なのは・・・吸血鬼の出現です。大量の蚊に一気に囲まれながら【 陰陽のボタン 凹凸をしっかり填め直し 】 奥に在るであろうはずの奥宮には意識だけでご免なさいとご挨拶を済ますと、参道の本道に駆け戻りました。これは後から聞いたのですが、その際の私は、早足で歩きながら両手はメビウスの印を切りながらの姿が、同行者にとってさぞや可笑しな姿に映っていたようです。 『 琉海子さん、変な動作してるぅ~ 』 『 あの人は、何処でも踊り出すから・・・放って置きましょう 』 そのときの会話を再現するとこんな感じ? さぁ、もうこの地での用向きは完了。あとは一気に東海地区に駆け戻るだけです。車に乗り込み、香取神宮に一番近い道の駅、利根川の景色を望む【水の郷さわら】で暫し休息を取ると東関東自動車道に乗り木更津方面へ進路を取りました。 東京湾アクアラインを渡るルートを帰路と決めていましたから途中、海ほたるPエリアでトイレ休憩です。 ・・・・・・が。 『 冗談じゃない! 』 車から足を降ろす早々、猛烈な頭痛と吐き気に襲われ撃沈同行者に不安感を与えるわけにいかず売店でお茶を買い求め、利くわけもない頭痛薬をこっそり飲みました。 【 こんな半端無いところ、一刻も早く立ち去らねば! 】 頭の中を何者かがブンブン飛び回っているような妙なシグナルと脱力感に辟易とした私は、帰路での運転を放棄して後部座席に沈み込みました。 車窓から空をずっと仰ぎ見ていると、彩雲と暗雲が入り交じり、空にも陰陽の文様が浮かび上がって行くのが垣間見えました。車中ではずっと・・・【 龍がついてくる 】気配が・・・ ふと外を見ると、夏空の白い雲をカンバスにして黒い鱗のような雲が湧き上がって龍を象って行くではありませんか? そのときの心境は何故だか【 やれやれ・・・早く諏訪に行かなければ 】です。 今まで居た関東方面を振り返ると一面黒い雲に覆われ、雷雲が大活躍している様相が。それでも一度も雨脚に追いつかれること無く、午後の早い時間には地元に降り立っていました。 鹿嶋・香取への約1,000キロ、12時間の旅。 今回もどうやら時空を超えていたようで、我が家に帰り着いてみると思わぬ証拠が待っていたのです。 ほんと・・・ 一筋縄ではいかない事ばかり